下町大衆酒場物語 第二十三回 銀座升本 銀座

あぶく銭より一杯の酒をとった店主がつくる絶品もつ煮込み!

開業は昭和28年、銀座一丁目にあるから立地がいいと思ったら大間違い。行政のまちづくりの方針で物販の店が優遇され、大企業は移転。長年の上顧客だったサラリーマンが激減した。小さな路地も潰され同業者がいなくなり、周囲は高級ブランドショップばかりになってしまった。
「文化は上にいる人がこうしろ≠チて作るものじゃなく、みんなの力でできていく≠烽フだと思いますよ。バブル期の投資話にも乗りませんでした。だって、これが生業だから」

そこで、こいつをつまみに「焼酎ハイボール」を頂く。ハムかつにバリッとかぶりつくと、おお、ハムが噛みやすいように、厚切り一枚ではなく薄切り二枚になっているではないか。しかも口の中で転がすほどに豚の風味がきいた塩味がにじみ出る。さらに、もつ煮込みを頬張ると、野菜&もつからにじみ出た甘ーいダシが味噌の苦みと絶妙な化学反応を起こしている……。その余韻をゴクッと「焼酎ハイボール」で洗い流すと、痛快さに唸るノドと胃袋までもが「これぞ銀座のフルコース!」と店主の話に熱くうなずき始めた。
「古い門前町や城下町に観光客が訪れるのを見ると、『変えちゃいけないものがある』って思うけどな」

そんな会話を「先代が、のれん分けの時もらった」という骨董品のようなレジが温かく見守っていた。

手前から人気が高いハムかつ(500円)と、もつ煮込み(480円)。このほか、刺身類など季節ものも絶品

「銀座升本」
相席で仲良くなる客も。
「人は遠くて近い」(店主)
東京都中央区銀座1-4-7
03-3563-2706
11:30〜13:30、17:00〜L.O.21:00
土日祝
  • ※ 2016.12.19掲載分
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