BS-TBS「〜癒・笑・涙・夢〜夕焼け酒場」 毎週土曜よる6:00〜6:30 BS-TBS 2015/10/24放送 #70 きよの

年末に消える酒場の灯ひとつそれまでに味わうべし築地仕入れのうまい刺身とゆかり揚げ
三姉弟が母から受け継いだもの

奥ゆかしげな暖簾と、小さな入り口。一見さんには入りにくい店かもしれないけれど、ちょっとした酒呑みなら、中に入れば“これはアタリ!”とすぐに分かるだろう。落ち着いた店内に、居心地の良さそうなカウンター。西島さんの言葉を借りるなら、一言「渋い!」。きたろうさんは、品の良さそうな老婦人の隣に座り、焼酎ハイボールで乾杯!「味の店 きよの」は、姉弟3人が営む店で、長女の萩原好江さんと次女の大堀貴子さんが店を切り盛りし、長男の成瀬定幸さんが調理場を担当している。そして、お隣の老婦人こそ、三姉弟のお母さんで先代の女将。「へぇ〜珍しいね。姉弟でお店なんて、えらいね」と、きたろうさんが言うと、お母さんが「親の仕込みが良かったのかもしれない」と笑う。ただ残念なことに「きよの」は今年、ひとつの区切りを迎える。「このビルが立て替えになって、今年いっぱいで閉店になっちゃうかなと。母が元気なうちは頑張ろうと思っていたんですけど、そういうわけにもいかなくって」と長女の好江さん。居心地の良さと、突然の話にきたろうさん一行は話し込んでしまい、何かを忘れている。そうそう、おつまみを頼まないと!

一品目は刺身の盛り合わせ。冬に向かって美味しくなるスズキなど、五点盛りに舌鼓を打つ。店はもともと大正から続く魚屋で、店のメニューも魚料理がメイン。お母さんが38年前に店を開業した頃を振り返る。「魚屋をやってた時に、お弁当をたくさん頼まれてね。それがきっかけで、主人が酒場をやるって。でも私はヤダって言ったの。でもやってくれって……。でも、お客さんがたくさんみえて“美味しい、美味しい”って言われると嬉しくって。今でも本当は、店に立ちたいんですよ」。

自慢の魚と共に、楽しい話に花が咲くこの酒場。ついつい話し込んでしまう一行に、次なる一皿「いいだこ煮」が出される。魚河岸でも扱うところが少ないイイダコは、あっさり目の味付け。「あまり煮ちゃダメなんです。さっと茹でて、煮汁が煮立ったところにサッと入れるくらい。もう二、三分くらいであげるのが一番柔らかくて美味しい」とお母さんが解説してくれた煮付けを、西島さんが「美味しい!ゲソまで美味しい」と絶賛。お母さんのレシピは、今、しっかりと長男の定幸さんに受け継がれている。

付かず離れずの心地良い距離感

常連さんは言う「姉弟で店をやるって、なんというか、距離感がいいよ」。ベタベタしたところがなく、それでいて付かず離れずのカウンター内のいい関係が居心地の良さを生む。「仲は悪くないけど、みんな血液型がB型、B型、B型で人に干渉しないから」という次女の貴子さんに、「それだ!B型家族だから居心地がいいんだ!」と、きたろうさんも納得。そこに出されたのが、自慢のオリジナル料理「いわしのゆかり揚げ」。新鮮なイワシをネギと一緒に細かく叩き、味噌で味付けし、大葉で包んで天ぷらにしたもの。きたろうさんが「これは焼酎ハイボールがすすむね。すごい!」と褒めると、「いわしのつみれ感がちょうど良いんですよね」と、西島さんもパクパク。

最後の一品は、のどぐろの一夜干し。ホロリとほぐれる身は、旨味が凝縮され「なんとも言えないこの味わい。すごく贅沢です」と、西島さんを感動させる。これだけの美味美酒、そして店の魅力に触れ、かえすがえす残念なのが閉店のこと。「これまで一緒にいるのが普通だったから、顔を合わせない日ってどんなのだろうって、想像がつかないです」と貴子さん。「もう絶対、他で店を出すしかないよ。ちょっと遠くても、ここの客は来てくれますよ」と、きたろうさんが残念がる。この店があったから姉弟3人で働けた。そしてこの3人だからこそ生まれた店の雰囲気が、常連さんの心をつかんだ……。ありそうで、なかなか無い奇跡の一軒が、静かに店の灯を消そうとしている。しかし、まだどうなるかは分からない。酒呑みとしては、そう信じて通うのみだ。

きよのの流儀
その壱

スズキ、カツオ、ホタテ、甘エビ、タコの五点盛り。毎朝、築地で仕入れるという新鮮な魚は、まず刺身でこそ味わいたい。刺身盛合わせ・小1,420円(税別)
その弐

だし汁にみりん、醤油、砂糖で味付けされたいいだこ。煮込みすぎないよう、その時間に最大限の注意を払う。いいだこ煮570円(税別)
その参

新鮮ないわしのつみれと、大葉の香りがベストマッチ。いわしのゆかり揚げ950円(税別)
その四

脂ののったのどぐろを、一夜干しで。その上品な身の美味しさに、お酒がすすむ。のどぐろ干し800円(2尾・税別)
きたろうさんから、きよのへ贈る「愛の叫び」 お客を信じてやめるなB型三姉弟———きたろう
「味の店 きよの」
住所

電話
営業時間
定休日
東京都千代田区麹町6−1
麹町共栄ビル一階
03-3264-8759
17:30〜22:00
土曜、日曜、祭日
  • ※ 掲載情報は番組放送時の内容となります。

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