BS-TBS「〜癒・笑・涙・夢〜夕焼け酒場」 毎週土曜よる6:00〜6:30 BS-TBS 2016/1/09放送 #79 やきとり戎 本店

人が集まる味と人柄 西荻窪で愛され続ける 炭火焼き鳥の名物酒場
長くやるつもりのなかった店が……

「古い感じがしていいな。いや、いや、いや、いい感じだね」と、きたろうさんと西島さんが訪れたのは、JR西荻窪駅南口。創業43年目を迎える、西荻窪住民なら知らぬ者はいない、昭和の空気が漂う名物酒場「やきとり戎」。「最初はやっぱり焼き鳥だね。美味しいの食べさせてください」と、焼き場を仕切るご主人の戎井力(えびすい ちから)さんにお願いして、焼酎ハイボールで乾杯。登場したのは鶏皮とピーマンを刺した串「とりかわピーマン」と、熊本の辛子レンコンを真似たという「レンコン肉詰め」。「ネギじゃなくてピーマンの方がうまいの?」と、きたろうさんが訊くと「深い考えはないよ」と素っ気ないご主人。「でもちゃんと炭で焼いて、こだわってんじゃん?」と、さらに訊くと「最初は店をずっと続ける気が無かったから、ガスだったな。それから店に若いのが入ったから、続けるなら炭でやらなきゃいけないかなと……」と言う。しかし、とりかわピーマンを食べた西島さんは「ピーマンがさっぱりして美味しい」と、お気に入りの様子。レンコン肉詰めも食感と濃厚ダレのバランスが絶品なのだが「タレは、ココで前に店をやってた知り合いからの引き継ぎ。その人が店を辞めるから“やるか?”って言われて“やりますよ”って始めた。だから開店資金は、ほとんどタダだね」とご主人。

友人から酒場を譲り受けた26歳の時、ご主人には飲食店で働いた経験はなかった。「店を始めた時は焼きトンと、やっこだけだったかな。しばらくしてお客さんが、お新香ぐらい置いたらどうだって。酒場をやったのも、仕事がなかったからだよ。プー太郎で、しょうがないからね」と、たん下の串を焼きながら話すご主人。きたろうさんがたん下を頬張るのを見て、真剣に「焼けてる?」と尋ねるご主人に、思わずきたろうさんも大笑い。「“焼けてる?”って訊くのやめてよ。うまいよ!」。串の確かな味と、冗談とも本気ともつかないご主人の人柄が、この店の魅力になっているようだ。

波乱万丈の人生の末に残ったもの

やきとり戎が有名な理由のひとつが、本店のある通りのあちこちに、支店があるため。その勢いは“戎通り”と呼ばれるほどだ。「やっぱり焼き鳥がうまいから繁盛するんだね」と、きたろうさんが言うと、「いやいや、焼き鳥は大したことない」とご主人。「じゃあなんでお客さんが来てんの?」と訊かれ「酒場に行く時、必ずしもうまいからって行きます?うまが合う人としゃべりに行ったり、そいつの顔を見て安心しに行く。そういうもんですよ」。気の合う人と気持ち良く飲める場所だからこそ、人が集まるのだという。しかし、ご主人がその境地に至るまでには波乱万丈の歴史があった。

「16店舗潰したからね」という言葉に、思わず目を白黒させる二人。「吉祥寺でスペイン料理屋をやった時は、労働ビザも取って、スペインから料理人を呼んできてね。でも、料理人が全員引き抜かれた。あと、恵比寿ガーデンプレイスでも潰したね。39階の店で、全部で2億ぐらいかかった。で、最後に残ったのが、この焼き鳥屋」と言うご主人。次に出てきたプレーンオムレツは、ご主人の今の生き方のように、シンプルな味付けで、美しい焼き上がり。プルンと柔らかく、卵の味が優しく口に広がる。そして、最後の一品は「カキと九条ネギのオイスターソース炒め」。広島産のカキとオイスターソースという鉄板のコンビネーションに、京野菜・九条ネギの甘みが加わり「美味しいよ、落ち着くよ」と、きたろうさんが唸る。

お店をやっていて嬉しい時は?と訊くと「繁盛してる時」。お店を続けるために守っていることは?と訊くと「儲かるからやるっていうのは、すぐ終わっちゃうね」と、人を煙に巻くようなことを言うご主人。しかし、それはご主人の偽らざるところ。波乱万丈の人生の中で、ご主人の築いた商売の哲学があり、そのおかげで戎通りに今夜も人が溢れかえっている。やきとり戎が、ご主人の言う「明日また生きようと思える場所。明日も生きていいかなと思える場所」である限り、人の流れは途切れない。

やきとり戎 本店の流儀
その壱

道に面したオープンな店によくある、雨風よけのビニールシート。しかしこの店では、多少の寒さは我慢して雰囲気を楽しむのが○。
その弐

ネギではなくピーマンを使う、とりかわピーマン160円(1本・税別)と、辛子レンコンを手本に考案されたレンコン肉詰め300円(1本・税別)は、ともにこの店の定番。
その参

タチの悪い酔っ払い対策として、この店で長く守られているのが、この決まりごと。
その四

淡白な味わいのタンだが、その根元である「たん下」は脂も乗って美味。1本110円(税別)
その五

酒場に必要なのは、何よりも酒と会話というご主人。会話が弾む店の雰囲気もまた大事。
その六

足し算引き算なしの、ごくごくシンプルなオムレツ。焦げのない美しい見た目がそそる。プレーンオプレツ320円(税別)
その七

プリンプリンのカキと、ネギの甘みがマッチした一皿。カキと九条ネギのオイスターソース炒め380円(税別)※仕入れによってネギの種類は変わる。
きたろうさんから、やきとり戎 本店へ贈る「愛の叫び」 神様 戎さまは自由奔放だと悟った———きたろう
「やきとり戎 本店」
住所
電話
営業時間
定休日
東京都杉並区西荻南3−11−5
03-3332-2955
13:00〜23:30
無休(年末年始除く)
  • ※ 掲載情報は番組放送時の内容となります。

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