BS-TBS「〜癒・笑・涙・夢〜夕焼け酒場」 毎週土曜よる6:00〜6:30 BS-TBS 2016/2/27放送 #86 百味

百のお客さんと、百の味があればどんな苦境も乗り越えられる!真面目なご主人の、愛される哀愁酒場とは
その人生、ジェットコースター級の波乱万丈

日本の航空発祥の地、所沢の駅から伸びる商店街、その名もプロペ通り。「地元密着 足かけ五十年 新鮮味安さで」という貼り紙を目印に、地下へ階段を降りると、260席もあるという広い店。今回の「百味」は、半世紀の歴史を持つ名店。「ご主人、この中にいろんな店があってもいいくらい広いよ!」と、きたろうさんが語りかけたのは、約40人の従業員が働く巨大酒場を切り盛りする大久保金一郎さん。いつものように焼酎ハイボールで乾杯すると、遠く席の離れたところからも「カンパーイ!」の声があがる。そんな気取りのない雰囲気が、実に居心地がいい。

150〜180はあるというメニューから、最初の一品は定番の肉じゃが。「これ、見るからに美味しそうじゃない」と、きたろうさんが言うように、大きなジャガイモとニンジンに出汁が染みて実に美味しそうな色をしている。「ホクホク! 美味しい、沁みるわぁ」とは西島さん。「これは開店以来のメニュー?」と訊くと、「最初は焼き鳥とか煮込みだけですね。もともと兄と一緒にひばりヶ丘の駅前でお店を始めて、清瀬、所沢と次から次へお店を増やしていったんです。当時の年商は、だいたい8億5000万くらい」とご主人。ピーク時には西武沿線に10店舗を構え、人生の絶頂期にあったご主人だが、その成功の鍵は「従業員が一生懸命頑張ってくださりましたから」と謙虚。「田舎から出てきて、私には全員が自分より優秀な人に見えていました。人の三倍働かないと、人のお尻に食いついていけないと思って…」というご主人の人生を変えたのが、バブル景気だった。「もう、どこまで行くのかと思いましたよ。でもそれは夢物語で、今はこの1店舗だけ。バブルが崩壊して、銀行から借りれば毎日利息が付いて、資産は毎日値減りする。どうやったらいいか目先が真っ暗でした」。恐る恐るきたろうさんが借金の額を訊くと「一番多い時で10億。利息だけで、ものすごく取られました。辛いのは閉店で、出店する時の10倍くらい勇気と決断がいるんです。設備とか億の金を捨てるようなものですから」。人生の絶頂とドン底を味わったご主人だが、今の表情は実に穏やかだ。

誰からも愛されるご主人の顔に、いつでも会える哀愁酒場

次のおつまみは、北海道の天然ホタテ、地タコと中トロのお刺身三種盛り。「中トロは寿司屋がネタに使うマグロです」と説明してくれたのは店長の内堀さん。「美味しい!お寿司屋さんで使うマグロをこんなに厚く切っちゃうなんて!ホタテもタコも大きいし、濃厚ですね」と、西島さんは大満足。続いては旬のぶりのかま煮。ぶりかまといえば、隠れた身をほじくり、ほじくり、という感じだが、こちらのそれはプリプリの身がしっかり。ここできたろうさんが気づいた。「肉じゃがといい、ぶりのかま煮といい、ここは煮物系が旨い。抜群だよ」。長く愛される秘密はそこにもあった。

苦しい生活のなか、ご主人は店をやめてしまうことも考えた。「女房がやめようと言ったらやめようと思っていました。何のために結婚したのか分からないくらい、苦労していましたから。そうしたら“最後までお父さんについて行きます”って言ってくれて。それで去年の11月にね、銀行からの借入金を全部返済したんです。だから、女房だけは楽をさせてやりたい。ずっと苦労をさせてきたから」とご主人。古くからの常連さんは「ご主人は、仕事のできない人でも決してクビにすることがない。そういう人は逆に忠誠心が深いから。本当にここは人情のある昭和の哀愁酒場ですよ。東京広しといえど、なかなかないですよ、そんな店は」という。

最後の一品は、キムチ鍋。小鍋を囲んで「ここの出汁モノはすごいからね」と、期待に顔が緩むきたろうさん。スープを飲んだ西島さんは「美味しい、この出汁。これは止まらなくなりますね。シメって言いながら、ちょっと箸が止まらない」と大満足。「しかし、ここはメニューがなんでもありますね」ときたろうさん。だから「百味」かと思いきや、ご主人は「店を始める頃に、絶対来てくれるようなお客さん100人を、味方につけなきゃいけないと話していましてね。百人の味方を得るという意味なんです」という。確かに百人の味方は無敵だった。10億の借金なんか、ものともしない。ご主人の人柄と真面目さだけがなしうる、最高の経営術がそこにあった。

百味の流儀
その壱

大きく切られたジャガイモ、ニンジンをほっくり炊き上げた肉じゃがは、この店の定番メニュー。ボリュームたっぷりの肉じゃが430円(税込)
その弐

寿司店ではネタに使われるという、上等の中トロを刺身に。北海道産天然ホタテ、地タコも新鮮かつ濃厚な旨みたっぷり。刺し身3種盛1,080円(税込)
その参

締まった身に、店自慢の出汁が染みて実に美味しい。ぶりのかま煮800円(一人前・税込)※大きさにより、値段は変わる
その四

店を長く続ける秘訣を訊かれ、日々の嫌なこと、辛いことを耐えて耐えて耐え抜くことだというご主人。
その五

美味しい出汁とピリッとしたキムチの辛さがマッチした一品。辛過ぎないのもいい感じ。とんキムチ鍋1,000円(税込)
きたろうさんから、百味へ贈る「愛の叫び」 所沢で見つけた酒場の巨人、小説にしたい。———きたろう
「百味」
住所
電話
営業時間
定休日
埼玉県所沢市日吉町4−3
04-2921-0100
11:00〜22:30
無休(年末年始を除く)
  • ※ 掲載情報は番組放送時の内容となります。

ページトップへ