BS-TBS「〜癒・笑・涙・夢〜夕焼け酒場」 毎週土曜よる6:00〜6:30 BS-TBS 2016/3/5放送 #87 鏑屋

多くを語らず多くを諭すご主人とその全てを受け止める店長 板橋・大山の酒場に継がれる味と人情とは
1日100人前を仕込む絶品煮込み

板橋区、ハッピーロード大山商店街の外れ、大きな赤提灯が目印の酒場「鏑屋」。暖簾をくぐると、ご主人の興本照男さんと、店員さんの元気な声が出迎えてくれる。さっそく焼酎ハイボールで乾杯し、最初のおすすめ料理をお願いすると、店長の伊藤崇(しゅう)さんが「そうですね、うちはやっぱり煮込みですね」とのこと。大鍋を覗き込んだきたろうさんが「色が随分綺麗ですね」と言うと、「うちはあまり煮込まない、味噌汁系の煮込みなんです。煮込みすぎると、モツの油が抜けてパサパサになって、美味しくなくなっちゃう」と店長。味は白味噌がベース。「東京は白味噌ですね。あまり甘みを加えると、飽きちゃうんですよね。毎日食べてて」。西島さんが「醤油の煮詰まった感じじゃなくて、優しい感じ」と絶賛する煮込みは、持ち帰りも可能で、多い日には100人前も仕込むという。味の基本は、ご主人が27歳の時に修業先の焼き鳥屋で衝撃を受けたという煮込みで、それをさらに進化させて今の看板メニューに至る。「煮込みはご主人以外に触らせないの?」と訊くと、「そんなことはないです。みんな経験が必要ですからね。どんどん経験を積まないと」と、ご主人は優しく笑う。

煮込みに満足した2人が、期待を込めて次のオススメをお願いすると「焼きですかね。スタミナいきますか」と店長。ニンニク入りのたれに漬け込んだ豚のハラミ肉の串焼きは、食欲を誘うニンニクの風味と柔らかな食感が抜群。珍しいのは、1人前が3本だということ。お肉の出る量を上げることで、新鮮なお肉を仕入れて使うことができるのだとか。これはお客さんにとっても、食べ応えがあって望むところに違いない。

店に溢れる笑顔のワケは

どちらかというと物腰柔らかなご主人に対し、店長は店の明るい雰囲気を引っ張っている。「高校を卒業して、この店で何年かアルバイトをしたんですよ。その後、店をやめて10年、バンドをやってたんですけど食っていけなくて。30歳近くになってバラード作ってると悲しくなってくるんですよね」と、店長が語ると「バイトをやめても毎晩飲みにくるんですよ。ただ酒を飲みに毎夜毎夜」とご主人。「飲んで話してると“下手くそなギター”とかケチョンケチョンにされて。でも、それがなかったらズルズルと40歳くらいまで、音楽をやってたかも」と店長は振り返る。「(店長は)いい加減なところがいいんですよ。私はキッチリした人が苦手なんです、自分が責められてる気がするから。ちょっと出来の悪い子の方が、愛着を感じるんでね」。そんなご主人の教育方法は一風変わっていて「僕がやらなきゃいけないことをやってないと、叱るわけでもなく、自らやるんです。そういうのを見ると、すごい後悔するんですよね」と店長は語る。照れ臭そうにご主人は言う。「あんまりちょっかいを出さないで。基本だけ教えて後はほっとくんですよ。するとゴチャゴチャになるけど、自分でやり方をみっけて、やっていくんですよ。意外とそんなもんでね。多少失敗しても構わない、人間だから。僕だってしょっちゅう失敗してるし」。そんなご主人だからこそ、こんな笑顔に包まれた店が出来るのだ。

次の一皿はホルモン焼き。細かく切らずに、串一本に一枚のホルモン(腸)という独特のスタイルで、ピリ辛ダレが実に焼酎ハイボールとよく合う。西島さんが「うわー、柔らかい」と驚いた意外な食感も人気の秘密。そして最後の一品は、椎茸シュウマイ。その名を聞けば、椎茸がたっぷり入ったシュウマイかと思うが、実は椎茸のカサに白身魚の練り物を詰めて揚げた一品。「シュウマイでも、なんでもないよ!」と言うきたろうさんに、さらりと「なんでもないけど美味しいでしょ」と切り返す店長。このポンポンと会話が弾む感じは、店員さんの笑顔とともに得難いこの店の魅力となっている。

西島さんがご主人に大切にしていることを訊くと 「自分に弟子ができたり、またその人が店長になって弟子ができたり……、そういう繋がりかな。それをみんなにずっと持ってほしいね。代々ずっとね」。そんなつながりが、血のつながりよりも大事だというご主人。大切なことを言葉でなく行動で示す教育法は、きっと煮込みの味と共に、店長ほか多くの若い店員さんに引き継がれていくのだろう。

鏑屋の流儀
その壱

厳選された白味噌を使った、味噌汁仕立てのもつ煮込みは、毎日食べても飽きない。特製煮込み鍋400円(税込)
その弐

にんにくダレに5時間漬け込んだ、豚のハラミ肉をの串焼き。スタミナ焼き1人前3本390円(税込)
その参

仕入れた肉を、新鮮なうちに食べてもらいたいというご主人。肉の回転を上げるためにも、鏑屋では串焼きが3本で1人前。
その四

ホルモン(腸)を、一味ダレに5時間漬け込んで焼き上げる。ホルモン焼き 1人前3本390円(税込)
その五

白身魚の旨味と椎茸の旨味が合わさって美味。アツアツで食べたい一品。椎茸シューマイ2個460円(税込)
きたろうさんから、鏑屋へ贈る「愛の叫び」 チームワークでトライ!! 得点 煮込———きたろう
「鏑屋」
住所
電話
営業時間
定休日
東京都板橋区大山町14−6 下田ビル1F
03-5995-9941
17:00〜24:00
月曜
  • ※ 掲載情報は番組放送時の内容となります。

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