BS-TBS「〜癒・笑・涙・夢〜夕焼け酒場」 毎週土曜よる6:00〜6:30 BS-TBS 2016/4/30放送 #95 大衆酒場 富士川

義理の兄弟が、二人三脚で守り続けた ほかでは味わえない“くじら料理” そして今、弟は義兄の帰還を待つ
冷凍ではなく“生”のくじら、その圧倒的なうまさ

店の看板には特大の文字で「大衆酒場」。店に入るとロングカウンターに、賑々しい提灯が連なる景気の良さ。「毎日がお祭りみたいですね」と、きたろうさんが問いかけたのが店のご主人・早川好彦さん。いつもは厨房で包丁を振るい、あまり客前には出ないというご主人は、寡黙で口数も少なめ。そんな酒場も大好物のきたろうさんは「これはなかなか、ソッと飲んでサッと帰るイメージですね」と、いつにも増して楽しそう。いつもの乾杯も「たまにはしっぽり」と、きたろうさんと西島さんで、焼酎ハイボールの杯を交してスタート。

最初のおすすめ料理は、本まぐろの盛り合わせ。三種盛りと聞き「西島は大トロと赤身、どっちが好きよ?」、「赤身が好きなんですよ」、「通みたいなこと言って。ねぇ大将?」なんて定番のやりとりが、この店にはハマる。さて登場したのは、見事に脂の刺しが入った大トロ、中トロに、色鮮やかな赤身。「年配のお客さんが多いので、やっぱり赤身系が先になくなっちゃう」というご主人が、まぐろの美味しさを楽しんで欲しいと三種盛りに。その素材の良さを見れば、ご主人の目利きのほどが分かる。

次は、ほかの店ではなかなかお目にかかれない、くじら料理をいろいろといただくことに。きたろうさんは「昔はくじらが出てきたらがっかりしたもんだ。それが今は高級品だよ」という世代。しかし、この店のくじらはモノが違う。冷凍肉を解凍したものではなく、生で仕入れるという。早速、その鮮度がよく分かる刺身をお願いすると、くじらの刺身は初体験だという西島さんが「お刺身すごい。こんなに色が濃いの? しつこくない感じは魚に近いけど、でもお肉! 美味しい」と大興奮。続いて登場したのは、くじら料理の定番「立田揚げ」。自家製のタレに漬け込んだ後、180度の油でカラッと仕上げた立田揚げは、キリッと冷えた焼酎ハイボールに良く合い、杯が進む。きたろうさん世代には給食で食べた固い肉というイメージの立田揚げだが、この店のそれは最高のつまみ。そして最後のくじら料理は生姜焼き。くじらの背肉と生姜、玉葱を特製ダレでサッと炒めた一皿は、ボリュームもガッツリ。きたろうさんが「なんでくじら料理をやろうと思ったの?」と訊くと、「やっぱりほかの店でやってないものをやらないと。それも社長が考えたんですけど」とご主人。この社長というのが、ご主人の義理の兄。この二人の歩みを抜きにして、富士川の歴史は語れない。

時には反発しながらも、深く結ばれた絆

45年の歴史がある富士川は、ご主人の義理の兄・松田保雄さんが開業した。ご主人の実の姉と結婚した義兄と、義兄の実の妹と結婚したご主人。珍しい関係だが、その結びつきは強かったのだろう、修行中の料理人だった20歳のご主人は、富士川の開業と共に店を手伝い始める。「喧嘩をしたことは?」と訊けば「たまには衝突もしますよ。喧嘩して飛び出したこともあるし」とご主人。その時は2年の長きにわたり、店を離れたという。これには思わずきたろうさんも「長いよ! 普通は3時間とかそんなもんだよ」と呆れる。そんな義兄が2年前、市場へ向かう準備をしている時に、脳梗塞で倒れてしまう。心配と不安を抱えながら、その夜も、ご主人はいつもどおり店を開け厨房に立った。「(不安だったけれど)なんとかなっちゃいましたね……」とつぶやくご主人は、今日も義兄の回復を待ちながら暖簾を守っている。

最後の一品は「豆腐ステーキ」。熱々の鉄板に溶き卵が敷かれ、その上に揚げた豆腐とたっぷりのかつお節。タレが染みた豆腐と香ばしいかつお節の香りが、食欲をそそる。この一品を考えたのも義兄。「いや〜、俺は何も考えてないね」と謙遜するご主人に、店のこだわりを訊くと、散々考えて「別にないよね」とボソリ。謙虚で堅実、自らの仕事をするのみというその姿に、惹かれるお客さんも多いに違いない。「ご主人にとって酒場とは?」という質問に「やっぱ生き甲斐ですかね」と語る。そんなご主人が働く後ろ姿を見ながら、ソッと飲んでサッと帰る。そんな酒場も粋なものだ。

大衆酒場 富士川の流儀
その壱

様々なまぐろの美味しさを知って欲しいと、大トロ、中トロ、赤身の三種類セットをご主人が考案。本まぐろ盛合せ1,080円(税別)
その弐

“ほかの店でやっていない料理を”と、くじら料理を始めた富士川。品質の良いものが入った時だけ提供するという「くじら刺身」(580円・税別)や、くじらの背肉を油で揚げる定番料理「くじら立田揚げ」(580円・税別)。そして、すりおろした生姜と玉葱を加え、甘めの特製ダレで炒めた「くじら生姜焼き」(580円・税別)などがいただける。
その参

こだわりを訊かれて、考え込んでしまったご主人の答え。寡黙に、そしてお客さんを大切に仕事をしてきた、ご主人らしい答え。
その四

一度揚げた豆腐を、卵を敷いた鉄板で焼き上げる。豆腐鉄板ステーキ500円(税別)
きたろうさんから、大衆酒場 富士川へ贈る「愛の叫び」静かなる頑固者 出てきてくれてありがとう クジラおいしかった。———きたろう
「大衆酒場 富士川」
住所
電話
営業時間

定休日
東京都大田区大森北1−9−8
03-3765-4957
月〜土曜14:00〜23:30、
日曜・祝日14:00〜22:00
年中無休
  • ※ 掲載情報は番組放送時の内容となります。

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