BS-TBS「〜癒・笑・涙・夢〜夕焼け酒場」 毎週土曜よる6:00〜6:30 BS-TBS 2015/2/14放送 #39 関所

自由奔放だった先代が残した鴬谷の酒場とひとつの矜持寿司が繋いだ親子二代のもてなし
その刺身の味、酒場のレベルにあらず!

JRの鴬谷駅の北側に、古くからの酒場が軒を連ねる一角がある。今回訪れたのはそのなかの一軒「関所」。「通してもらえるかな? 関所を」なんて、きたろうさんが軽口を言いながら中に入ると、テーブル席がずらりと並ぶ相当に大きな店。待ち受けるのは武家役人ではなく、ちゃきちゃきと愛想良く受け答えしてくれる美人女将の後藤小夜子さんと、ご主人の後藤譲治さん。早速焼酎ハイボールをお願いすると、「うるいの酢味噌あえ」というちょっと見慣れない山形の山菜を使ったお通しとともに、グラスがやってくる。乾杯してうるいをいただくと、食感の強いネギのような味わいで、酢味噌も絡んで実に美味しい。これは酒も進むと、これから出てくるおつまみに期待も膨らむ。

さて、最初のおすすめ料理として登場したのは、毎日、千住の魚河岸(足立市場)で仕入れるという刺身の3点盛り。千葉の勝浦で獲れたサザエに、長崎は五島列島のマグロ、そして珍しいところで和歌山のタチウオが並ぶ。「身が分厚くて立派なタチウオですね。タチウオは皮のところがいいんですよね」と西島さん。タチウオが大きい分、皮がちょっと硬い。そこで皮をちょっと炙ってあるのだが、それがまた香ばしくて美味しい。そのタチウオの歯ごたえはもちろん、マグロもサザエもその包丁仕事が際立っている。聞けば先代のご主人は寿司職人で、この店の始まりも寿司屋だったという。今のご主人はかつて、その店で板前修業を積んでいたのだが、次の板場へ移ろうと決意。そこで先代の娘である小夜子さんに伝えたところ……「バァーってトイレに駆け込んで、しばらく出てこない。泣いてたんですよ。てっきり“俺が”辞めるって聞いて泣いたのかと思って。でもね、誰でも泣くらしいんですよ(笑)」。こいつは俺に惚れていると勘違いしたご主人は、猛アタックのすえに交際をスタート。3年後に見事、結婚にこぎ着けたのだった。

先代が涙して食べた一カンの寿司

次に「器が熱いんで気をつけて下さい」と、ご主人が出してくれたのは、鯛のかぶとの酒蒸し。「鯛の頭は、実は身がいっぱいあるんだよ!」とご機嫌のきたろうさんに「煮物とも、塩焼きとも違って、酒蒸しってこんなに味が濃くなるんですね」と驚く西島さん。もっと食べたくなったきたろうさんは「やっぱり身が少ない!」と、わがままを言い出す始末。そして話はまた先代のエピソードへ……。

バイタリティ溢れる先代は、寿司屋だけに飽き足らずパブや居酒屋、回転寿しなどを次々とオープン。周りの“もう手を広げないで”という気持ちを振り切り、事業を拡大したが失敗を重ね、ついには実家も借金で取られることに。「それも取られる三日前ぐらいに言うんですよ。えぇ〜って、出て行くにも何から手をつけていいやら分からず……」と小夜子さんは語る。そんな先代も60歳で体を悪くして入院。「まだ少しは自分で食べられる時に、電話をかけてきて“寿司が食べたい”と言うんです。まだ僕の握った寿司を食べた事が無かったんですよ。握って持っていきましたよ。初めて食べてもらいました。一口ですね、一口食べてあとはもう涙流して、それが最初で最後でしたね」。このあまりにドラマチックな話に「男同士っていいよね、そういう意味ではね」と、きたろうさんもしんみり。そんな話を聞いては、この店自慢の寿司を食べずにはいられない。

マグロ、シマアジ、エビにホタテ、そしてイカ……。シャリが多い寿司は、酒場ならではの考え抜かれた大きさ。優しい味のシャリは飲んだ後、ほんの少ししっかりしたモノをお腹に入れたいというお客さんの思いを叶えている。「一番にお客さんの気持ちになれって先代に言われました。自分が飲みにきた時、どういう料理出されたらうれしいか考えて出せって」。新鮮な魚介にしても「美味しい時期に食べて欲しいから、ナマモノで儲けようと思ってません」というご主人。そんなご主人の出す酒や料理を味わうことなしに、酒呑みはこの店を素通りなどできないはずだ。だってこの店の名は「関所」。そこを通らないわけにはいかないのだから。

関所の流儀
その壱

ご主人が千住の魚河岸で選んだ魚介類は、どれも鮮度抜群。その日の仕入れにより内容が変わる「刺し身3点盛り(この日はサザエ、中トロ、タチウオ)」は1,000円〜(税抜)
その弐

鯛の身をポン酢につけていただく「鯛のかぶとの酒蒸し」は500円(税抜)。酒蒸しで引き出された鯛の上品な旨味がたまらない。
その参

寿司職人だった先代から受け継いだこの店の名物。「握り寿司(マグロ、シマアジ、エビ、ホタテ、イカ、かっぱ巻、鉄火巻)」900円(税抜 ※仕入れによりネタの変更あり)。「あさり汁」は200円(税抜)
その四

先代から受け継いだ、酒場の暖簾を守る料理人としての矜持。これを胸にご主人と女将は真心こめた酒と料理を出している。
きたろうさんから、関所へ贈る「愛の叫び」 先代に今日の寿司を食べてもらいたかった。  ———きたろう
「関所」
住所
電話
営業時間
定休日
東京都台東区根岸1−7−3
03-3872-4168
17:00〜24:00
日曜日、祝日
(土曜日が祝日の場合は営業)
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