ビジネス街と歓楽街が同居する錦糸町には、サラリーマンたちが愛してやまない大衆酒場が多くある。記念すべき「夕焼け酒場」の第1回目は、そんな酒場のなかでもとびきりの名店「三四郎」。暖簾をくぐると、馬蹄形のカウンターと美人女将が迎えてくれる。「前に入ろうと思ったら、満員で入れなかったんですよ。初めて入れました」と、感慨深げなきたろうさん。この店には、名店の証しが2つある。
ひとつめは白木のカウンター。高級店の象徴のように言われる白木のカウンターだが、これはすこぶる手がかかる。手入れをサボればすぐに汚れ、くすみ、もとの色を取り戻せなくなってしまう。三四郎のカウンターは、長い時間を店と共に刻んでいながら常に美しい。聞けば欠かさずクレンザーで磨き、仕上げには牛乳で拭き取るのだという。
もうひとつはカウンターの中で店を切り盛りする女将、棚橋ケイコさんの美しさ。和装にパリッと折り目の入った割烹着に、その「凛」とした佇まい。正しく歳を重ねることで気品を身につけた、そんな女将の姿を見ながら飲む酒や料理は格別においしい。
下町の大衆酒場では、焼酎ハイボールでの乾杯が流儀。常連さんのおすすめどおり「五色いも」をお願いすると、マグロ、タコ、イカ、イクラに卵黄の色鮮やかな碗が出てくる。思わず「これ、芋じゃないじゃない?」と、きたろうさん。実は、芋とは山芋のことで、この5色の具の下に隠れている。つまり豪華版の山かけ。醤油を少したらし、卵黄を崩しかき混ぜてズルズルっといただいてほしい。そして、次のつまみは「くりから焼」。継ぎ足し継ぎ足し受け継がれた秘伝のたれに漬け、備長炭で焼かれたうなぎは、香ばしく甘辛く山椒がピリリと効いている。串を頬張った西島さんから、思わず「おいしい〜!」という感激の声が飛び出す。
気分も上々のきたろうさんと西島さんが、「三四郎で絶対食べておきたい料理は?」と女将に訊ね登場したのが、グツグツ煮立った「どぜう鍋」。思わずきたろうさんが「どじょうをどうじょ」と親父ギャグを放てば、「はい、面白かったです」と、女将が真顔できり返し。「うわぁ、みんな親父ギャグ言ってるんだよ、だから慣れてるんだよ」ときたろうさん。そんな会話もこの店では立派なつまみ。「お店をやってて楽しかったことは?」の問いに、「常連さんが定年になってね、“ここの店によく来たんだよ”と言って、奥さん連れてきたり、子供さんといらしたり。常連さんが亡くなった後に“うちの親父がここに来てたんだってねぇ”って息子さんが来られたりね。そういう時ですかねぇ」。こうやって、常連客も親から子へと世代替わりするのだ。最後に「店を長く続ける秘訣は?」と訊けば、女将さんはいたずらっぽい笑顔を浮かべ、「丈夫なこと。病気しないこと。そのために少しお酒を控えること」。これには、きたろうさんも「分かりました……」とおとなしく引き下がる。でもねぇ、こんなにうまい料理があれば、酒も呑んじゃうよねぇ……。
-
思わず頬ずりしたくなるほどの肌触り。長い時間を経た今でも、檜の香りが微かに放たれる。
-
食べたくないものを出したくないという女将。だから三四郎にはお通しがない。
-
串にさされた鰻が、剣に巻き付いた竜(倶梨伽羅竜王)のようにみえることから、この名がついたと言われる(309円/税込)。
大衆酒場初心者の西島さんが「お芋の味ってこんなに濃かったかしら」と感嘆した五色いも(700円/税込)。
-
メニューは先代の女将キク子さんが書いたもの。メニューに囲まれていると、先代が今も店にいるように思えるという。
-
どじょうの身はプルプルしていて新鮮そのもの。骨も骨煎餅のようでおいしい。体が芯から暖まる(927円/税込)。
-
住所
電話
営業時間
定休日 -
東京都墨田区江東橋3-5-4
03-3633-0346
平日17:00〜22:00
土曜12:30〜18:00
日曜・祝日
- ※ 掲載情報は番組放送時の内容となります。