繁華街にビジネス街、歓楽街に高級住宅街と、いろんな顔がある五反田。今回、うかがったのはそんな五反田の駅近くにある中華料理がメインの大衆酒場「呑ん気」。大きく開け放たれた入り口からは、立ち飲みカウンターの賑わいや、厨房で鍋を振るうご主人と女将さんが見える。とりあえず今日も焼酎ハイボールを片手に常連さんたちと、「一期一会ですから、ご一緒に」という、きたろうさんの声掛けで乾杯。
まず気になるのはカウンターにズラリと並ぶ大皿惣菜の数々。そこから日替わりメニューの「豆のピリ辛煮」をチョイス。「辛いわ!これはお酒がすすむ。お酒にあうような味付けだね」というきたろうさんに、「ボク、神田の方で中華のコックをやってたんで、そういうつまみが多いんですよ。あの辺は昔から立ち飲み屋が多いでしょ。ふらっと寄って、パッと帰る。気楽で1人でも行ける店にしたくて立ち飲みにしたんです」とご主人。女将さんと2人、赤い服を来て店を切り盛りする姿が実にかわいらしい。「ご主人も若い時はいい男だった?」「昔はねぇ。皆さんと一緒でいい男でしたよ」と、ここで常連さんが「よく見ればチャールズ・ブロンソンだけどね」。「それは良く言い過ぎだよ。でも確かにそういわれてみれば……」ときたろうさん。そんなやり取りを聞いてニコニコしているご主人に、ホッと和んでしまう。
ご主人が「焼きたてだよ」と次に出してくれたのが、こだわりのローストポーク。豚の肩ロースをオーブンに入れ、強火で1時間さらに弱火で1時間30分じっくりと焼いた肉を、豆板醤やニンニクを入れた中華風特製ソースで味付けた一品だ。手間ひまをかけることで、旨みを逃がさず、ジューシーで、実に柔らかい。「お〜立派! 脂が乗ってますねぇ。ピリ辛でメチャクチャおいしいです」と西島さんが絶賛。さらにノってきた彼女は上着を脱ぎ、気合いを入れて次の一皿「チンジャオロース」へ! きたろうさんも「あ、熱いけどうまい。この量がまた、いいじゃないか」と、酒のつまみにピッタリな量を褒める。と、そこで入店するお客さんに、突然「お帰り!」の女将さんの声。「お帰り?」といぶかしむ2人に「毎晩お見えになる常連さんは“お帰り”で、一見さんは“いらっしゃい”。顔を覚えたら“お帰り”なんですよ」と女将。どうもこの店の明るい雰囲気は、女将さんの朗らかな人柄によるものらしい。
ご主人の堀田準一さんが店を開いたのは20年前。それまで勤めていた中華料理店を突然辞めて帰ってきたという。「性格だからダメなんだよね。もうやだと思ったら辞めちゃう……。まぁ、なんとかなるだろうと思って」というご主人と「相談無しに、今日の今日でお店を辞めたって聞いて“えっ!”と思ったけどねぇ。でもしょうがないじゃない? まぁいっかと思って」という女将さん。2人揃って相当に吞気な性格なのだ。料理人としての腕を頼りに店を開いたご主人は、何故か“なんとかなる”と強気だったという。そんなご主人に、料理で一番こだわっている部分を聞くと「出汁(スープ)だけはちゃんとしっかりとってるね、そうじゃないとちゃんと味が出ないからね。普通の立ち飲みじゃ、出汁はとらないけどね」という。身の付いた鶏ガラ、長ネギ、人参、生姜、ニンニクから、時間をかけてとる栄養満点のスープを使った、この店の必食メニューがマーボー豆腐。いつもより食欲旺盛なきたろうさんは「ちゃんと中華。おー辛い! 辛いね、旨いね。酒飲んで栄養が付くなんて最高だね」と、実に満足そう。最後に、きたろうさんが女将に訊いてみた。
「幸せですか?」
「そうですねぇ、今は失業の心配がないからね」
そう言って笑う女将さん。そんな幸せに満ちあふれた酒場の酒と料理は、いつだって最高だ。
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惣菜の数々は、すべてご主人の手づくり。この日の日替わりメニュー「豆のピリ辛煮」は240円(税別)。
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肉から染み出す肉汁のうまさも格別ながら、この中華風特製ソースのピリ辛具合がなんとも絶妙。240円(税別)。
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この店では「お帰り!」と言われてようやく常連さんの仲間入り。
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自家製鶏ガラスープが味に深みを与え、本格的な香辛料を使用して重層的な辛味を生み出したマーボー豆腐(440円・税込)。
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住所
電話
営業時間
定休日 -
東京都品川区西五反田1−2−6
03-3490-5719
月〜金16:30〜23:00
土曜・日曜・祝日
- ※ 掲載情報は番組放送時の内容となります。