BS-TBS「〜癒・笑・涙・夢〜夕焼け酒場」 毎週土曜よる6:00〜6:30 BS-TBS 2016/6/11放送 #101 品川亭

夫婦の記憶が詰まった西新宿、路地裏の店 暖簾を守る母と息子の味は 先代が残した絶品料理
時間が止まったような佇まい

移り変わりの激しい新宿の街で、昭和初期の風情が残る西新宿4丁目。かつては料亭の離れだったという“隠れ家”的な建物にある「品川亭」は、樽の椅子に、七福神のお面が壁を覆い、まるで時間が止まったかのような一軒。お店は女将の品川ちかさんが切り盛りし、息子の純一さんが厨房で腕をふるう。店に通って2、3年という人から、20年という古参の常連さんまで、まずは焼酎ハイボールで乾杯し、最初のオススメ料理“煮物”をいただく。大好きな里芋を頬張りながら、きたろうさんが「店はもう何年? お母さんが作ってるの?」と訊くと、「店は43年目。煮物は店を始めた当初から。手間をかけたものは、それだけ正直に味が出ますからね」と女将。ニンジン、こんにゃく、筍と、茹で時間で味や形が変わる里芋とがんもは、別の鍋で煮込み、お客さんに提供する前になって盛り付けるという。

店を始める前は、写真店を営んでいたという先代。かつての西新宿は、小西六(現コニカミノルタ)の工場があり、家電量販店のヨドバシカメラの前身が店を構えるなど、写真との関わりが深い土地。52年前、先代と女将は知人を介して知り合い結婚するが、お店の経営の悪化に伴い酒場を開くことを決意。「そんなに不安はなかったですよ。料理好きだった主人も、勉強して努力もしたと思うんです」という女将。そんな先代が16年前に亡くなり、息子の純一さんが店を継いだ。「軽い気持ちで、うちの酒場だったら楽ができるから」と入ったのは、先代が亡くなる10年ほど前。息子だと分かっているお客さんの前に立つと「逆にプレッシャーがかかりました。それからですね、“まともになった”って言ったら変ですけど」と笑う。「コミュニケーションのとり方とか、教えてもらったわけじゃないけど、見て学びましたね。お客さんの“息子さんじゃ分からないかな……”っていう感じが、辛いですからね」。

先代から受け継いだ人との付き合い方と料理法

2品目は「わさびをたっぷりつけて食べてください」と出された“つくね”。この組み合わせが抜群で「わさびをつけると、つくねがスキッとした」とアツアツを頬張る西島さん。「つくねの素の味が出ますね。それに、わさびが辛くないんですよ、中和されて」という女将の説明に納得。そのバランスの良さは、先代と女将さんの関係のようだ。二代目曰く「まぁボケとツッコミみたいなもんでね。親父はボヤッとしててね」。いかにも納得、という顔をしたきたろうさんが「女将さんが、しっかりしてたんだと思うな」とつぶやいた。

続いて登場したのは、ピリ辛きゅうりこと“ピリキュ”。箸休めにぴったりで、店のウリにもなっているという一品だが、登場したのはたっぷりのニンジンの千切り。きゅうりはその下に隠れていて、ごま油のいい香りをさせている。しかも細かく切らずに、ゴロンと大ぶりに切られていて、ニンジンと一緒にパリパリ食べると、その歯ごたえの良さも相まって口の中がすっきり。もちろん焼酎ハイボールとの相性も抜群!

西新宿で43年も店を続けてきた女将。先代が亡くなった時に、店をたたむことを考えなかったかを訊くと、お客さんのことを考えると露ほども考えなかったという。「それよりバブルの時の地上げにあいましたよ。耐えたっていうか、乗り切りました。でも怖くはない。コツコツコツコツ一生懸命、仕事一筋に頑張ってたから、神様が見てくださっていたんだなって思いますね」と語る。

最後のメニューは二代目自慢の“角煮”。これがまた立派なボリュームなのだが、柔らかいうえに、意外とこってりしていない。「肉と一緒におからで2時間くらい煮込むんですよ。おからが肉の余分な脂分を吸うんですよね。だから脂っぽくない。これも親父が教えてくれたことなんですけどね」と二代目。一つ一つの料理を丁寧に、手間暇かけてつくる。その手間の全ては、女将の言う“お客様がリラックスして、美味しく食べて飲んで、お話もできる”酒場を続けるため。女将の気持ちを受け継ぐ二代目の言葉が、これまたふるっている。「世の中には、ブルーカラーの方とホワイトカラーの方がいらっしゃるじゃないですか。そういう方たちが同じ場所に集う。そうすると青と白が混じって、水色になる。だから水商売なんです。全ての人が分け隔てなく集まれる場所なんです」。言い得て妙。だからこそ、この店は常連さんの心をつかんで離さないのだ。

品川亭の流儀
その壱

時間と手間をかけた田舎風の味付けが体に沁みる煮物。里芋、ニンジン、こんにゃく、筍、がんもが入る。煮物800円(税別)
その弐

肉の強い旨味を、ワサビをつけることですっきりと。つくね2本500円(税別)
その参

ごま油の香りがする大きなきゅうりの上に、どっさりと乗ったニンジンの千切り。パリポリ歯ごたえで、箸休めにぴったり。ピリキュ(ピリ辛きゅうり)500円(税別)
その四

バブルの時代、古くからの町並みが残る西新宿を襲った地上げの波。しかし、それを跳ね返し自分の商売を守り続けたことで、今があるという。
その伍

ボリュームたっぷり。おからと一緒に煮込むことで、肉の脂を落とし、食べやすくなっている。角煮900円(税別)
きたろうさんから、品川亭へ贈る「愛の叫び」時間(とき)が止まるここちよさ ここにあり———きたろう
「品川亭」
住所
電話
営業時間
定休日
東京都新宿区西新宿4−13−13
03-3378-1178
17:30〜23:30
日曜、祝日
  • ※ 掲載情報は番組放送時の内容となります。

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