生鮮野菜に精肉店、婦人服の商店が軒を連ねる住吉銀座商店街。そのなかで青い看板がひときわ目立つ大衆酒場「ひげの平山」が、今回のお店。入り口から賑わう様子を覗いたきたろうさんは「お〜、いい感じで(お客さんが)入ってますよ」と、早くも名店センサーが反応している様子。店内に入り、タレの焼けるいい匂いに誘われるように「酎ハイ2つ!」とオーダーすると、二代目主人・平山大二郎さんから「元祖レモン酎ハイがあるんですけど、いかがですか?」とお誘いをうける。登場したレモン酎ハイは、レモンを絞った生ジュースが炭酸にはじかれて、爽やかな香りが広がる一杯。西島さんが「すっきりしてすごく飲み口がいいですね」と言うと、「45年前に、親父が飲みながら遊びで作ったお酒がレモン酎ハイなんです。それがお客さんの間で人気になっちゃて」と二代目。「今も本物のレモン使ってるの? 高くついちゃうんじゃない?」とイジワルな質問をするきたろうさんに、二代目は力強く笑って「大丈夫です!」と答える。1杯370円、「元祖」という伝説の味は、今も昔も庶民価格のままだ。
まず最初の一品としてオススメしてもらったのは煮物。こんにゃく、シメジ、昆布に大根など、どれも優しい味が染み込んでいるおふくろの味。「手作りの味ですね。煮物から始められるのが嬉しいです。これを作ったのは?」と西島さんが問うと、「私でぇす!」と陽気に手を挙げて、はにかむ女将の正枝さんの姿に、常連さんの間に自然と笑いが起こる。
お酒が入ったきたろうさんが「ひげの平山って、二代目はひげ生えてないじゃない」と聞くと、「店の由来は親父から……」と先代のご主人・忠成さんが登場し、詳細を話してくれた。「私の父親がね、カイゼル髭っていうのを生やしていたのと、自分に焼鳥のタレの事を教えてくれた三平師匠ってのが、すごい髭を生やしていたので屋号にしたんです。自分の顔には似合わないんですけど、それから自分でも生やし始めまして」と、白く染めた髭を撫でる。元々は炭屋を家業としていたが、時代の流れを感じ、焼き鳥屋を焼き始めた先代。しかし、焼き鳥屋の命であるタレを作るには時間がかかる。そんなとき、ひげの三平さんから貴重なタレを分けてもらい、その味を今も引き継いでいるのだという。その歴史を聞いて是非味わってみたいと、焼いてもらったのはシロ、レバーとハツ。焼きたての香ばしい串をハフハフと口にしたきたろうさんは、「うまい!」と唸り、西島さんは「これはちょっとやそっとで作れる味じゃないですね」と大絶賛。これぞまさに歴史の味。
特製の味噌をつけて食べる、新鮮さが命のガツ刺し(豚の胃袋/350円)など、この店はモツ料理のうまさでも知られ、なかでも必食のメニューが大衆酒場の定番、モツの煮込み。生産場から直送される素材を、じっくり時間をかけて煮込んだモツは、お箸で持った感じからして、ホワッホワッに柔らかい。口の中でとろけるようなモツの柔らかさと、濃厚な旨味に「もうあとちょっと煮込んだらとろけちゃうような感じだね。年寄りにはちょうどいいよ、この柔らかさ」ときたろうさんも大満足。
47年前に開店したこの店は、現在、二代目の大二郎さんと兄の浅一郎さんが調理場を仕切り、兄弟の母である正枝さんが女将として接客を担当している。「なんで兄弟で店を継ごうと思ったの?」と訊くきたろうさんに「42の時に、親父が大病しましてね」と二代目。しかしその二代目も3年前に大病を患って生死をさまよい、いつも陽気な女将が心配して「7キロぐらい痩せました」という。「みんなで(店を)やれる事がどんなに幸せかってことだよね。でもね、よくわかった。この店は女将さんが支えてるいんだよ」ときたろうさんが言うと、先代は「母ちゃんは良い女房です」と感謝する。これには常連さんも同意の拍手の渦。笑ってかぶりを振りつつ、涙をこらえる女将の姿に、思わずもう一杯飲みたいと思ったら、酸っぱいレモン酎ハイを……。
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お酒好きな先代が、遊び心で自分が飲むために作ったところ、大評判となった「生レモンハイボール」370円(税別)。
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日替わりで入る素材が異なる煮物は、女将のお手製。きたろうさんが「味付けが見事」と褒める逸品だ。400円(税別)
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先代が40数年、師匠の三平さんが30数年と合計すれば70年以上の歴史を持つ秘伝のタレ。きたろうさんと西島さんが食べたシロ、レバー、ハツは各105円(税別)。
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西島さんが箸でも持ち上げたときの柔らかさに感激した「モツ煮込み」390円(税別)。
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住所
電話
営業時間
定休日 -
東京都江東区住吉1−9−5
03−5624−0897
17:00〜24:00
日曜
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