七福神のなかで、唯一日本由来の神様にして、福の神、商売繁盛の神として信仰を集めるえびす神。ふくよかな体と満面の笑みで知られるが、今回訪れる大衆酒場は、葛飾区四つ木にある「えびす」というお店。はたして、どんなえびす様が、この店におられるのか……。紺地に大きく大衆酒場と染め抜かれた立派な暖簾をくぐると、待っていたのは特別ゲスト、番組のエンディング曲「愛」を歌う夏川りみさん。「皆でワイワイ飲むのが大好きで、量はそうでもないんですけど、長いんですよね。帰った後でなにか楽しい事があるんじゃないかと思うと、帰れないんですよ」と、夏川さん。相当イケる口のようだ。
いつものように西島さんがオススメを聞くと、二代目のご主人が「お客さんが食べたいのがオススメだから」とニコニコ。たしかに、ところ狭しと貼られたメニューの短冊の数をみれば、どんな料理が食べたくなっても応えてくれそうだ。あまりの数に悩んでいると「くさや食べます?」とご主人。「くさやは……食べ慣れないな」と、言い淀むきたろうさん。「前に住んでたマンションの隣の親父がくさやを焼くんですよ。食べるとうまいのは分かってるんだけど」と言うと「そういう人が多くてね、うちなら焼いてくれるからって、喜ばれてるんですよ」とご主人。くさや未体験の西島さんのために焼いてもらったが、その深みのある旨味とは裏腹に、強烈な匂いとのギャップにやられてしまい「ははは、震えて来ちゃった」と西島さんは降参。彼女の酒場修業の道のりは険しい……。
さて、二代目主人、健一さんの優しげな笑顔を見れば「えびす」の店名も納得だが、実は先代主人・幸雄さんがまた実にいいえびす顔だったらしい。初代から3代目・貴久さんが揃った写真を見ると、これまた見事にえびす顔の親、子、孫が並んでいる。さらに二代目主人に嫁いで30数年、店を切り盛りするふさ子さんの笑顔も素敵で、「実はお母さんが一番のえびす顔だね」と、きたろうさんが言うと、「ちょうどいい所に嫁ぎました」と笑う。
そこに注文していない料理が出てきた。これは10年来の常連さんが「俺が食べさせたいの!」と選んでくれた料理、納豆オムレツ。「俺に言わせれば納豆料理は難しいんだよ。意外と納豆って鮮度が大事で……」と講釈するきたろうさんが、納豆に半熟の卵を絡めるようにして頬張ると、「味付けがよろしい!」と表情一転の大満足。さらに「この店はこれが一番なんだよ、間違いないから!」と、他の常連さんがすすめる料理、肉豆腐も登場。タマネギに豆腐、お肉にダシがシュンシュンと染み込んだ肉豆腐から、立ち上る湯気と甘い香りがたまらない。「おいしい。ご飯に乗せて食べたくなる」という夏川さんに「あ、それいいかも。これはホッと落ち着きますよ」と西島さんもご満悦。そして最後にご主人が出してくれたのが穴子の柳川。「これは一押しメニューですか?」と聞く西島さんに「うん、まぁ、(うちの料理は)なんでも美味しいですけど……」と笑うご主人。穴子から出る極上のダシで、ゴボウ、卵がグツグツと煮立ち、実においしそう。その“あっつい”ところをいただいた、きたろうさんは「うまい! すごい! びっくりしちゃうよね」と、さらに顔をほころばせる。
「先代からは色々教わったんですか?」と西島さんがご主人に聞くと、「いやいや、何にも。先代から言われたのは、“口に入る物だからちゃんとした物を出さなければいけない”と、それだけ。それ以外は門前の小僧でね、三代目にも、私は何も教えてません。私、60の頃に倒れたんですけど、教えなくてもやってくれましたから。よく見ててくれたんだなって」。えびすでは父の背中を見て学び、味を受け継いでいく。さらに「ずっと一緒に働いてる奥様には、どんな思いを持ってますか?」と、西島さんが聞くと、「愛してるって言わなきゃいけない?」と照れるご主人。すると奥さんは「言葉で言わなくてもね、毎日ずっと一緒ですもん。うふふふ」。男の背中というのは、案外雄弁なものらしい。
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タンやハツの焼き物から、刺身に煮付け、フライ、天ぷらと300、400円台のおつまみの短冊が、所狭しと貼りつけてある。
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アジやトビウオなどを、くさや液に漬け込み、天日干しした伊豆諸島の名物。510円(税込)
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納豆オムレツ(480円・税込)は、常連さんだからこそ知る裏メニュー。
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うなぎやどじょうとくらべ、あっさりしているが、よりおいしいダシが出る穴子を使った、お腹に染みる一品。
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住所
電話
営業時間
定休日 -
東京都葛飾区四つ木1−28−8
03-3694-8024
16:00〜23:00
火曜・不定休
- ※ 掲載情報は番組放送時の内容となります。