東京都新宿区の高田馬場で、開店して4年ながら、毎夜客で溢れかえる人気店「浦野屋 やきとん てるてる」。早い時間の来店にもかかわらず「なんでこんなに人が多いの? 大にぎわいだね」と、きたろうさんもびっくり。ご主人の浦野康輝さんと、接客を担当する智子さんが、夫婦で切り盛りするこの酒場。早速、焼酎ハイボールで乾杯し、看板メニューのやきとんをいただくことに。
まず出てきたのはシロコロとつくね。シロコロを頬張ったきたろうさんと西島さんは「大きさがものすごくいい。食べやすい」、「味噌だれが合いますね。この味噌だれの後に酎ハイを飲んでくださいよ!これ最高です」と、ひとくち目から大絶賛。「つくねもまた美味しそうですよ。結構ボリュームあります!」と、串にかぶりつく西島さん。「なんこつも入って美味しい!自家製なのがよくわかります」と、これまた高評価。4年目の店とは思えぬ味に、きたろうさんが「以前は何をしてたの?」と訊くと「運転代行とか、介護タクシーをやっていました。その前は建築関係の職人で。なんか仕事が合わなかったんですね。“一生これをやっていくのかな?”と、実感がなくて……」。高校卒業後、やりがいを見つけられないまま転職を繰り返していたご主人。38歳の時、そんな生活を見直し、自分の好きなことを仕事にしようと決意。そこには、当時付き合い始めていた智子さんの一言があった。「パワーはあるのに、自分のエネルギーの矛先をどこに向けていいか分からない。そんな感じでした。ちょっとでも前向きになれる仕事なら、私も応援したいと思って、“やってみたら”って」。そんな得難い出会いと、後押しに支えられ、都内のもつ焼き店で修行し、1年後に開業。修行時代に覚えた「焼きアボカド(1皿2個入り200円・税込)」や「焼きカマンベールチーズ(1本250円・税込)」は、今や店の大人気メニューだ。特に焼きアボガドは女性に大人気で、西島さんも「これは間違いないですよ!噛んでじわっと広がる感じは確かにアボカド」と、その食感にハマった様子。
焼き物が続いた後、“口をさっぱりさせてください”と、ご主人が出してくれたのが「なんこつオニオン」。豚のなんこつのポリポリとした食感はそのままに、ポン酢とゴマの風味で仕上げた一品は、ついつい箸が進む味。しかし、やきとんだけで終わらないのが、この店の魅力。次に登場したのは「イイダコのアヒージョ」。おしゃれなスペインの小皿料理に喜んだのは西島さん。「このお皿もかわいいし。タコを丸ごと……、熱い!でも美味しい。タコがプリプリ!」と満面の笑み。“なんか生意気な……”と言っていたきたろうさんも「ニンニクの味がひときわ!これは出るんじゃないの?」と目を輝かせる。
最後の一品もオシャレ路線の「カキとマッシュルームのグラタン」。グツグツのアツアツが登場して、テンションも最高潮の2人。「結構大きいカキが入ってますよ。アツアツだから気をつけてください」「オォ、これカキだ」「ワーォ!素晴らしい。ダシが出てるぅ。チーズがまた美味しいですね。女性客がホイホイ来ちゃいますよ」と大騒ぎ。そんなオシャレな料理も楽しめる酒場だが、常連さんたちは一様に、この店の居心地の良さを褒める。中年の客は「僕らが酒を覚えた頃の雰囲気なんですよ」と言い、若い客は「憧れもあるのか、昭和の雰囲気が落ち着きます」と言う。焼き場を任される店員の新海智さんは言う。「(主人は)すごく不器用なんですよ。気持ちを全く伝えられないんだけど(笑)、情熱があって心温かい人です。そんな主人を、奥さんがうまく支えてる。よく、店で喧嘩してますけどね(笑)」。そんな軽口に「彼は楽しそうに仕事をやってる。それが嬉しいです」と、スタッフが楽しく働けることを大切にするご主人。人生という迷路で道を失いかけたご主人だからこそ、大切にしていることがこの店には生きている。そんな男の作った店に、人が吸い寄せられるのは当然かもしれない。