今回の酒場「やきとり小太郎」は、番組初となる東京・八王子市にある。JR八王子駅の南口、店に入ると8名のスタッフとご主人の蓑輪雅治さんが小気味良く働いている。恒例の乾杯を誘うと、店いっぱいのお客さんが杯を掲げてくれる気持ちの良さで、店が地元に愛されていることがよく分かる。早速オススメの料理をお願いすると、「うちは煮込みが名物で、4種類の味があるんですよ。一番人気の味噌、あと塩、カレー、辛口。その中から3つ選んで食べてみるのも面白いですよ」と、ご主人に食べ比べセットをすすめられる。2人は塩とカレーと味噌を選び、小盛りの煮込みを次々に頬張り始める。「味噌、落ち着きますね。モツ自体も柔らかいし」「味噌は定番だからね」。「わっ、塩も美味しいですね。これはたっぷり食べられる」。「カレーの煮込みってなんだよ。邪道っぽいね」「これは完璧なカレーです!」「でもモツを食べると、やっぱりモツだね」と、会話が弾む。これは楽しい。この煮込みを始めたきっかけを聞くと「焼き鳥屋に来ると、誰もが煮込みを食べるんですよ。でもどの店も煮込みに力を入れてないから存在感が薄い。それで煮込みを前面に出してみたんです」。平成元年にわずか5坪の店から始め、店舗を変えながら、この繁盛店へと成長した理由は、このご主人の個性とアイデアにもあるようだ。
次に登場したのは、店の名前がついた「生小太郎焼き」。これは生から焼き上げるオリジナルのつくね。ご主人がすすめる「温玉」も合わせて注文し、崩した黄身にタレを掛け、それをつけながら生小太郎焼きをいただく。「外カリカリの中ふわふわ。このコリコリは軟骨ですかね。わぁ、コレ美味しいですね」と西島さん。きたろうさんが「タレが結構辛めだね」というと、「そうです、大人のつくねだから」とご主人。焼き物の味にも相当のこだわりがあるようだ。
「俺ね、サラリーマンは一回もやったことがないんですよ。親戚が焼き鳥屋をやってたんで誘われて、そこがちょっと大きくなると、いろんなことをやるようになって。俺は天ぷら屋とかうなぎ屋とか、“なになに”屋が好きだから、なんか違うなぁって文句を言ってたら“お前、自分でやれ”って言われて」と笑うご主人。独立以来29年、焼き鳥屋になりたいという気持ち、そして「こだわりが俺の命。誰にも負けるのは嫌だし、無理だよと言われれば余計にやる」という気概を持ち続けている。
「次はね、面白いハツ料理を出してるんですよ。人気があるのは、タンドリーチキン味と、アラビアータ味」と聞き、「普通のハツ出せよ!」と笑うきたろうさん。「普通のハツは簡単だよ。工夫したところに良さがある。半分づつで一人前にできるから食べてみて」と、またも食べ比べ。「タンドリーは、ハツの臭みが無くて美味しい。アラビアータは、タンドリーよりもウェットな感じで柔らかみが残ってる感じ」と、西島さん。焼き鳥がメインだが、しっかり女性の好みも押さえているところが、また憎い。
最後の〆はご飯もの。「うちのメイン料理、煮込みと焼き鳥が入った小太郎丼です」というご主人の説明を聞き、気になるのは4種の煮込みのどれを使うのか……? 「これはね、味噌じゃないとご飯に合わない」と、ココにもこだわり。たっぷりのネギと一緒に、よくかき混ぜて食べると、少し味噌の甘さがあり、柔らかいモツとご飯の相性が素晴らしい。「良かったよ、美味しそうに食べてる」と微笑むご主人に夢を訊くと「ズバッと言えば、いっぱい儲けて、働いてるみんなで分けたい。あと、もうひとつくらい店を出したいかなぁ」。働くみんなの生活を思い、一見さんも常連さんも分け隔てなく、気持ちよく食べて飲んでもらうことを忘れない。そして、ご主人の強い負けん気と美味しい発想力で、店はこれからも繁盛間違いなしだ。