若者に人気の街・中目黒の少し奥まったところにある酒場「なかめくん」。外から中がよく見える店の造りに「オシャレだね、なかなかいいじゃん」と言いながら、腰を下ろすきたろうさんと西島さん。早速、焼酎ハイボールをお願いすると「当店、生レモンサワーになりますが、いいでしょうか?」と、ご主人の菊池文孝さん。実は中目黒はレモンサワーの発祥地で、この一杯にこだわる店も多い。もちろんOKして「今宵に乾杯」。そして最初の一品をいただくことに。
「おでん盛りです」と出て来たのは、大根を中心に、たまご、ちくわ、さつま揚げ、ごぼう天の5品。「相当ホロホロだね。うわぁ、うまい! 出汁がちょうどいいよ」と、大根を褒めるきたろうさん。「贅沢なほど出汁が出てるよ」と言われ、「鰹と昆布で出汁を取って、お酒と塩を加えています。一応創業から出汁を継ぎ足し、継ぎ足して……いたのを僕が二回ダメにしましたけど。オーナーには、これ内緒なんですけど」とご主人。これには一行も大笑い!
続いては自家製で燻製した「燻製銘豚グリル」。豚肉を頬張った西島さんの表情が一変、「美味しい! 甘いのかな? ちょっとスイーツとか、ドーナツとか食べてるくらいの甘さを感じますよ」。ご主人によれば、桜チップでいぶすと素材から甘さが引き出されるのだという。若者向けの酒場と一括りにするには勿体無い、「期待以上だね」と、きたろうさんもご満悦。
前のオーナーから店を譲ってもらって5年、勤め自体は10年になるというご主人。「サラリーマンをやっていた時からお手伝いをさせてもらって。お客さんがハッピーになって帰っていくのを見るのがいいなと思っていました」。さらにご主人には変わった経歴がある。「ラップというジャンルで音楽をやってました。17歳から始めて10年やったんです。あんまり成功しなかったですね。僕の才能ではなかなか難しかったです」。Tempotenzというバンドでプロを目指していたご主人。その後も音楽は趣味で続け『なかめくん』という自主制作CDもある。一曲聴かせてもらうと「ラララ ナカメクン、ラララ ナカメクン、ラララ♪」と、なかなか気持ち良い。
次のオススメは「特製手羽揚げ」。「うちのは10時間煮込んで、柔らかめになっています」とご主人。「あ、柔らかいよ。お箸でスパッと切れた」、「うん、すごい。こんなに骨から身離れのいい手羽先は初めて。軟骨柔らかい!」と二人。「ご飯を食べに行って、美味しかったら、そこの店の人に“これ(店で)出していいですか”って許可をいただくんです。勝手にやっちゃいかんだろうと。これも美味しい手羽揚げ屋さんがあって、訊いたら“コレ、10時間煮るんで、無理ですよ”って言われたんですけど、ウチはおでんをやっているので、その中に入れておけば煮込めるかなと思って」と始めたという。そんなご主人の性格を「真面目なんだよ、仕事ぶりが。サボるということをしないね」と、きたろうさんが褒める。
最後に“これだけは食べて帰れ”のメニューをお願いすると、寒い季節にぴったりの餃子鍋が登場。〆にはちょうどいい小ぶりの鍋に餃子とお野菜。それを自家製のチーズディップとポン酢のソースでいただく。「女性に人気がありますね。鳥のミンチとシソ、ネギ、生姜でさっぱりした餃子なので」とご主人。このメニューの誕生にも変わったエピソードがある。「店にテレビの取材の電話があって“餃子鍋ってやっていますか?”って聞かれて、“やってます”って答えてから考えました」。これにはきたろうさんも「しっかりしてるわ……」と、びっくり。しかし酒場激戦区の中目黒で、それぐらいのバイタリティがなければ、やっていけない。そして同時に誠心誠意、お客さんを満足させるサービスも。「毎日違うお客さんが来られますので、ライブとは言わないですけど、みんなに楽しんでいただきたいと思っています」とご主人。ステージからカウンターに立ち位置は変われど、そのライブ感は今も同じなのかもしれない。