BS-TBS「〜癒・笑・涙・夢〜夕焼け酒場」 毎週土曜よる6:00〜6:30 BS-TBS 2014/9/20放送 #20 はなふさ

あえて築地で勝負を挑み一級の素材と向き合い続ける、料理人が得た信頼と味。
小僧扱いを受けても決してくじけなかった、築地での勝負

一日の魚介取引量約1800トン、取引総額15億円という、世界最大規模の市場「築地市場」。東京の台所を担う市場から5分程歩いたところに、最高の魚の目利きたちが通う酒場「はなふさ」がある。名前のない藍染め暖簾をくぐると、魚を煮炊きするいい匂いが漂うカウンター席。早速“ピンッ”と来たきたろうさんは「お寿司屋さんみたいじゃない。これはお魚がおいしそうな店だね。それも相当に!」と、乾杯する前からベタ褒め。その直感は食べて飲むうちに、実感することになった。

最初の一皿はお通しの「豆あじあぶり」。夏から秋にかけて、ほんの一時期にしか獲れない豆あじ。それも小田原産の一級品は身がホコホコに柔らかく、一杯目の焼酎ハイボールにぴったり。頃合い絶妙の焼き加減で、頭からバリッとかじると、香ばしさが口に広がる。これに気を良くしたきたろうさんは「刺身のおいしいところを!」とオーダー。すると、ご主人の小野寺利之さんは「旬の新子、コハダで口をさっぱりとしてください」と受ける。江戸の料理人にとって、“コハダに始まりコハダに終わる”というほどコハダはこだわりの食材。新鮮なコハダを仕入れているか? 繊細な身を活かす包丁の腕は? 魚の目利きのプロが集まる築地で、相当な自信が無ければ出せないが、常連さんは「お寿司屋さんもたくさんありますけど、本当の魚を食べたいならココだって言うぐらい」と全幅の信頼を寄せる。旬のコハダのおいしさに感激した2人は、、続けてカツオ、サンマ、カワハギなど「刺身盛り合わせ」をいただく。「最近は刺身より肉の方がうまいと思ってたんだよ。でも、ココの刺身を食うと“やっぱり刺身”って思うな」と、きたろうさん。すっかりはなふさの魚料理にハマったようだ。

高校卒業して料理の世界に飛び込んだご主人。寿司屋をはじめ様々な日本料理屋で腕を磨き、31歳で地元・築地で勝負がしたいと「はなふさ」をオープンした。しかしそれは苦難の連続だった。「最初は“こんなもん食えるか”と言われたりねぇ。河岸に仕入れにいくと、ウチみたいに小さい店だと量り売りじゃないですか。魚を選ぼうとしてると“小僧、お前帰れ”とか言われて。蹴飛ばされたこともありますよ」。それから10年。「河岸の人が仲間を連れてきて、ココはなんでもおいしいからって言われてねぇ」それが、築地で認められた瞬間だったという。

素材と味のバランスを突き詰めてきた数十年

ここできたろうさんが「アジフライとか頼んじゃってもいい? 怒らない?」と、変化球のオーダー。するとご主人が「もちろん。うちのアジフライは切り身で出すんですよ」と、気持ちよく応える。つまみとしての切り身のアジフライは、ホクホクの歯応えにアジ本来の上品な旨味が際立つ。ここで上品すぎるとソースをかけるのは、ちょっと待ってほしい。「少し物足りないと思うのがいいの」とは常連さんのご忠告。その言葉に、魚を愛する常連さんの心を感じたきたろうさんは「いい言葉だなぁ。響いたよ」と関心しきり。

次にいただいたのは高級魚、キンキの煮付け。赤い皮と飴色に煮付けられた身。その色の美しいコントラストと、箸を入れるとスッと身の中に沈んでいく柔らかさを見れば、そのうまさは保証済み。「味っていうのはみんなバランスです。だから、料理本のとおりにやってもうまくいかない。その時の素材から何からその都度違います。ガス台が変わっただけで違います。だから店をこのまま違う場所でやろうとしてもうまくいかない。そういうもんですよ」というご主人。最後にいただいた一品は、そんなご主人が素材や味を突き詰めて作り上げた至極の一品「さんまのつみれ汁」だ。じんわり体に染み入る味に、「味の作り方の原点が分かるね」と、つぶやくきたろうさん。「ひとつのものをメニューに出したら10年経たないと味は完成しないんです。だからコロコロメニューを変えるのは良くない。簡単なものでもそうですよ」一皿の料理に10年かける、素材に対して真摯に向き合うご主人だからこそ、築地のプロたちに今もこれからも愛され続けるのだ。

はなふさの流儀
その壱

新鮮さと包丁の技が試される素材を、絶妙の加減の酢でシメた新子酢〆(740円・税込)。築地で包丁をふるうご主人の自信がみなぎる一皿だ。
その弐

季節により内容は異なるが、この日はカツオ、サンマ、カワハギ、白イカ、タコなど。まずはこれをいただかないとはじまらない! 刺身盛り合わせ(1,300円〜・税込)
その参

一般的には開いたアジをそのままあげるアジフライだが、こちらでは酒のつまみとして最適な料理法として切り身をフライに。あじフライ(840円・税込)
その四

きたろうさんが「酒場で食えないよこれは、割烹だろここは」と絶賛した、北海きんきの煮つけ(3,000円〜・税込)。ご主人が魚の選び方、ダシの取り方、味のバランスや火加減、そのすべてを極め完成させた一品。
その伍

いつもはイワシを使うが、この時期のイワシは脂がのりすぎて味が決まらないためサンマで作るつみれ汁。さんまのつみれ汁(480円・税込)
その六

獲れる時期、さらに年によって微妙に変わる魚の味に対して、経験からもっともおいしい味のバランスをとるためには、これだけの時間がかかるという。
きたろうさんから、はなふさへ贈る「愛の叫び」 虎穴に入って虎児を得た はなふさ  ———きたろう
「はなふさ」
住所
電話
営業時間
定休日
東京都中央区築地7−14−7
03-3546-1273
17:00〜23:00
土曜・日曜・祝日
  • ※ 掲載情報は番組放送時の内容となります。

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