BS-TBS「〜癒・笑・涙・夢〜夕焼け酒場」 毎週土曜よる6:00〜6:30 BS-TBS 2018/11/24放送 #212 一徳

ヤンチャの時代を終えて 40歳で自分の城を構えた男が 炭火で焼き上げる絶品串焼き
世間様に後ろ指を指されないように働く

東京杉並区の高円寺にある酒場「一徳」を切り盛りするのは、木下卓也さん。57歳にして溢れ出る男の色気と、渋い声。「これからお客さん、いっぱい入るよね?」と訊くきたろうさんに「どうかねぇ、今日は暇じゃないですか」と嫌味なくうそぶく感じ。つまり、大将は“いい男”。いつものように焼酎ハイボールで乾杯を交わし、最初のオススメをお願いすると「じゃあ、塩もつを。日替わりで、牛すじや牛もつ煮込み、味噌もつ煮込みだとか、色々作るんです。結構手間をかけてますよ。自分で言うのもなんですが……」という。具だくさんで、味のアクセントにピリッと唐辛子が効いている。出汁にもこだわりがあり、そのレシピは秘密だという。

大将と話しながら、思わず「格好いいよなぁ」「声が良い声なんだよな〜」と心の声が漏れ出すきたろうさんと西島さん。大将の出身は大阪の天王寺。若くして上京し、音楽活動を開始。大将曰く「ヤンチャばっかり」の日々をおくり「食いっぱぐれないように、飲み屋系ばっかりバイトして“門前の小僧習わぬ経を読む”って感じ」で料理を覚えた。店を構えたのも40歳になってから。「このままじゃいかんと思って、世間様に後ろ指を指されないように、足を地につけて働こうと思って作ったのがこの一徳です」。その名前の由来を訊くと「俺には師匠がいるんです。船戸与一という作家なんですけど、この人の小説の中の主人公の名前をいただいたんです」。直木賞作家にして、日本のミステリーを牽引してきた船戸氏とは、ヤンチャをしていた頃に出会い、この店の常連でもあった。さらに船戸氏との縁から、スキャンダラスな映画で国内にとどまらず、海外でも評価の高い若松孝二監督も常連で「ベルリンで賞をもらった後に、成田から電話をかけてきて“今から行くから”って。普通、もうちょっといい店に行くんじゃねぇかと思ったんだけど(笑)」というエピソードも。そんな2人がよく食べていたという、もつ焼きをいただくことに。歯ごたえとコク、そして旨みが人気のカシラに、カリッとした表面の焼き加減と、中はしっとり感を残したタレ焼きのレバー。そして旨味たっぷりのカシラの塩焼きに、脂の乗ったシロ(各1本100円・税別)。「うーん、ちょうどいい焼き加減」と満足していると、「こんなの俺が焼くんじゃなくて、炭が勝手に焼いてくれるから」と、いい笑顔で笑う大将。こりゃ、男でも惚れる。

一生懸命やるタイプじゃないけど真面目にはやる

「ウチ出禁が多いんですよ。健気で真面目なお客さんばっかりだから、そういう人に迷惑をかけるふざけた奴には“こいつはいらねぇ”って、丁重にお断りしますね。」と言いつつ、伝票をつける大将。カウンターに伝票、そして風に飛ばされないように置き石。そしてカウンターの端には多種多様な置き石の山! 大笑いする西島さんに「これね、お客さんが拾ってきてくれんの。伝票一枚押さえとくのに、こんなでかい石を持ってくんなよ、って言うんですけど」と大将。これだけで、この店の大将と客の関係性が分かるというもの。

続いての料理は「サンマの串焼き」。サンマの片身を串に刺し、焼き鳥の炭で焼き上げるのだが、旬の脂の乗ったサンマが食べやすいと評判。なによりアツアツを頬張る至福感。さらなる一皿は「水餃子」。大将手作りの水餃子は、ワンタン並みに平べったい作り。いろんな素材が入ったアンは少なめで、皮のつるっとした食感と、特製ラー油で食べさせる、まさに酒のアテとしての水餃子になっている。意外にも凝った料理に「結構真面目にやってんすよ、ふざけた顔をしてますが」という大将。最後の〆の一皿は「ナポリタン」。小皿にこんもりと、ちょうどいい量のナポリタンが盛ってあり、味は昔懐かしの喫茶店のそれ。でもケチャップ感と甘みを抑えているあたりは、飲み屋仕様だ。

ヤンチャな時代はおしまいにして「真面目に店をやっていますけど、一生懸命やるタイプじゃない。でも、真面目は真面目にやっています」と訴える大将だが、今では店の常連さんと今も「一徳バンド」を結成。ライブで披露した松田聖子の『赤いスイートピー』のカバーを聴くことに。心に沁み入るような大将のブルージーな声に、ヤンチャにもまた真面目に向き合っていたのだと思わせるに十分な説得力。やっぱり大将かっこいい。きたろうさんが「ジャン・レノに似てる。高円寺のジャン・レノ! イタリアの役者みたい」と持ち上げると、大将が「よく言うよ……」とボソリ。いや、それがカッコいいんだって!

「一徳」の流儀
その壱
まずは日替わりで楽しめる名物の煮込みを食すべし!
豚のシロもつ、豚のミミ、こんにゃく、大根、豆腐などの具材を特製の塩ダレで約6時間煮込む。煮込み(塩)330円(税別)
その弐
お客さんに迷惑をかける人 即! 出入り禁止!!
一徳を隠れ家のようにして、1人で飲みに来るお客さんが多いため、傍若無人に振る舞うお客さんには、丁重にお断りを入れるという。
その参
炭火で焼き上げるサンマの串焼きを食すべし!
串に刺したサンマの片身に塩を振り、焼き鳥の炭火で焼き上げる。食べやすいと、この店の名物に。サンマ串焼き150円(1本・税別)
その四
人気メニュー 自家製水餃子を食すべし!
牛の挽肉、白菜、ニンニク、ニラ、生姜、ネギを混ぜ合わせ、調味料を加え、沸騰したお湯で約6分茹でた水餃子。特製ラー油と一緒にいただく。水餃子350円(税別)
その伍
〆には必ず特製ナポリタンを食すべし!
パスタ、玉ねぎ、ピーマン、赤ウインナーに調味料を加え、特製のケチャップソースを絡める。一徳ナポリタン350円(税別)
きたろうさんから、一徳へ贈る「愛の叫び」 ヤンチャとまじめさが、男の格好良さを作る。高円寺にジャン・レノがいた!?―――きたろう
一徳
住所
電話
営業時間

定休日
東京都杉並区高円寺北2-11-1
03-3336-4059
月〜土曜 17:00〜23:00、
日曜 16:30〜22:30
火曜
  • ※ 掲載情報は番組放送時の内容となります。

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