酒場激戦区・赤坂で10年目
本格的マルゲリータから昭和レトロなナポリタンまで
イタリアン出身店主の居酒屋料理に舌鼓
サラリーマンの街で開業するのが夢だった
レトロな雰囲気の階段を地下へ降りると、昭和世代の心を癒す懐かしのアイテムがズラリ。港区赤坂で創業10年目を迎える『赤提灯酒場 伊ち太』は、洋食屋で修業したご主人・毛利匡志さんが腕を振るう人気の居酒屋だ。ギンガムチェックのテーブルクロスは洋食屋さんの風情。「このたたずまいで何が出てくるのか楽しみ」とワクワクしながら、さっそく焼酎ハイボールで常連さんと「今宵に乾杯!」。そこにはご主人のお父さんの姿も!
最初の一皿は「トマトとガリのサラダ」。珍しい組み合わせに驚きつつ、一口食べて「あぁ!これはつまみになるように考えてんだ」と感心しきりのきたろうさん。和洋ミックスの特製ドレッシングがマイルドに絡み「ガリとトマトってよく合うんですね」と西島さんも絶賛だ。しゃれた一品に、きたろうさんは「もう酒場の料理じゃないね!」。
ご主人は10代の頃、定時制高校に通いながら洋食レストランでアルバイトを始めた。当時から自分の店を持ちたいという目標があり、調理師専門学校で学んだ後、いくつかのイタリアンレストランで18年もの修業を重ね、40歳で念願の店をオープンした。そんな手腕が光る次の一皿は「マルゲリータピッツァ」。生地から手作りし、専用オーブンで焼き上げる自慢のピザに「おいしいー!本格的すぎる!この生地、びっくり。素晴らしい!」と西島さんの興奮が大爆発。
酒場激戦区の赤坂を選んだのは、とにかくサラリーマンの街で開業したかったから。立地条件は厳しいが、“真っ暗な路地裏の地下の店”なら逆にお客さんの印象に残るはずと、あえてここを選んだ。「5年間で6軒もの店が入れ替わったと聞いて不安もあったが、ここで続いたら本物だと思って」。とはいえ開業当初は客が来ず、たまらない気持ちになったという。いつも笑顔のご主人も「泣きながら笑ってましたね」。2年目からは徐々に常連も増え、お客さんに恵まれていると実感する日々に。
お客さんもスタッフもみんなが笑顔になれる店
下町ハムカツ
三品目の「イタリアンちゃんぷる」はゴーヤのかわりに色鮮やかなイタリア野菜が入った卵の黄色が映える一品。「さっぱりしているけどチャンプルらしさがちゃんと残っていてやさしい味」と西島さんも舌鼓を打つ。
店名の『伊ち太』は、イタリアへのこだわりと、ご主人の長男・太一君の名前から発想して名付けたという。開業の際には奥さんが「失敗しても私が食べさせてあげるから」と後押し。ご主人の父親・毛利尊三さんも「息子が酒場を開くと聞いたときは驚いたが、彼の計画力は大したものだった」と振り返る。「この店は彼らしい明るさが出ているのがいい」と言うと、同席の常連さんも「料理が旨くて、しかも安い」と誇らしげ。
「日々楽しい」と笑顔が絶えないご主人。店を続ける秘訣を聞くと「店に入った瞬間に笑顔でいらっしゃいませと言ってもらえると、いい店だなと思うでしょ。それをスタッフがやってくれている」と話す。バイトリーダーの佐藤絵梨香さんは「長く働いてきたけれど居心地がいい。店長も怒ったことがない」と楽しそう。「お客さんに居心地よく過ごしてもらうには、スタッフも楽しく働かないと」というのがご主人の信条なのだ!
次のおすすめは「下町ハムカツ」。ソースたっぷりのレトロな一皿に「懐かしい!」とはしゃぐ西島さん。「君なんか懐かしくないだろ!」ときたろうさんが突っ込むも、サクっと薄く揚げた昭和風のハムカツには誰もが懐かしさを感じずにはいられない! そして最後の一品もレトロな「昭和ナポリタン」。お箸で食べるナポリタンを口一杯に頬張りながら「ケチャップの感じがいいなー」と、きたろうさんもほっこり気分。飲んだ後にラーメン感覚で食べに来るお客さんが多いというのも納得の一品だ。
「酒場とは笑顔が溢れる場所」と言い切るご主人。旨い安い楽しい。三拍子揃ったこの店で今宵も笑顔の連鎖が広がってゆく。