大田区矢口で創業39年の老舗酒場
こだわりの焼き鳥と絶品料理で
120席の大箱を連日満席にする大将の腕!
亡き親方の味を引き継ぐ自慢の焼き鳥
本日の舞台は大田区矢口。多摩川河川敷で心地よい風に癒されたきたろうさんと西島さんは、東急多摩川線・矢口渡駅から今宵の酒場「鳥勢」へ。暖簾をくぐると、120席ある広い店内は、ほぼ満席の大賑わい。「これじゃ話が聞けないよ」ときたろうさんも戸惑うほどの盛況ぶりだ。忙しく立ち働くご主人の早坂紀生(のりお)さん(66歳)と女将のゆり子さん(67歳)に、まずは焼酎ハイボールを注文し、大勢のお客さんたちと「今宵に乾杯!」。店内に響き渡る「カンパーイ!」の大合唱に心が弾む。
最初のおすすめは「刺身盛り合わせ」。「鳥屋さんで最初に魚介のお刺身をいただけるとは!」と西島さんが言うと、「何でも屋ですから」と笑うご主人。この日は、天然もののマグロとかんぱちにタコ、サーモン。「新鮮でびっくり。おいしい! 脂ののりもすばらしい」とさっそく箸が止まらない。
今年で創業39年目を迎えた「鳥勢」。ご主人の紀生さんは、16歳で山形から上京し、大田区にある焼き鳥専門店「竹沢商店」で12年間修業した。紀男さんにとって“東京の父親”だった親方の星野さんからは、焼き鳥のすべてを叩き込まれ、独立するきっかけを作ってくれたのも親方だったそう。「3億円もの開業資金も親方が保証人になってくれた」と聞いて唖然とするきたろうさん、「俺なら絶対ならない!」と断言する。今でも月に一度は、亡くなった親方の墓前に足を運ぶというご主人の次のおすすめは、親方の味を引き継ぐ自慢の焼き鳥。独立の際に親方が持たせてくれた秘伝のタレを39年間大切に継ぎ足してきた。人気の部位は「シロ」、「タン」、「ハツ」。タレでいただく「シロ」は、一番の上物を使用しているそうで、「すごい肉汁ですね。おいしい!」と西島さんも絶賛。タンとハツは塩で食すと、「コリコリしていて、肉汁がギュッ!」。「ハツはバランスがちょうどいい。やわらかくて」と大満足のふたり。
仕事に妥協せず、腕をみがき続ける!
カレイ野菜あんかけ
現在の店舗は3軒目で、「最初の店は16席、2店舗目が36席程度で、今は120人くらい入る」という。「やり手だなぁ! なんでそんなお客が入るの?」と驚くきたろうさんに、「いくら安くてもダメな時はダメ。やっぱり味がよくないと。それに、焼き鳥はいくら焼いても勉強ですね。終わらない」と語るご主人は、開業以来、仕込み作業もすべて自分の手で行う。店の近くには焼き鳥の仕込み専用部屋があり、その日仕入れた70sもの新鮮な鶏肉を毎日3時間かけて一人で仕込んでいるのだ。「仕事に妥協しない感じが、佇まいや顔つきから伝わってきますよね」と西島さん。現在は長男の雄大さんが主に焼き場を担当しているが、「私から見れば、まだまだ」と息子を見る目は厳しい。
20年来の常連客は、「なんでも美味しいけど、やっぱり焼き鳥が一番! それにマスターの根性とママの気遣いが素晴らしい」とちょっとやそっとでは語りつくせない様子。多くの常連に愛される老舗酒場であることを実感するきたろうさんと西島さんだった。
次のおすすめは、ご主人の創作メニュー「豚ポン酢」。豚肉と野菜をごま油が効いたポン酢でさっぱりいただく。添えられたマヨネーズをつけて食べると、「豚の旨さが生きてるよね」ときたろうさんも感心しきり。続いて、女性客に大人気の「とまとチーズ焼き」が登場! トマト、玉ねぎ、ベーコンなどの具材にチーズをかけて焼き上げる。「チーズのまろやかさとトマトでさっぱり食べられる。いいおつまみ!」と西島さん。男性客や年配の方にも人気だというのも納得だ。
「主人は何にでも一生懸命な人」と言う女将のゆり子さんは、紀生さんと同じく山形出身で、1歳年上。出会いは50年前、ゆり子さんが大田区内の精肉店で働いていた時だそう。結婚後、紀生さんの独立を機に店を手伝い始め、以来39年、夫を支え続けている。「いなかったら、できなかったでしょうね」と女将に感謝するご主人に、「ありがとうございます」とうれしそうな女将。きたろうさんが「大将を愛してる?」と尋ねれば、恥ずかしがりながらも「愛してます」と明るく笑う。「大将も言わなきゃ!」とご主人に水を向けると、照れながら「はい」。すると、なぜか西島さん、「なんだか私が沁みちゃった」と涙ぐむ!?
最後の一皿はボリュームたっぷりの「カレイ野菜あんかけ」。カリっと素揚げしたカレイは骨まで食べられる。「でかいカレイだ!」と驚くきたろうさんは、一口食べて「旨い! この野菜あんなら、魚は何でも合うね」と大絶賛だ。
今後の夢は、「いつか女将と世界一周旅行をすること」と話すご主人の笑顔には優しさが溢れる。酒場とは、「お客さん同士のふれあいの場所」。いつでも賑やかで楽しい時間が流れる、間違いなく“いい店”に出会えた。