品川区大井町で創業24年の酒場
23年間のメニューを一新し
ハラミ一本勝負に出た男の物語
驚きの美味!「極上ハラミ刺し」に舌つづみ
JR大井町駅から、緑の木陰が心地よい線路沿いの小道を歩いて、きたろうさんと西島さんが訪れたのは、“極上ハラミ専門店”「ほんま」。入店するなり、ご主人の本間雅晴さん(63歳)が、「ようこそここへ、クッククック〜♪」と桜田淳子の「わたしの青い鳥」(1973年)を口ずさみながらふたりを歓迎。さっそくいつもの焼酎ハイボールで「今宵に乾杯」すると、今度は庄野真代の「モンテカルロで乾杯」(1978年)で茶々を入れてくるご主人に、「大変だよ、今日は」ときたろうさんは苦笑い!?
最初のおすすめは「極上ハラミ刺し」と聞いて驚くふたりだが、サシがたっぷり入った美しい刺身に思わず感嘆の声を漏らす。「臭みも全然なくておいしい〜。柔らかいし、脂が甘い。ビックリ!」と感激する西島さん。「本当に何も手を加えてないの?」と信じられない様子のきたろうさん。ハラミの柔らかさと旨味を味わえるよう、国産ハラミの霜降りが多い部位のみを使用するのだそう。「醤油に脂がふわっと溶けるのもいい」と幸福感にひたる西島さんに、「そう言う人が、多い街(大井町)なんですよ」とまたまたダジャレで応じるご主人なのだ。
「“嫁命、ハラミ命”で商売やってます」という新潟出身のご主人。中学を卒業後は仕出し割烹で7年間修業し、上京。さらに15年間の修業を積み、平成7年に「ほんま」を開業した。開業の際には、奥さんがご主人の夢を支えようと貯めていた開業資金を渡してくれたそうで、「そりゃ、冗談じゃなくて本当に“嫁命”だね」ときたろうさんも納得する。
次のおすすめは、数量限定の「極上ハラミ串」。こんがり炙った肉厚のハラミが、見るからに食欲をそそる一品。味付けは「塩とタレを使い分ける。あーしよ(塩)、こーしよ(塩)って」と、止まらないダジャレは無視しつつ、「おいしいー。これでもかっていうくらいの肉汁!」と西島さん。「旨い! ロースやカルビとはまた全く違うね」と感心するきたろうさんに、「馬勝った、牛負けた」と、さらにダジャレを浴びせるご主人。きたろうさんは「もう帰ろうか……(笑)」。
希少な部位を確実に仕入れるため、ハラミを一頭買いして自分で下処理をしているそうで、仕込みは開店の4時間前から始める。「刺身にできるような希少部分は、自分でちゃんと処理して、いいものを出したい。大したことない部分でも出せばお金にはなるが、それは嫌で」と、さすがのご主人も真剣な表情だ。
ハラミ専門店として真剣勝負する理由
ハラミ寿司
実は「ほんま」は、開業から23年間、刺身や焼き鳥など様々なメニューを揃えた酒場だった。以前から人気メニューだったハラミ一本で勝負していくことを決めたのは去年の7月。60歳を越えて体力的にも限界を感じ、一時は閉店や移転も考えたが、常連さんたちに引き留められ、力をもらったという。メニューをハラミに絞ったのは一人でも店を切り盛りできるようにという思いもあった。「勇気はいったけれど、進んでいかなきゃしょうがない。もう、勢いですよ」。
続いては、「極上ハラミカレー」。ほぐしたハラミをじっくり煮込み、9種類の食材を使った自家製カレーに加えて旨味を引き出す。パンにのせて食べた西島さん、「スパイスが効いて、おつまみにぴったり。相当こだわってますね」と、チューハイが進む〜。
口を開けばダジャレ連発のご主人に、「だんだん分かってきた。本当はすごく寡黙でまじめ。照れ屋さんなんだ」と見抜く西島さん。「でもウケないことに慣れすぎだよ! 芸人は毎回ショックなんだから」ときたろうさんからはプロのアドバイスも!?
ここで初めてハラミ以外の料理、「みそきゅう」が登場。和食料理店で修業を積んだご主人の見事な包丁さばきで、あっという間にきゅうりが松の飾り切りに。アートな一皿に無邪気にはしゃぐ西島さん。きたろうさんは「技を見せたいだけじゃん!」と言いながらも「勉強家なんだね、すごいね」。
10年来の常連さんらによると、「大将は女性の悩みを聞いて相談にのることも多い」そう。お客さん同士を引き合わせて、これまで16組が結婚したというから、驚くと同時にご主人の人望の厚さが感じられる。
最後の〆は、「極上ハラミ寿司」(炙り・生)! 西島さんは、「炙り」に塩をパラリと振って、大きな1貫を丸ごとぱくり。「最高! 脂の甘味が十分。10貫くらい食べたい」と大興奮。きたろうさんも「生」を食べて、「旨いねぇ、ハラミおそるべし」と唸る。
ご主人にとって、酒場とはズバリ「人生」だという。「ご主人の人生も、お客さんの人生も詰まってる」と西島さん。「お客さんに気持ちよく来てもらって、旨かったと帰ってもらうのが嬉しい」と言うご主人に、「カッコイイじゃん。でも、酒場は“お見合いの場“ぐらい言ってほしかったなぁ」と、ほろ酔い気分で笑うきたろうさんだった。