BS-TBS「〜癒・笑・涙・夢〜夕焼け酒場」 毎週土曜よる6:00〜6:30 BS-TBS 2014/10/25放送 #25 お腹袋

常磐津のお師匠さんと、夫を支える女将二人が構えた神楽坂の酒場に刻まれた味と人情の物語
カウンターの大皿料理を選び迷うのも楽しい酒場

結婚式の宴席での定番スピーチに、三つの袋というネタがあります。胃袋におふくろ、そして堪忍袋……というアレですが、今回訪れたのは、おふくろはおふくろでも「お腹袋」と書くお店。場所はかつて花街として栄えた神楽坂。その路地の一角に「お腹袋」はあります。店の前に立ったきたろうさん「俺、来た事があるかもしんない。酔っぱらってて覚えてないんだよ。あっ、やっぱり来た事がある」と、暖簾をくぐったわけであります。

一行を迎えてくれたのは女将の高橋和子さんと、厨房をまかされた二代目の一弘さん、そして酒場にしては見事な和服をピシッと着こなすご主人の芳夫さん。店の小上がりに通されたきたろうさんと西島さんは、焼酎ハイボールで乾杯。最初のおすすめを訊くと「大皿料理からお好きな物を」とのこと。「これ毎日違うの? これだけあれば十分だね」と、きたろうさんが言うほど、カウンターにはずらりと家庭料理が並ぶ。そのなかからイワシの煮付けと肉じゃがをいただくと、これがまたしゅんしゅんといい味がしみ込んでいる。煮崩れもなく、それでいて鮮やかな色を残したイワシ。そして中まで出汁がしみ込んだじゃがいも。家庭料理だが、実に丁寧な二代目の仕事ぶりに一同も思わずほっこり。

「元々はご主人が厨房で作られてたんですよね?」と西島さんが訊くと、「私は常磐津の師匠なもので、お客さんに新橋や赤坂とか料亭へ連れてっていただいてね。あと地方へ行くじゃないですか。1カ月も地方に行ってますと、食べた美味しい物を覚えたりして……」その経験を活かそうと考え、店を始めたという。常磐津節とは、歌舞伎とも縁の深い江戸時代に発祥した三味線を伴奏とする語り物音楽の一つで、ご主人は常磐津千代太夫の名前で今も現役で活躍中。女将さんはご主人の常磐津を「あんまり褒めた事がない」と言いつつも、「歌舞伎座で歌うと、声が3階までマイクなしで聞こえますからね」とも言い、「まぁ、劇場が良いんですけどね」と照れてみせる。実に分かりあったご夫婦なのだ。

あの噺家が店に残した名前と逸話

また「お腹袋」という名は、この店をこよなく愛した噺家が名付けたという。「歌舞伎役者の二代目尾上松緑さんのご紹介で、5代目の柳家小さん師匠が、うちの店にお見えになられたんです。それでお店を持つ時に、師匠が「お腹袋」という名前をつけてくださった。“何でお腹袋にしたの?”って、師匠に訊いたら“貴方のお腹をイメージしました”ってね(笑)」と女将。時にはきたろうさんたちが座る小上がりで一席、噺してくれた事もあったという。この逸話には「いやぁ、凄いとこに来ちゃったな」と、きたろうさんも恐縮。

次に出てきた料理は、山芋の塩焼き。「主人がどこからかで覚えてきた料理で、ほかにはないと思いますよ」と女将が出してくれた皿には、焼いた厚切りの山芋にゴマをふったもの。シンプルだけど、皮付きのまま焼かれた山芋のホクホク感と独特の歯応えがたまらない。続いて焼き松茸が出てきて、きたろうさんも西島さんもえびす顔に。松茸はもちろん国産で、その香りは輸入物とは比べ物にならない。きたろうさんは「焼き方もうまいな、息子!」と二代目の腕を褒め、西島さんは松茸を頬張る顔から笑いがこぼれ出す。そして最後にいただいたのが、名古屋の味噌煮込みうどん。これもまた、ご主人が名古屋の有名な劇場・御園座で1ヵ月の公演中に覚えた味を再現したもの。土鍋には刻んだ揚げとネギが浮かび、麺は稲庭うどんを使用している。飲んだ後の赤味噌のツユは、体に染み込んでいくようで実にうまい。

さて、うどんも入ってお腹も満足したところで、ご主人の常磐津を聴くことに。演目は「積恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)」。その声量、声の表現力に、思わず聴き入るきたろうさんと西島さん。これだけの常磐津を「褒めたことがないですよ」という女将と、自らの芸道を支えてくれることに「心では、いつもすみませんと感謝してます」というご主人。実は味噌煮込みうどん以上にお熱いお二人とは、これまたお後がよろしいようで……。

お腹袋の流儀
その壱

カウンターには、きんぴらや煮浸しなど家庭料理のスタンダードメニューが大皿に入って並んでいる。どれを選ぶか、迷う事間違いなし。いわしの煮付、肉じゃが(共に500円・税込)
その弐

ご主人によれば、北海道の料理屋さんでお呼ばれをいただいた時のメニューが元なのだとか。山芋の塩焼き(500円・税込)
その参

国産と輸入物の一番の差は「香り」。そんな国産松茸をいただくなら、やはりシンプルに焼きで。(6,000円・税込)※時価
その四

シンプルな具、しかも少し麺が細い稲庭うどんを使用するなど、アレンジを効かせた名古屋風味噌煮込みうどん。(1,000円・税込)
きたろうさんから、お腹袋へ贈る「愛の叫び」 芸人ならここへこい! お腹袋  ———きたろう
「お腹袋」
住所
電話
営業時間
定休日
東京都新宿区神楽坂1−11−2
03-3269-3638
16:00〜22:00
土曜・日曜・祝日
  • ※ 掲載情報は番組放送時の内容となります。

ページトップへ