声優を目指して上京した女将と
裏方に徹するご主人が営む酒場
熊本の絶品郷土料理に舌つづみ!
「馬刺し盛り」に「ひともじのくるくる」!?
東京メトロ丸ノ内線の中野新橋駅にやってきた、きたろうさんと西島さん。今宵の酒場は、東京都中野区で平成26年創業の「居酒屋 わかば亭」。ご主人の西本とものりさんと女将のわかばさん夫婦の笑顔に迎えられ、さっそく焼酎ハイボールで「今宵に乾杯!」。まずは、熊本出身の女将のイチオシ、「熊本の馬刺し」を。東京ではめったにお目に掛かれない希少部位のフタエゴ(あばら部分)と赤身の盛り合わせに、「馬刺し大好き! しかも熊本! 最高だね」と大喜びのきたろうさん。西島さんもフタエゴを食べて、「脂身が柔らかい。口に入れると溶けていく。おいしい〜」と絶賛すると、女将はご主人と目を合わせて、「よかったね」と喜び合う。それを見て、「仲良すぎだろ! 家では絶対そんなに仲良くないでしょ!?」と突っ込むきたろうさんに、「いえいえ、もっとイチャついてま〜す」と笑う女将のわかばさん。
わかばさんのチャームポイントは、鼻にかかったような愛嬌のある高い声。その声を活かして声優になりたいと、熊本の短大を卒業後、上京した。声優事務所に所属して声優として活動していたそうだが、「声優って大変なんでしょ?」と聞くと、「今はもう辞めましたが、本当に大変。体力的にも精神的にもしんどいし、周りとの競争もすごくて、私にはやっていけなかった」と言う。
ここで次の料理は、「ひともじのぐるぐる」。不思議なネーミングだが、こちらも熊本の郷土料理。ネギのような熊本県の伝統野菜“ひともじ”を茹でて、葉を茎にぐるぐると巻きつけ、自家製酢味噌をつけて食べる。シャキッとした食感とほどよい甘みに、「おいしい、酢味噌が合うね」ときたろうさんも感心しきりだ。
料理は基本的にご主人が担当。わかばさんは「馬刺しを切ったり、お新香を並べたり……(笑)。あとは愛嬌で!」とニッコリ。店を始めようと思ったのは、「熊本の母と一緒にいつか酒場を開きたい、という長年の夢があったから」とわかばさん。しかし、それまで二人とも飲食業の経験は全くなく、開業準備のため、ご主人が2年間、仲卸店や居酒屋で修業した。開業の夢が叶い、「母もすごく喜んでくれた。店にもよく来て、常連さんと飲んだり、おしゃべりを楽しんでいます」。
ここに来れば笑顔になれる!
熊本の馬刺し
大学を卒業後、イベント会社で様々なイベントを手掛けてきたとものりさんは、「主にコンサートの設営や警備などの裏方で、終了時刻が午前3時や4時というのもザラだった」とサラリと話すが、大変な仕事だったに違いない。そんなとものりさんは、スポーツジムでわかばさんに一目ぼれし、猛アタックして交際がスタート。出会ってから7年目に結婚し、同時に「わかば亭」を開業した。「今は、わかばちゃんがスポットライトを浴びる人で、僕はステージの下で一生懸命ライトを焚く側」と言うとものりさんに、「根っからの裏方だね」ときたろうさん。「でも、今の方がきつい。わかばちゃんに一切負担をかけないよう、全部僕がやらなきゃいけないから」と、料理だけでなく仕込みや掃除など店のことすべてを担っている。
次は店の名物料理「牛すじ煮込み」。大きめで食べ応えのある国産の牛すじを野菜と一緒に3日間煮込む。「おいしい〜。こんなに大きいのに、すごくやわらかい」と頬が落ちそうな西島さん。
店を続ける秘訣は、「夫婦仲良くやること」とご主人。お客さんを楽しませたいと、仮装パーティーや、わかばさんの趣味のウクレレイベントなどを開催することもある。この日は、常連さんのウクレレ伴奏に合わせて、わかばさんが歌を披露し、店内はさらに和やかな雰囲気となった。
続いていただくのは、「牛肉サラダ」。玉ねぎと一緒に炒めた牛肉をのせたボリューム満点のサラダは、にんにくや豆板醤入りのピリ辛自家製ドレッシングもいいアクセントで、「野菜と食べるお肉の味。サラダにすごく合う」と箸が止まらないふたり。
「お客さんと飲んでしゃべるのが大好き。毎日楽しくてしょうがない」と目を輝かせるわかばさんに、ご主人は「白鳥のようなものです。白鳥はきれいに湖水をスーっと泳いでますが、足元はものすごく一生懸命に水を掻いている。その水掻きが僕です」と笑う。「感謝してます。彼とでなければ店をやるなんて考えられないし、夢をかなえてくれたのは彼なので」とわかばさんが言うと、ご主人も「彼女の素晴らしいカリスマ性があってこそ、今がある」と返して、「もう、ホント、ごちそうさま」と仲良し夫婦に完全脱帽のきたろうさんだった。
最後は、熊本の郷土料理「だご汁」を。野菜や鶏肉が入った出汁に、小麦粉で作った“だご”(すいとん)を入れた具だくさんの一品。「具材を切るまでが僕の仕事で、最後に味を決めるのがわかばちゃん」と、どこまでも尽くすご主人にとって、酒場とは「みんなで笑顔を作る場所。飲んでる人も飲まない人も、お互いを気遣いながら楽しく過ごせる」。わかばさんは「私たちの家=酒場=この店。どうぞ私たちのお家に遊びに来てね!」。