渋谷区代々木で創業46年の老舗酒場
父の跡を継ぎ暖簾を守る二代目
一味違う大人の絶品料理に舌つづみ!
内定した会社を辞退して魚屋で修業
今宵の酒場は、JR代々木駅西口のすぐそば。細い階段を下る狭い入口が隠れ家的な「よよぎあん」。店内は落ち着いた空間が広がり、「いい雰囲気」と期待が高まる、きたろうさんと西島さん。さっそく、焼酎ハイボールを注文して、「今宵に乾杯!」。先代が築き上げた店を継ぎ、厨房で腕を振るうのは、二代目ご主人・関将伸さん(45歳)だ。「よく継いだね。役者になってもいい顔じゃない!?」ときたろうさん。西島さんは、ご主人の体格の良さに「何かスポーツを?」と尋ねると、「バスケをやっていた」とのこと。それを聞いたきたろうさん、「あー、そうだ! バスケ顔だ!!」(笑)。
最初にいただくのは、「刺身盛り合わせ」。この日は、黒むつ、かんぱち、真鯛の三種類。それぞれ炙ったものと炙ってないものが盛り合わされ、両方を楽しめる。まずは銚子産の生の黒むつを食べて「あまいっ。旨いねぇ〜」と、きたろうさんが喉を鳴らせば、淡路産の真鯛に「おいしい! 鯛とは思えないくらい濃厚」と西島さんも舌つづみ。次に炙りを食べて、「全然違うね、歯ごたえも。炙りは何とも言えないおいしさ。香りもいい」と感動するふたり。「炙ると脂が溶けて、香ばしさと旨味が出る」とご主人も胸を張る。
最初は店を継ぐ気がなく、大学に進学し、服飾関係の就職先も内定していたという将伸さんだが、就職活動を進めるうちに、「店をやりたい」という思いが強くなった。結局、内定した会社ではなく、都内の魚屋に就職。3年間、厳しい修業に耐え、誰にも負けない魚の知識を身に着けた。その後7年間、都内の酒場で腕を磨き、32歳で二代目として「よよぎあん」の厨房に立つことに。店を継ぐ時も不安はなく、「変な自信だけはあった。絶対できる! 代々木で一番になってやる!」と信念を貫いてきたという。
ここで次のおすすめ「もつ煮」を。季節感を出し、月ごとに味や内容を変えるそうで、この日(9月)は、ナスのもつ煮。味噌ベースのもつ煮に炒めたナスを入れ、青唐辛子と花山椒で味付けする。「季節感じるね。旨いっ」ときたろうさん。「もつ煮に野菜が入っているの嬉しい〜」と西島さんも感激だ。ちなみに、夏は、トマトを使ったイタリアン風もつ煮(7月)、ニラを使ったスタミナもつ煮(8月)などを提供。工夫を凝らして新たなメニューを考案する将伸さんの姿勢が店の人気を支えている。
魚のあらで取る濃厚スープのラーメン!
とんかつ
7年前に亡くなった、先代の父・伸行さんは、中学卒業後、青森から上京。職場を転々としたのち、知人の誘いで20歳の時に「とんかつ代々木庵」を開業した。8年後、店も軌道に乗り、従業員だった誼子(よしこ)さんと結婚し、35歳で、とんかつ屋を経営しながら、念願だった酒場「よよぎあん」を開業。二人三脚で店を切り盛りしてきた。
母の誼子さんは、「よよぎあん」と同じビルの2階にあるとんかつ屋「代々木庵」で、将伸さんの兄・憲之さんと一緒に働いているという。それを聞いたきたろうさん、「じゃあ、次は、とんかつとお母さんを!」と注文。しばらくして、とんかつを運んできた誼子さんに、「注文どおり、とんかつとお母さんだ!」と大喜び。ボリュームたっぷりのとんかつは、肉は柔らかく、衣はサクサク。兄・憲之さんが父の跡を継ぎ、開業当時から変わらぬ味を守り続けている。誼子さんは、毎日11時〜22時まで働き、「仕事しているから元気になれる。子供たちも店を継いでくれて。ありがたいと思ってます」と幸せそうな笑顔を見せてくれた。
次の料理は、「ぶりの煮付け」(※魚は仕入れにより変わる)。「結構甘めの味付けでおいしい! チューハイがあっという間になくなる〜」とご機嫌な西島さん。「脂がのった魚は甘辛く濃いめに」と、魚を知り尽くしたご主人が、季節の魚を選び、その旨味を最大限に生かして作る垂涎の一皿だ。
「うちは間口が狭くて、一見さんは入りにくいと思いますが、それがかえって良かったと思う。勇気を出して入ってきてくれたお客さんをどれだけ喜ばすことができるか。満足してもらえれば、また次も絶対来てくださる」と、語るご主人の目には自信があふれる。常連さんからも「食材の活かし方は、代々木でナンバーワン。何度も感動させられている」とお墨付き。店を続ける秘訣は「焦らない。そして、驕らないこと」というご主人の哲学に、「お坊さんの法話のよう」と聞き入る西島さんだったが、最後の〆は「ラーメン」と聞いた途端、一気に興奮が爆発!
「魚の出汁がすごい!」ときたろうさんたちを唸らせる濃厚なスープは、店で出る魚のあらをフランベし、にんにく、ねぎ、しょうがを入れ2時間煮詰めて取る。「今日は黒むつ多め。時期によってあらの種類も変わるので、味も変わります」と聞けば、さっそく次回の来店が楽しみになってくる。「酒場はお客さんが笑顔になれる場所。それを見て、僕たちも元気になれる」と話すご主人の絶品料理が、今日も誰かを笑顔にしている。