豊島区大塚で創業49年目
暖簾を守る女将と二代目が作る
絶品の北海道郷土料理に舌つづみ!
北海道出身の夫婦が築いた人気酒場
今宵の舞台は豊島区大塚。都電荒川線の路面電車「東京さくらトラム」が行き交う大塚駅前から、きたろうさんと西島さんが向かう酒場は、「北海道料理 三平」。女将の佐藤冨美子さん(75歳)と二代目・佐藤晃一さん(40歳)に迎えられ、まずは、焼酎ハイボールで「今宵に乾杯!」。最初のおすすめ「刺身盛り合わせ」をいただく。この日は、北海道産の中トロ、ツブ貝、ホタテ、鮭のルイベ、水ダコと九州産のカンパチ、さらにクジラという、豪華7点盛り。ルイベとは、冷凍保存した魚を凍ったまま味わう北海道の郷土料理で、北海道出身の西島さんは、「食感が独特で、おいしいんですよ!」とテンションが上がる。きたろうさんも「口の中で溶けていくのが楽しめるね」と大感激だ。
店は昭和46年創業。先代のご主人・翼弘(よくひろ)さんは20年前に他界し、現在は、女将の冨美子さんと息子の晃一さんが店の暖簾を守っている。北海道・網走出身の冨美子さんは、高校卒業後、上京し、22歳の時、翼弘さんと出会った。日本橋のうなぎ割烹で料理人として働いていた翼弘さん(当時25歳)も函館出身で、ふたりは意気投合。3年の交際を経て結婚し、「三平」を開業した。「開店当初、私は何も知らなくて、魚もおろせず、困りました(笑)」と冨美子さん。それでも、実際やってみると、「楽しかったです。いいお客さんばかりで、みんなに助けてもらって」と懐かしむ。女将によると、先代ご主人は、“勝新太郎さん似”で、我が道を行くタイプだったとか。接客もうまく、女性客からも人気があり、すぐに繁盛したという。「さすが北海道出身。開拓精神があるね」と、きたろうさん。店名の「三平」は、北海道の郷土料理“三平汁”からつけたそうで、暖簾に描かれた北海道の絵には、ふたりの出身地(網走と函館)に星のマークが記されている。
次のおすすめは、晃一さんが考案した「ホッケのシューマイ」。北海道から生ホッケを取り寄せ、手作りする。「すごいじゃん! いいアイデア」ときたろうさん。西島さんも「蒸すとふわっふわで、すごくおいしい! お魚の味がよくわかる」と大満足だ。
最初は店を継ぐ気がなかった晃一さんは、高校卒業後、定職につかず、「フラフラしていた」という。しかし、22歳の時、料理人を志して調理師専門学校へ進学。卒業後は、日本料理店などで修業し、25歳で店を継ぐ決意をする。「母からは何も言われなかった」が、晃一さんの心には、「母を助けたい」という思いがあった。「息子が『お店に入っていいですか』と言うので、『いいですよ。でも他の従業員と分け隔てはしません』と言ったのを覚えてます。嬉しかったですね。言葉にはしませんでしたけど」と微笑む女将。
お客さんを大切にする親子の人柄
お刺身7点盛り
続いては、「ホタテとウニの炙り焼き」を。焼き海苔にホタテと生ウニをのせて炙ると、たまらなくおいしそうな香りが漂い、海苔で巻いて食せば、もう最高! 「旨いなぁ〜」ときたろうさんは唸り、西島さんも、「う〜ん、おいしいっ。ジューシーなホタテに、ウニと海苔の香りが!」と、磯の香りの三重奏に大興奮。ペロリと平らげて、「史上最速かも」と満面の笑みだ。「二代目、すごい才能あったんだね」ときたろうさん。休日の食べ歩きからヒントを得て新メニューを考案するのだとか。「息子も成長しました。今では、しょっちゅう息子に怒られてる」と言う女将に「よかった、よかった。それが流れだよ」と温かい眼差しのきたろうさんだ。
45年来通い続ける常連さんは、「お客さんに対して平等で、ごく自然に迎え入れてくれるのがいいんじゃないかな。二代目も創業当時の味を守りながら、いいものは取り入れて改良を重ねてる」と店の魅力を語る。
ここで次のおすすめ「北海珍味の細巻寿し」が登場。「〆じゃないのに、お寿司!?」と驚く西島さんに、「つまみとしてどうぞ。めふん、行者ニンニク、山椒漬け、カニ味噌の4種類です」とご主人。めふんとは、鮭の血合いを使った塩辛だそうで、きたろうさんは、「これは初めて。なるほど、飲めるね」と感心しきり。西島さんは、大好きな山椒漬けを頬張って、「最高〜」とウットリ。
そして、最後の〆は、お待ちかねの「三平汁」。かつお節と昆布でとった出汁で塩鮭と大根、人参を煮込み、酒粕で調えた懐かしい味わいに、「魚の出汁と粕の甘みがいいですね」とほっこりする西島さん。きたろうさんも「あったまるね。染みるな〜」と目を細める。
店を長く続ける秘訣を聞くと、「ウソも言わないし、お客さんを持ち上げることもしないけど、本当に自然体でやっているので、みなさん安心して来てくださるのかな」と女将。「毎日、毎日の積み重ねですよね」ときたろうさんも納得する。今、女将が先代に伝えたい事は、「息子が頑張ってます」ということ。「先代も、まさか息子が店を継ぐとは思ってなかったはず」と、毎朝、線香をあげながら、息子の頑張りを報告しているのだそう。「親孝行しなきゃね」と言うきたろうさんに、「そうですね」と少し照れた笑顔で頷く晃一さん。女将が「酒場とは、ちょっとした心のよりどころ。外で嫌なことがあっても、一杯飲んで、いい雰囲気になってもらえれば」と言うと、「全く同じです」と、やっぱり照れ臭そうに笑う晃一さんだった。