自信あふれる若き店主が
独学で身に着けた料理のセンスで作る
驚きの絶品創作料理に舌つづみ!
粉チーズと黒コショウで食べる新感覚のもつ煮!
冷たい雨の中、板橋区富士見町にやってきた、きたろうさんと西島さん。「こんなところに酒場があるの?」と言いながら、都営三田線板橋本町(ほんちょう)駅から富士見街道沿いを歩いて、今宵の酒場「ひので」へ。ご主人・田上鷹介(ようすけ)さん(36歳)の元気な笑顔に迎えられ、さっそく焼酎ハイボールで「今宵に乾杯!」。“今どきの若者”風なご主人に、「料理作れるのかなぁ。ひとりでやってるの?」と思わずつぶやく、きたろうさん。「それが、できるんですよ!」と自信ありげなご主人だ。
最初のおすすめは、「青唐辛子醤油漬け生ハムチーズ巻き」というが、なぜかコーヒーカップが出てきて、西島さんは目が点に。カップの蓋をとると、煙があふれて、さらに驚く! 生ハムで巻いた青唐辛子とクリームチーズを軽く燻し、燻煙とともに器に閉じ込めている。「香りがふわっと鼻に抜けて、後はさわやかな味。おいしい〜」と感激する西島さん。添えられた自家製ソースをつければ、甘みが増し、味変えも楽しめる。
お店を始めて9年半と聞いて、「若いのに!」と驚くきたろうさん。イケメンでノリのよいご主人に、「お笑い芸人とかやってたんじゃないの!?」と言うと、西島さんもご主人も大爆笑! 高校の頃は競艇選手になるのが夢だったが、競艇選手に必要な色の識別視力が弱いことが分かり、夢をあきらめた。高校卒業後は様々なアルバイトで生計を立て、19歳で酒場のアルバイトを始めると、それが天職に。
「居酒屋のオープニングスタッフをした時、初めは、10代のチャラチャラしたフリーターの自分に、周りは冷たい目だったんですが、最初の1日で、働きぶりをすごく評価してもらえて。他店舗から引き抜きの声もかかるほど。ホールの仕事に自信があったし、周りを見返したいという思いもあったんですよね」と力がこもる。「10代ですごいね。根性あるね」ときたろうさんも感心する。
ここで、次のおすすめ「白コロもつ煮込み」が土鍋で登場! 旨味の強いマルチョウ(牛の小腸)を使ったコクのある味わいに、大根や豆腐なども入って具だくさん。「お好みで、粉チーズとブラックペッパーをかけるのが、完成形。新感覚の味です」とご主人に勧められ、半信半疑で試してみると、「おいしい! しょっぱいスープにまろやかな乳製品が、バターコーンラーメンを食べてる感じ」と西島さんも舌つづみを打つ。
濃厚スープがたまらない「鶏白らーめん」で〆
超ガリトマチキンステーキ
開業時は、親から資金を借り、安い物件を探して、板橋本町駅から徒歩10分のこの物件を見つけた。最初は、高校時代の友人と一緒に開業したが、互いに意見がぶつかることも多かったという。6年前、友人が結婚を機に店を去ることになり、以前からひとりでやりたいという思いもあったご主人には、いい機会になったが、気持ちは複雑だった。「その時は、ヤッター! と思ったのに、帰り道で、泣きました」と振り返る。「そりゃ、寂しさも不安もあるよね」ときたろうさん。
ご主人は、店を一から作り直すため、様々な創作料理を考案し、すべて独学で創り上げた。「基礎がないので、逆に、いろんな発想が浮かぶんです」。「それで試食して、出すの?」と聞くと、「たまに試食しないで、反応を見たり……」と笑うご主人。「うそでしょ、やめてー!」と悲鳴をあげるふたり(笑)。
次の料理は「超ガリトマチキンステーキ」。「名前が長いよっ」と突っ込みながら、一房分のにんにくを使ったトマトソースを豪快にかけたチキンステーキに、「驚ろかすねぇ!」ときたろうさん。「相当パンチ効いてる!」と西島さんも大満足だ。「修業して人に教えもらうより、四苦八苦しながら自分で学んできたのが、よかったと思ってます」と迷いのないご主人。きたろうさんは「料理に遊び心があるよね」と頷き、西島さんも「修業してない強みかも」と納得する。
続いては、サバの缶詰を使った「サバみそ缶ねぎバターチーズ」。サバ缶にネギやバター、チーズを加えて加熱し、低温の炎で盛り付けを演出する。「ねぎバターがサバに合う〜!」と絶賛の西島さん。「インスタ映えもするし、発想が若い」ときたろうさんも感心しきりだ。
店を一人でやり始めた頃には客が減って、やめたいと思ったこともあったそうだが、「妻が、『あなたが居酒屋で成功しなかったら、ほかの誰も成功しないよ』と言ってくれて、救われました」とご主人。「最高だよ! いい女房だ」と称賛するきたろうさん。「でも、それ50代の男が言う話だよ。君は若すぎ」と苦笑い。
最後の〆には、「鶏白らーめん」を。「他にはない旨さ。このレベルはすごい!」と感動するふたり。鶏ガラ、鶏の足、牛背脂、豚ゲンコツからとるスープは「めちゃめちゃ濃厚」で、仕込みに3日間かけて、丁寧につくっている。今後について伺うと、「最初は無我夢中でしたが、やっと自信がついてきて、これからはお客さんに楽しんでもらえる店にしたい」とのこと。酒場は、「自分の立ち位置を教えてくれる場所」だというご主人に、きたろうさんは、「やっぱり自分のことしか考えてない!(笑)」と言いつつも、その才能と可能性に大きな期待を寄せるのだった。