ショーパブの人気ダンサーだった男が
45歳で華やかな世界を退き
仲間とともに開業した酒場
引き立つ甘み! がりの肉巻きに舌つづみ
実は、治樹さんは18歳で三重県から上京し、約20年間、西新宿の老舗ショーパブ「ギャルソンパブ」で、ダンサーとして活躍した。人気ダンサーの彼を見るために多くのファンが訪れたという。それを聞いて、きたろうさん、「俺もそこでやったことあるよ!」と、ビックリ。結成間もないシティボーイズも出演したのだとか。そんな老舗店で、店長とダンサーを兼務していた治樹さんだが、45歳の時、「やり切った」と潔く引退を決意。そして、治樹さんを慕い、一緒にショーパブを辞めた仲間とともに、酒場の主人として第二の人生を歩み始めた。
今宵の舞台は、新宿駅から丸ノ内線で3駅の中野区新中野。そこから2駅先の新高円寺に住んでいたきたろうさんも、お馴染みの街。酒場が並ぶ路地を歩きながら、「いい感じ〜」「ハシゴできそう」と、早くもテンションが上がる、きたろうさんと西島さん。やって来たのは、平成27年創業の酒場「優楽庵 八度 (ゆらあん はちたく)」だ。アットホームな店内で、いつものように、焼酎ハイボールで「今宵に乾杯!」。
イケメンご主人の片山治樹(はるき)さん(49歳)に、「かっこいいねぇ」ときたろうさん。西島さんも「ただ者じゃない感じ!」と興味をひかれながら、まずは最初のおすすめ、「がりの肉巻き」をいただく。がり(甘酢生姜)を大葉と豚バラで巻き、塩コショウで焼き上げると、がりの甘さが引き立って、得も言われぬ旨さ。思わず、「おいしい〜」と唱和するふたり。
元ダンサーで治樹さんの妻である女将の久美子さん(44歳)、従業員の藤代嵩人(たけひと)さん(35歳)と、現在、育休中の嵩人さんの妻・千尋さん。「嵩人はもともと弟みたいな感じで、よく遊んだりしていた仲間。店名も4人の頭文字をとって『はちたく』にしました」と治樹さん。嵩人さんも「先輩とこんな家族ぐるみで店をやれるとは、思いませんでした」と、先輩後輩のいいコンビ。
ここで、次のおすすめ、「ひとくちピザ」が登場! ミニミニサイズながら、意外と具だくさん。「かわいい〜」、「ちょうどいいね」とパリパリ頬張るふたり。生地は、なんと餃子の皮! 嵩人さん考案のメニューだそう。
全力でお客さんを楽しませたい!
厚切りハムカツ
多くのお客さんで賑わう店内。この日も、「マスターは、踊るとめっちゃかっこいい! ずっと踊っててほしい」と話すファンの女性客から、「一人で来ても、知らない人と友達になれるし、いつ来ても受け入れてくれる」という男性客など、お客さん同士でワイワイと盛り上がっている。「すごい一体感! みなさん仲良し〜」と西島さんも楽しそう。「この路地も雰囲気いいよね」と言うきたろうさんに、「そうなんです、それで、ここに決めたのもあります。満席の時はお客さんを近隣のお店にも紹介しあったり。いろいろ受け止めてくれるいい街なんですよ」と、心から満足げな治樹さんと久美子さん。
さて、お次は、「厚切りのハムカツ」を。ブランドハムの「飛騨ポーク」を厚切りの贅沢フライに。お好みでケチャップをつけてかぶりつけば、「ちょっとアメリカンドッグ」な王道おつまみに。「45歳までダンサー一筋だと、料理は苦労したでしょ」と言うきたろうさんに、「最初の一年は、本当に大変でした。今でもずっと不安ですけど……(笑)」と正直な治樹さん。
続いていただくのは、治樹さんの故郷・三重県のおふくろの味をアレンジした「プリプリホルモン焼き」。八丁味噌でこってり味つけしたホルモンは、「これはプロの味!」ときたろうさんも西島さんも太鼓判。
「お客さんがこんなに来てくれるのはどうして?」と聞くと、「お客さんは、店に入ったらみんな平等。分け隔てなく全力で楽しませる、という思いでやってるので」と治樹さん。きたろうさんは、「大将も女将も、イキイキしてるんだよね。人間が生きてるって感じがするんだよ」と感心する。女将の久美子さんは「ショーパブ時代から引き継いだものかもしれないのですが、わざとやってるわけではないんですよね」と心からの笑顔。「忙しくて、息つく暇もなく料理作っているときが、楽しいです。今が一番楽しい!」と充実感あふれる治樹さんに、「はるちゃん、第二の人生もちゃんとやってるね」ときたろうさんの眼差しも温かい。
最後の〆は、「伊勢うどん」。柔らかく茹でた太うどんに、たまり醤油とかつお節をしっかり混ぜていただく。西島さんはツルツルモグモグ食べながら、「この柔らかいのが、濃いめの醤油に合う〜」と大満足。
恒例の「酒場とは?」の質問に、久美子さんは「皆が楽しく居られる場所にしたい」とニコニコ。治樹さんは、「おいしいお酒があって、いい仲間が集まる場所ですね」。後に控えていた嵩人さんは、「僕にとっては、いろいろ教わる場所です」と後輩らしく答えて、やっぱりチームワークの良さがキラリ。