中目黒で創業33年目の
歴史を感じさせる渋い酒場
二人三脚で守り続けてきた夫婦の物語
薩摩知覧鶏の炭火黒焼に舌つづみ!
今宵の舞台は、目黒区中目黒。若者がおしゃれに飲み集うイメージの街で、きたろうさんと西島さんがやってきたのは、東急東横線の線路沿いにある創業33年目の「楽膳(がくぜん)」。「渋いね、いい感じ」とさっそく気に入った様子のふたり。まずは、ご主人の泉憲昭さん(62歳)に焼酎ハイボールを注文して、「今宵に乾杯!」。憲昭さんとともに店を切り盛りしている女将の淳子さん(62歳)に、きたろうさんは、思わず、「奥さん、きれい! 旦那は……(笑)」。
最初のおすすめは、「刺身5点盛」。マダイ、マトウダイ、ブリ、炙りしめさば、ホタルイカと盛りだくさんな内容に、「これだけ品数があるとうれしいね」ときたろうさん。西島さんも、マトウダイを食べて、「さっぱりしてるけど、程よくネットリ。タイが2種類もあって贅沢〜」と舌つづみを打つ。
食堂を営む両親の元に生まれたご主人は、自分の店を持つことを夢見て、料理の腕を磨き、30歳で中目黒に自分の店を開業。22歳で結婚した妻の淳子さんも、その時から店を手伝い始めた。22歳まで栄養士として病院に勤務していた淳子さんは、調理の経験はあったが、子育てもあって、店を手伝い続ける予定はなかったという。ご主人も、「最初は従業員を揃えて、妻は専業主婦に、と思ってたんですが、働き手が少なくて。そのまま32年。今に至ります」と、淳子さんには頭が上がらない。
憲昭さんと淳子さんは、実は高校の同級生で、15歳からつきあっていたという。 西島さんが、「マドンナだったでしょう!?」と言うと、「いえいえ、私からアプローチしたんです」と淳子さん。ご主人も「若い頃は、僕はジャニーズ系だったから(笑)」と臆面もなく言って、一同大爆笑! 「もう運命共同体ですね」。「見るからに、今も仲良さそうだもんね」と、赤い糸の太さに驚くばかりだ。
さて、次は、「知覧鶏の炭火黒焼」を。炭火を激しく燃焼させ、高く上がった火柱で炙る。濃い炭の風味に、「香りが〜!」と待ちきれない西島さん。しっかりした噛み応えのさつま地鶏を、「噛めば噛むほど、いい香りが出てくる〜」と味わい尽くす。
ご主人の優しさと女将の細やかな気遣い
御刺身盛合
開業当時の様子を聞くと、「30年前は、まだ下町の風情が残っていて、職人さんなんかも多かったですね。この辺りでは大衆酒場が珍しかったので、それなりに繁盛しました」とご主人。当初は、武蔵小山と三軒茶屋にも支店を経営していたそうで、「若かったので、朝の4時頃まで一生懸命働いてましたね」と淳子さんも当時を振り返る。
ここで、次のおすすめ「ラーメンサラダ」が登場! 一見、冷やし中華のようだが、「ラーメンの味をそのままに、サラダ仕立てにした」という。「ごまだれが麺にも野菜にも合う〜。野菜も取れてうれしい」と西島さん、大満足だ。
店の料理には、淳子さんの栄養士経験をいかした細やかな気遣いも。「40歳過ぎると、ご家庭で塩分制限される方も多いので、それぞれのお客さんの様子を見て、塩分を抑えたりもしますね。リピーターさんが多いので、それを心の糧に、毎日を積み重ねてます」と言う。「今では、私がいないと店が回らない」という淳子さん。現在は、昼間は家事や介護をしながら、夜、店を手伝っている。しっかりと休養がとれるようにと、ご主人は、昨年から営業方針を変更し、週休2日制にした。いつも穏やかな笑顔の女将だが、ご主人からは、「お客さんに向けるその笑顔を俺にも向けてくれ」と言われるとか。「今、ちょっと向けてあげたら?」ときたろうさんに言われて、ご主人に向かってニコッとほほ笑む淳子さん。照れながらもうれしそうなご主人は、ちょっとカワイイ!?
続いていただくのは、淳子さんが作る「天ぷら盛合」。かつてご主人の両親が営んでいた食堂の人気メニューを、今は淳子さんが作っている。この日は、鯛ときのこの盛り合わせ。「鯛の天ぷら、初めて! おいしい〜」と西島さん。「やっぱり幸せだね、天ぷらは」ときたろうさんも大満足だ。
32年間支えてくれた淳子さんに対して、「感謝、感謝です。いなければだめでしたね。精神的にも肉体的にも」と素直に言葉にするご主人。普段から喧嘩した後には、「すまない。毎日感謝してるから」と謝るそうで、ふたりの仲良さには、きたろうさんも、もう脱帽。
最後の〆は、数量限定の「鯛のカブト塩焼」。立派なカブトに、テンションが上がるふたり。「鯛のフルコースみたい」と、たっぷりの身を口に運んで、「脂のノリも塩加減もバッチリ! 最高です」と感激する西島さん。
酒場とは「疲れを吹っ飛ばす場所」と淳子さん。ご主人は「明日への活力です」と言う。きたろうさんが「儲けは?」と聞くと、「その後ですね。通信簿みたいなものですから」と答えて、「いい言葉だな〜」と感心するきたろうさんたちだった。