酒場激戦区・三軒茶屋で創業49年目
アメリカ留学で学んだ生理学を活かし
人気酒場を守り続ける二代目主人
YOUさんも絶賛! 驚きの納豆豆腐
前回に続き、7年目突入記念スペシャルの第2弾。テレビや映画などで幅広く活躍するYOUさんをゲストに迎え、世田谷区三軒茶屋で創業49年目を迎えた老舗酒場「仙太」を訪ねる。きたろうさん、西島さん、そしてYOUさんの3人は、焼酎ハイボールで「今宵に乾杯!」。
焼き台の前で腕を振るうのは、二代目ご主人の田原睦繁(むつしげ)さん(48歳)だ。お通しの特製サラダは、おかわり自由。「千切りキャベツにのせた、揚げワンタンや刻み海苔を砕いて、よく混ぜて食べてください」とご主人。一口食べて、「うまいっ!」と叫ぶきたろうさん。YOUさんも「バケツ一杯食べられるヤツだ〜!」。
睦繁さんは、この店で働いて18年目。昭和46年に店を開業した父・凉太郎さんが17年前に亡くなり(享年59)、30歳で二代目を継いだ。子供の頃から、楽しそうに働く父親の姿には、憧れを抱いていたという。
ところで、YOUさんときたろうさんの出会いは、35年前。シティボーイズの舞台での共演がきっかけで、「当時20歳のYOUさんは、女神みたいに可愛いかった」と、遠い目をするきたろうさん。「その頃、僕らは時代の最先端を行ってる自負があったんだよね」と若かりし日に想いを馳せる。
次の一品は、丸い豆腐の中に納豆が入った自家製の「納豆豆腐」。少々驚きながらも、「おいしい! 超好き〜」と興奮気味のYOUさん。ご主人曰く、「豆腐の生地に納豆の粘りが馴染んで、コクが出る」そうだが、作り方は企業秘密だ。
実は、意外な経歴を持つご主人。都内の高校を卒業後、アメリカの大学に留学し、6年間、生理学を勉強した。その知識が今の仕事にも役立っていて、「たとえば、タンパク質の凝固変化とか、水分の失われ方とか、料理を物理的に考える」というが、「それ、なんかマズそう」ときたろうさんに言われて、「忘れてください!」と焦る。
アメリカから帰国し、24歳から懐石料理を学んだご主人は、30歳になる直前に、父親から、「そろそろ店をやれ。明日からか? 今日からか?」と迫られて、心を決めたという。続いては、そんな先代から引き継いだ、看板メニュー「胡麻つくね」をいただく。開業当時から継ぎ足してきた秘伝のタレが、「あんかけみたいに絡まって、おいしい!」と西島さん。続いて、「皮」の串もいただいて、「焼き加減、最高〜」と感激しきりの3人。
人を想い、人をつなげる酒場
Aパターン
店を継いだ当時は苦労も多く、「お客さんから、『お前の店じゃない』とか『お前の料理なんて食べねぇよ』とか言われて。毎日泣いてました」と振り返る。「でも、だからこそ、親父のすごさを実感できたし、自分が継ぎたかった理由が分かった」とも。そして、父・凉太郎さんは、ガンで亡くなる直前まで、睦繁さんの相談にのり、「歩けない状態で、みんなに支えられて見に来てくれて。生まれて初めて、『あいつもすげえなぁ』と言ってもらえた。その1か月後に亡くなりました」。
次のおすすめは、父親亡き後、ご主人が試行錯誤して作り上げた、「笹身大葉チーズ」と「胸山葵(わさび)」。均等に火が入るように串の打ち方を工夫し、塩で焼き上げる。「ササミもムネもパサつきがちなのに、ジューシー。」と西島さん。YOUさんも、口一杯に頬張りながら「おいしい〜」と大絶賛だ。
ご主人の隣で、手際よく串を焼く7年目の落合純也さん(31歳)は、「僕は、昔、態度が悪くて、大将に舌打ちしたことがあって(笑)。それでも許してくれた」と言う。「ご主人、ちゃんと更生してあげたんだ! ここ、更生施設!?」と冗談交じりのYOUさん。ご主人は、「たまに言われます」と笑いながら、親身に忍耐強く若手の教育にも力を入れている。「舌打ち、ちょっとやってよ」と、きたろうさんが水を向けると、落合さんが小さく「チェッ!」とやって、大爆笑だ!
さて、次は、隠れた人気メニュー「刺身の盛り合わせ」を。平目に金鰺、ヤリイカ、地蛸や金目鯛の炙りなど、どれも新鮮で、とびきりのおいしさ。もう、「おいしい〜」の言葉しか出てこない。
ご主人が大切にしているのは、「モノやお金よりも、とにかく人。どういう人が、どういう想いで来るのかを考えて料理を作るし、お客さん同士をつなげるコミュニティができればと思ってます。ここで出会って結婚したカップルも30組くらい。本当に幸せですね」。その言葉に、思わず、感動するきたろうさんたち……。
と思ったら、急に、YOUさんがニヤニヤしながら、目の前の大皿を指さして、「私、これ食べた〜い」。10年以上継ぎ足したデミグラソースで煮込んだ「角煮チャーシュー」だそうで、〆は、これに決まり! トロトロのチャーシューにガーリックトーストを添えていただくと、「めっちゃめちゃ、おいしい〜」とYOUさんのハスキーボイスが震える。
ご主人にとって酒場は、「人の想いと想いがぶつかる場所」だとか。「いい言葉だね。ケンカして仲直りするのも酒場であってほしいね」ときたろうさん。YOUさんにも同じ質問をすると、「普段からユルいけど、ことさらユルめる場所」とYOUさんらしい言葉が返ってきて、楽しい夜が過ぎていく。