練馬区桜台で創業10年
熊本出身のご主人が腕を振るう
馬肉尽くしの絶品料理に舌つづみ!
切りたての馬刺しは最高の旨さ!
練馬区桜台にやってきた、きたろうさん「落ち着く街だねぇ」と、桜台北口商店会を歩きながら、今宵の酒場「馬刺酒家 一家」へ。出迎えてくれたのは、ツルツル頭に黒タンクトップというパンチの効いた姿ながら、人懐っこい笑顔のご主人、「くっきー」こと、楠(くすのき)純一さん(37歳)だ。ソーシャルディスタンスを保って席についたきたろうさんと西島さんは、さっそく焼酎ハイボールで「今宵に乾杯!」。
最初のおすすめは、一番人気の「馬刺盛合せ」。切り置きとは味が全然違うそうで、「これが、最高の馬刺!」と、ゆるぎない自信を見せるご主人。赤身、ヒレ、タテガミ、肩バラ肉の盛合せに目を輝かせながら、赤身をペロリと食べた。「トロっとして旨いなぁ」と、思わずため息が漏れる。肩バラ肉は、「さっぱりした旨味が、口の中でほどける感じ」と部位ごとの味の違いも堪能。
ご主人は、10歳まで祖父母とともに熊本で暮らしていたそうで、上京した時は、東京においしい馬刺しがないことに落胆したとか。その後、ミュージシャンを目指したご主人は、20歳の時に、練馬区・江古田の酒場でアルバイトを始める。最初は「単にお金を稼ぐ手段だった」が、すぐに酒場の仕事にのめり込み、「エンターテインメント以外でも、こんなに人を喜ばすことができる仕事があるのか」と、酒場の楽しさに気づいたという。そして、27歳で酒場のアルバイトを辞め、自分の店を開業。「しばらくは、3つの仕事を掛け持ちして必死で資金を貯めた」そうで、夢を叶えるために、居抜きの物件を選び、床張りからテーブルまで、内装はすべて手作業で仕上げたというから、意志の強さに感服だ。
ここで、「馬肉煮込み」が登場! 他ではなかなか食べられない、馬肉の煮込みは、ボリュームも満点。生姜の風味が効いた出汁でホロホロに煮込まれた優しいおいしさに、ほっこり気分。
続いての一皿も、ちょっとめずらしい「馬肉のなめろう」。3種類の部位を使用し、香味野菜と味噌で叩く。注文を受けてから作ることで、爽やかな香りが立ち、「馬肉の味にまけない香味野菜の風味がたまらない〜」と箸が止まらない。
無我夢中で突っ走るひたむきさに感動
開店当初は、「閑古鳥も鳴かないくらい誰も来ず、僕が泣いてました」と振り返るご主人。悲願の独立から3ヵ月。ようやく常連客が付き始め、店が繁盛していった裏には、必死の努力があった。「お客さんの名前や好みなど、すべてメモして覚えたんです」と、手渡されたファイルには手書きメモがぎっしり。「それは、客もうれしいよね」ときたろうさん。さらに、インパクト抜群のタンクトップ姿も、お客さんとの会話のきっかけにしたいからだと聞いて、「また、似合ってないところがね(笑)」と半分呆れ顔のきたろうさんに、一同、大笑い!
そして、馬肉尽くしの次の一皿は、「馬肉つくね」。ハンバーグ級のボリュームに驚きながら、卵の黄身をくずして、トロリと口に運べば、「ふわふわで柔らかい」。馬のひき肉に豆腐ととろろを加えていると聞けば、納得だ。
開業時、馬肉の仕入れ先を探すため、「熊本の馬刺しの店を、片っ端からほとんどまわった」というご主人。「若かったから突っ走れたのかも」と笑うが、「信頼関係が成り立つまで、なかなか売ってもらえないこともあった」と、乗り越えてきた苦労が伺える。緊急事態宣言の時も、「休業や時短営業で大変でしたけど、本当に大切なものを守っていれば、お客さんが絶対助けてくれると信じてました」とご主人。「くっきーみたいに、根拠のない自信で突っ走って、無我夢中で真っすぐに追い求めてるとね、意外と人はついてきてくれるんだよね。情熱があるヤツには、なんとかしてあげたいって思っちゃうんだ」と、きたろうさんの言葉が心に響く。
そして、最後の〆は、なんと「馬肉唐揚げ」。唐揚げらしからぬ、レアステーキのような見た目ながら、口に運べば、お味は絶品! 「確かに唐揚げ感があるよ」と驚くきたろうさん。馬肉本来の味を活かすために刺身用の肉を使用し、濃いめの味付けの薄衣で、レアに揚げる。「相反するものを一緒にしたね」と、もう感動的。
「人と触れ合えるのがすごく楽しい」というご主人は、「好きなことだから、どんなことがあっても続けられる」と目を輝かせる。「酒場とは“家”。思い出がどんどん生まれる、あったかい、家族のような店を作っていきたい」と語る様子に、「なんだか、坊さんに見えてきたよ(笑)」ときたろうさんが言って、またまた温かい笑いに包まれた。