自由奔放に生きてきたご主人が48歳で開業!
半蔵門のオフィス街の片隅で
サラリーマンの心を癒す大衆酒場
四国の絶品郷土料理を堪能!
きたろうさんと西島さんがやってきたのは、東京都千代田区半蔵門。高層ビルが立ち並ぶオフィス街の片隅で、仕事を終えたサラリーマンの癒しの場となっている「麹町酒場 まんで屋」が、今宵の酒場だ。店を切り盛りするのは、香川県出身のご主人・久保隆さん(50歳)。少し変わった店名は、“たくさん・全部”を意味する讃岐地方の方言“まんでがん”から名付けたとか。さっそく、ふたりは焼酎ハイボールを注文して、「今宵に乾杯!」。
最初のおすすめは、「しょうゆザンキ」。「愛媛県今治発祥の郷土料理“千斬切(せんざんき)”は、鶏の骨付き肉をタレに漬け込んで揚げるんですが、骨のないもも肉だけを使うのが“ざんき”」とご主人。きたろうさんは、「タレの味が染みてるね」と舌つづみ。西島さんもアツアツにかぶりついて、「チューハイとの相性、最高!」と大興奮だ。
お次は、地元・香川県名物の漬物2種類。讃岐名物「なすの辛子漬け」は、『鬼からし』という香川県の激辛からしを使用とのこと。覚悟して食べたきたろうさんだが、その強烈な辛さに顔を真っ赤にして悶え、「辛ぁぁぁい〜」と涙目。西島さんも、想像を絶する辛さに耐えながら、「辛いけど後味が甘くておいしい」と病みつきになりそう!? 続いて、「かぶの甘酢漬け」を味わって、「しっかり味が染みておいしい」と笑顔が戻るふたり。香川県では家庭の定番料理で、ご主人は祖父の味を思い出して漬けているそうだ。
15歳の時に酒場のアルバイトを始めたご主人は、高校3年生の時に中退。20歳からプロスノーボーダーを志し、夏は酒場でアルバイトして、冬はスノーボード三昧の生活を送った。さらに、29歳の時には「やり残したことはないか?」と自問し、突如、役者を目指す。「行動派だけど、考え方が甘い(笑)」と突っ込むきたろうさんだが、役者としてNHK大河ドラマ「軍師官兵衛」や「龍馬伝」などにも出演したとか。そして、「やりたい事だけをやる」を座右の銘に、自由な人生を謳歌してたどり着いたのが酒場の仕事だった。
ここで次の料理「鶏かわの鉄板焼き」が登場! 「ぺったんこで皮とは思えないほどパリパリ!」と驚く西島さん。生の鶏皮に重しをして鉄板でじっくりと焼き、脂を落としてパリパリ食感に焼き上げるのだそう。
ご当地ソースを使った焼きそばに舌つづみ!
48歳で独立するまでに、20軒くらいの店で働いたというご主人。自由奔放に生きてきたが、バイト先は必ず飲食店と決めていた。「職種を変えなければ、それがキャリアになる」。香川県で建築業一筋の人生を歩んできた父・正さんからのアドバイスだった。高校時代、「好きなことばっかりやって生きていくなんて、子供みたいなこと言うな」と先生に言われたが、「オレは死ぬまで好きなことだけやって生きてやらぁ!」と思い、実践してきた。だからこそ、今までの人生「後悔はない」。
2年前の開業当初は暇だった言うものの、周辺のビジネスマンのお客さんも多く、「ランチは初日からすごく繁盛した」とか。徐々に夜の来店も増え、「お偉いさんも、こんな安酒場に来てくれるんです。ありがたいですね」。現在、アルコール消毒やテラス席の活用など新型コロナ対策を徹底して営業しているが、自粛規制の時は、お客さんを守るため、完全閉店していたそう。「出勤も減ったのに、それでもわざわざ来てくれる常連さんもいる。大事にしてくれるお客さんを思うと、へこたれてはいられない!」と、持ち前のガッツを発揮する。
続いていただくのは、「ホルモンにらもやし」。修業時代の店で出会った特製みそだれの美味しさに感動し、独立したら使おうと20年前から決めていたという。コリコリとした歯応えを楽しめるよう、サンドミノという肉厚な希少部位を使い、「ホルモンの噛み応えと、脂身の香ばしさ、もやしとニラのシャキシャキ感がおいしい」と絶賛の西島さん。
独立当初から一緒に働く“相棒”の小島淳嗣(37歳)さんは、ご主人と同じ居酒屋のアルバイト仲間だった。「一緒に独立しない?」と誘うと、「いいっすよ!」と即答だったそうで、「かえってケツに火がつきました」とご主人。小島さんによると、ご主人は、「人に甘くて自分にも甘い(笑)」そうで、「日によって言うことも変わるから、2回言ったら本気、と判断してます」と、楽しそう。
最後の〆は、自慢の「焼きそば」を。香川県のご当地ソース「ヨシノとんかつソース」を使い、ソースが絡みやすいようにソーキそばを使っている。「ソーキそばの焼きそばって初めてだけど、大正解! ソースが絡んで、味噌のような甘みを感じる」と大満足な西島さん、もう、満腹だ。
ご主人にとって酒場とは、「おじさんが毎日来ても体を壊さない、いい酒といいつまみがある場所」。きたろうさんは、「お見事! 好き勝手やってるようで、やり手だね。こういう人は人生に失敗しないんだよ」と、感心しきりなのだった。