渋谷区代々木上原で創業26年
すべてを一人でこなすご主人の
絶品料理と軽快トークが客を魅了!
新鮮な「秋刀魚のなめろう」に舌つづみ
今日の舞台は、渋谷区代々木上原。作曲家で、昭和歌謡の巨匠・古賀政男の自宅跡に建つ「古賀政男音楽博物館」から、今宵の酒場へと向かうきたろうさんと西島さん。古賀メロディーの名曲、美空ひばりの「悲しい酒」を口ずさみながら、ゴキゲンに到着したのは、平成6年創業の「魚目(ぎょもく)」。ご主人の鶴口幹十(かんじゅう)さん(50歳)がひとりで切り盛りしている。さっそくふたりは焼酎ハイボールを注文して「今宵に乾杯!」。
最初のおすすめは、「秋刀魚のなめろう」。「いきなり、なめろうが食べられるとは!」と大喜びのきたろうさん。味噌の風味が新鮮な秋刀魚の味を引き立てて、「めちゃめちゃチューハイが進む」と、西島さんは早くもグビグビ!
「東京出身。下北生まれ。シティボーイズです(笑)」と、キレのある口調で小気味よく話すご主人は、料理一筋。18歳で酒場のアルバイトを始め、大学卒業後、フランス料理店と和食店で1年ずつ修業。25歳の若さでこの店を開業した。フランス料理店での修業は特に厳しかったそうだが、その経験と教えは、今でも大切にしているという。「まずは、まかない作りで、いろいろなことを学びましたね。簡単な料理ほどお客さんからお金をもらうのは難しいってことや、どんな仕事もお金になるということ。店の掃除だって、お客さんからお金をもらってるわけだから、一生懸命やりなさいってね」
さて、次のおすすめは、「銀ダラの西京焼」。香ばしく焼けた肉厚の銀ダラに、「いい香り〜。プリっとした身から、グイグイと旨味が出てくる」と西島さん大興奮! 「旨いよ、見事!」と、きたろうさんも舌つづみを打ち、「このおいしさは、友達を連れてきたくなるね」とすっかり虜だ。
開業当初は、ただ一生懸命だったというご主人。「築地市場に毎日通って、いろいろ教えてもらいましたね。何も知らないガキだったから、何でもできたのかも。今じゃ、怖くてできねぇな」と笑う。以前は従業員もいたそうだが、10年ほど前から、すべてを一人でこなすようになり、今では、「一人の方が、あれこれ気にしなくていいし、気楽」とサッパリした様子だ。それでも半信半疑なきたろうさんは、「で、料理は誰がやるの?」と再び。「だから、僕ですって!」とご主人はもう苦笑い。壁に貼られた約100種類ものメニューに、「これを一人で作っちゃうわけ!? すごいよ」と、きたろうさんは驚くばかり。ご主人は、常に店内25席のお客さんを見渡して、飲むペースや料理の進み具合なども全部把握するそうで、きたろうさんは、「すごいね、満席の時に、『遅いよっ!』って怒ってみたいな(笑)」と冗談を言いながら、「でも大将はどんな仕事でもこなせるタイプだね」と感心しきりなのだった。
ひと味違う「手作りコロッケ」に感激!
ここで、次のおすすめ「地鶏レバーの生姜煮」が登場! 大きめに刻んだ生姜がさっぱりとした風味で、レバーとの相性も抜群。「レバーらしさはあるのに、臭みは全くなくて、おいしい!」と絶賛する西島さん。「生姜だけでも飲めるって言われますね」とご主人も自慢の一品だ。
「大将、結婚は?」と聞くと、「結婚してるけど、妻には手伝ってもらってない」とご主人。30歳で結婚した妻の智美さんは、もともと店の常連客。今は税理士事務所で働いている。「嫁さんと一日中一緒に働いて、楽しいわけない。よく夫婦で一生懸命やってます、とか聞くけど、あれ、絶対楽しくないから!」と辛口だ。これには、きたろうさんと西島さんも「いやいや、めちゃめちゃ楽しそうだよ!」と声を揃えて反論。ご主人は、高校生と大学生の息子たちにも店は継がせたくないそうで、「こんな大変な仕事ないから」と、飲食業の大変さを経験してきたからこその思いを明かす。
続いていただくのは、「手作りコロッケ」。アツアツの揚げたてコロッケにハフハフかぶりついて、「ちょっとフレンチっぽい!」ときたろうさん。西島さんも「シチューみたいな味がする。他にはないコロッケ」と感激すると、ご主人は「普通の料理だけど家庭のとはちょっと違うってところが、料理の面白みだ思いますね」。そう聞いて、きたろうさんも「酒場に行けない期間があって、だからこそ、酒場で食べる料理のひと味違うおいしさに気づかされた」としみじみ頷くのだった。
最後は、新鮮な牛モツとたっぷりのニラを使った、「牛のモツ鍋」を。牛モツ、ニラ、キャベツ、もやしなどを醤油仕立てのカツオ出汁で煮込んだ一品に、「にんにくと唐辛子のピリ辛が効いてる。モツがおいしいの!」と西島さんは頬が落ちそう。
ご主人のこだわりは、「休まないこと」。定休日以外は、必ず決まった時間に店を開けて、お客さんを迎え入れる。「酒場とは、非日常の場所。会社や家でも言えないことを、ここで吐露してもらうことが、この仕事の醍醐味だし、やっててよかったと思う瞬間だね」と笑顔がはじけた。