千代田区飯田橋で創業30年
家族経営の人気店で
料理の腕を磨き続ける親子の物語
塩もタレも絶品! 看板メニューの「串焼き」
2020年7月に新駅舎が完成したJR飯田橋駅。今宵、きたろうさんと西島さんが訪れるのは、千代田区飯田橋で創業30年目を迎えた「串焼と酒 みのや」。店を経営するのは、ご主人の池田豊さん(72歳)と女将の銀子さん(72歳)。さらに二代目を継いだ息子・朋弘さん(45歳)とその妻・文恵さん(42歳)の4人家族だ。きたろうさんと西島さんは、さっそく焼酎ハイボールで「今宵に乾杯!」。
まずは焼鳥の「もも」と「つくね」を塩でいただく。鳥取県産「大山(だいせん)鶏」に、「塩だから鶏の味が良く分かる。旨い!」ときたろうさん。西島さんも「肉の旨味と脂の旨味。いい塩梅」と舌つづみ。女将の銀子さんが仕込むつくねも、「空気感のある舌ざわりがいい」とペロリ平らげる。串焼きはすべて、豊さんの担当だそうで、「うちみたいに日向備長炭を使う店はなかなかない。密度が全然違うからね」と、火の持ちが良く火力が保てる九州日向備長炭にこだわる。
「以前は飯田橋で2店舗経営してたんですよ」と教えてくれたのは、二代目主人の朋弘さん。平成3年に父・豊さんが「みのや阿太郎」を創業し、平成9年には2号店「みのや」を開業。平成17年に再開発による立ち退きを機に「みのや」一店舗となった。また、朋弘さんの祖父は、戦前から千代田区九段で料亭「みのや」を経営していたそうで、豊さんは、「戦前は料亭で戦後は駄菓子屋、それから貸本屋、本屋……」と、何やらいろいろと遍歴があるらしい!?
さて、続いては、創業当時から継ぎ足すタレを使った「はつ元」と「鶏レバー」。「レバーのシャクシャクした部分と柔らかい部分、焦げ目、全部旨い!」と西島さん。レバー好きなきたろうさんも大満足で、希少部位の「はつ元」(心臓の根元で血管がつながる部分)も、「脂がのってる〜」と、ふたりしてチューハイをグビグビ!
豊さんは、大学卒業後、日本橋の洋菓子店に勤務し、30歳の時、実家を改装して喫茶店を開業した。10年以上続けたが、昼夜営業の多忙さに疲れ、「夜だけの営業で済むだろう」と、酒場開業を決意。都内の大衆酒場で半年間修業し、43歳で「みのや阿太郎」を開業した。「実際、労働時間は短くなりました?」と尋ねる西島さんに、「いやぁ、長い……。今日も朝5時から仕入れに(笑)」。
二代目が作る「黒毛和牛のたたき」に舌つづみ!
次のおすすめは、朋弘さん考案の「黒毛和牛のたたき」。とろけるような肉質に、「焼鳥屋さんなのに牛も最高!」と大喜びの西島さん。二か月前に父・豊さんと正式に代替わりし、自らの意志で二代目を継いだという朋弘さんは、大学卒業と同時に父親の背中を追い、料理の道へ進んだ。2年間の修業後、24歳で「みのや」に入り、以来、21年間にわたり、父親とともに店を支えている。妻の文恵さんは、義父の豊さんのことを、「まさに江戸っ子っという感じ。怒ると怖い(笑)。でも、間違ったことは絶対言わないので」と、信頼と尊敬の念を寄せる。
さてお次も、朋弘さん考案。カニ入り「手作りさつま揚げ」を! アツアツを頬張って、「おいしい〜。ふわふわっ!」と感激する西島さん。豊さんは、「息子の料理は旨いですよ」と二代目の腕を認めつつ、「ただ、こだわり過ぎて儲けが無くなっちゃう。バランスが難しいんだよ」と物言いたげ。文恵さんも「仕事熱心なんです」とフォローしつつ、「こだわりある熱い者同士がぶつかると……」と苦笑い。西島さんが、「一生懸命だからこそですよね。親子だし、似たところもあるし」と言うと、きたろうさんも「お互いに、絶対負けないって思いが強いんだね」。
と、そこへ、豊さんの妻、銀子さんが登場。53年前、弁当店で働いていた豊さんが、納品先の銀子さんと恋に落ち、7年の交際後、結婚。以来、銀子さんは、妻として、女将として、ご主人を支えている。「主人は職人なので、気は難しいですが、筋は通ってると思います」。ご主人が、洋菓子店、喫茶店、酒場と仕事の場を変える中でも、「商売で生きていく人だと思ってましたから」と反対することなく信じてきたという銀子さん。文恵さんは「本当に尊敬してます」と素直な気持ちを明かし、「いいね。こんな家族、うらやましい」と感動に浸るきたろうさん。すると、豊さんが、唐突に、「たいやき屋、やりたいんだよね!」と爆弾発言。これには一同あきれ顔で、きたろうさんも、「やめなさい(笑)」と言い放つのだった。
〆は、「親子丼」を。鶏肉とトロトロ玉子の至福の味にうっとりする西島さん。きたろうさんは、「見事だね」と舌つづみを打ちながら、鶏ガラスープをすすって、「あ〜、これは、旨い。旨いなぁ〜」と染みわたる滋味に喉を鳴らす。
最後にいつもの質問を。朋弘さんにとって、「酒場とは、肩の力が抜ける場所。疲れて店に来ても、楽しかったと帰ってもらえれば」。豊さんは、「楽しく語れる場所でありたいね」。旨い酒と料理が疲れを癒してくれる良き店である。