29歳でサラリーマンから転身し
愛する妻と作り上げた人気酒場
鮮度抜群の絶品もつ料理に舌つづみ!
トロ〜リとろける「チーズもつ煮込み」
今宵、きたろうさんと西島さんが訪れたのは、東京都世田谷区経堂で創業9年目を迎えた「もつやき 優貴」。明るく開放的な店内で、ご主人の五十嵐貴さん(43歳)と女将の恵野(あやの)さん(40歳)夫婦がお出迎え。さっそく、焼酎ハイボールで「今宵に乾杯!」した、きたろうさんたち。まずは、店自慢の「もつ焼き」をいただく!
「はらみ」「はつ」「あみれば」の3種類が登場。「あみれば」は、レバーを内臓周りにある網状の脂で包んで焼いてある。「脂があると、甘みと香ばしさが段違い!」と興奮気味の西島さん。「“豚の大トロ”と言うお客さんもいます」とご主人が言うと、きたろうさんが「豚の大トロだね!」とオウム返し(笑)。「もつは鮮度が一番。その日の朝にしめたものを使う」のがご主人のこだわりで、新鮮さが際立つ塩味がおススメとのこと。西島さんも、「はつ」を頬張って、その鮮度にビックリ。「ほんとに臭みがなくて、全然違う!」と感激だ。
ご主人の貴さんは、大学を卒業後、テレビ番組制作会社に就職するが、2年で退職。25歳で厨房機器の会社に転職した。営業マンとして働くうちに、顧客から「もつ焼き屋を一緒にやらないか?」と誘われ、酒場の世界へ。29歳で新宿のもつ煮込み専門店で修業を始めたが、料理経験は全く無く、苦難の連続だったと言う。「最初は、包丁も全く使えなくて……。辛かったですね。料理を作るだけで精一杯。接客なんてとても無理でした」。それでも30歳を目前に、退路を断って邁進したという。
続いての料理は、修業時代に学んだもつ煮込みに、バターを加え、フランスパンとチーズを乗せた、「チーズもつ煮込み」。恵野さん考案のアレンジ料理だ。「白味噌仕立てのトロっとした煮込みスープにチーズが相まって、最高!」と頬が落ちそうな西島さん。「遊び心があるねぇ」ときたろうさんも舌つづみを打つ。
貴さんと恵野さんの出会いは12年前。都内の百貨店に勤務していた恵野さんは、貴さんが修業する店の客だったそうで、「彼女は、どんなことも反対せずに受け入れてくれるんです。それに、僕よりも肝が据わってる(笑)」と貴さん。恵野さんは、「彼はとにかく真面目。一生懸命頑張るところに、そそられます」とニコニコ。
出会いから4年後、修業を終えた貴さんは、35歳で独立するが、恵野さんの支えなしでは開業できなかったという。「若さと勢いで開業しましたが、今思えば、怖くなる」と笑いながら、「店の立ち上げと同時に、同棲を始めたんです。でも、無職の自分は部屋を借りられない。彼女に頼るしかなかった」と頭を掻く。「不安はなかったですよ」と微笑む恵野さんは、開業と同時に店を手伝い、店が軌道に乗り始めた1年後、二人は結婚した。そして、昨年、長女が誕生。現在、恵野さんは子育てをしながら経理業務を担当し、店を支えている。
「豚の脳みその天ぷら」の旨さに驚き!
さて、ここで、「つくピー」登場!? 変わった名前にキョトンとするふたりだが、油で揚げてから炭火で焼いたつくねを生のピーマンと一緒に食べる、人気の一皿だ。つくねの表面のカリカリ感と、練り込んだコリコリ軟骨が、パリパリの生ピーマンとマッチして、旨さ倍増、食べ応えも十分!
続いては、「ぶれんずの天ぷら」を。「気になってたんだよ」と、ワクワクするきたろうさん。“ぶれんず”とは、なんと、豚の脳みそ! なかなか手に入らない希少部位だ。きたろうさんは、「想像より、ものすごくうまい!」と大喜び。西島さんも恐る恐る口に運んで、「えっ、おいしい。えぐみも全くなく、とろとろ〜。知っちゃいけないものを知っちゃった」と目を輝かせる。
ご主人は、6年前、人手不足のため体力の限界を感じ、「もう嫌だ、辞める!」と恵野さんに漏らしたそうだが、「やっとお客さんもついてきたし、もう少し頑張りなよ」と諭され、思いとどまったという。「お客さんもスタッフも、楽しくないと、店は盛り上がらない。スタッフが気持ちよく働ける環境作りにも力を入れるようになった」と、現在は社員4人、アルバイト3人で営業。店長の中川達弥さん(31歳)も、「大将は普段は優しいけど、怒る時はスパッと怒ってくれるので、分かりやすい」と屈託ない笑顔だ。
最後の〆は、「もつ飯」。10種類以上のもつをじっくり煮込んだもつ煮を丼スタイルで食す。「これは、たまらんっ! 甘辛い味付けが、ごはんにぴったり」と西島さん。店長の考案だそうで、「発想がすごい。メニューもみんなで考えてるんだね」ときたろうさんも感心する。
「酒場は、元気になれる場所。今はコロナで満席は厳しいですが、お客さんの賑やかで楽しそうな声に、道行く人が思わず立ち寄りたくなるような店にしていきたい」とご主人。「素晴らしい! 元気の“気”は“貴”だね」と、今夜もゴキゲンなきたろうさんだった。