千葉県松戸市で創業22年
夫婦二人三脚で作り上げた人気酒場
絶品焼き鳥の数々に舌つづみ!
旨さに感激! 「銀皮」に「あぶらつぼ」
きたろうさんと西島さんがやってきたのは、千葉県松戸市。番組では初めて訪れるが、千葉県市川市出身のきたろうさんには馴染みのあるエリアだ。ふたりが向かったのは、創業22年目の「炭火焼鳥 あほうどり」。木のぬくもりを感じる落ち着いた店内で、ご主人の高橋信幸さん(49歳)と妻の麻紀さん(42歳)に迎えられ、さっそく、焼酎ハイボールで「今宵に乾杯!」。
最初のおすすめは、タレでいただく炭火焼き鳥「フォアグラレバー」と「つなぎ」。ご主人が「フォアグラレバー」と呼ぶのは、厳選された新鮮で濃厚な鶏レバー。滑らかな舌触りと食べごたえに、「ほんと、フォアグラみたいだ」と、舌つづみを打つきたろうさん。「つなぎ」は、ハツとレバーをつなぐ希少部位で、串1本に7羽分を使うとか。「プルプルしていて、おいしい。サラっとした甘さのタレが合う〜」とペロリ平らげる西島さんだ。
「あほうどり」という店名は、「覚えやすく親しみのある名前にしたくて」とご主人。「“あほう”、“あほう”って呼ばれてます」と笑う。酒場に入ったきっかけは、「学生時代、友人が働いていた店で焼き鳥のおいしさに目覚めて、自ら志願してお師匠さんに雇ってもらいました」。大学を卒業後、一度は自動車部品メーカーに就職したが、1年で退職。焼き鳥の味が忘れられず、24歳で北千住の焼き鳥店で修業を開始したのだった。そして3年間の修業後、「店は20代のうちに出すべき。若いうちにチャレンジしろ」と、師匠の小林理(さとし)さんに背中を押されて、27歳で「あほうどり」を開業した。小林さんは、開業後も店を訪れ、「伸ちゃんだから大丈夫」と優しい言葉で支えてくれたという。「僕が焼鳥屋をやるきっかけを与えてくれたのも師匠だし、こうやって続けられているのも師匠のおかげ」と、感謝しかないご主人だ。
さて、次は、塩でいただく「銀皮」と「あぶらつぼ」を。聞きなれない部位に興味津々のふたり。銀皮(ぎんがわ)は、砂肝の表面を覆う部位で、あぶらつぼは、尾の付け根にある脂を貯める部位。炭火で表面をカリっと炙った「あぶらつぼ」は、「噛んだら、中身は溶けちゃう〜」と目を丸くする西島さん。きたろうさんは、「銀皮、旨い。噛めば噛むほど!」とすっかり魅了されながら、「塩もこだわってるよね?」。ご主人が、「粗塩を炒って、にがり成分の旨みを引き立ててます」と明かすと、「ね、見事だろ!」と、ドヤ顔だ。
3種類の部位を豪快にオン! 名物「焼とり丼」
ふたりの出会いは24年前。麻紀さんは、伸幸さんが修業する店の3軒隣りの店で働いていて、自然と距離が縮まった。「彼女は忍耐力があって、どんな時でもめげない。そこに惹かれた」と信幸さん。麻紀さんは、「主人は良くも悪くも頑固。昭和のオヤジですね」と微笑む。平成19年にふたりが結婚した当初、店は繁盛しているとは言い難かったそうで、「彼女が来てくれて、良くなったんだねぇ」とニヤニヤするきたろうさんに、照れながら頷くご主人。麻紀さんが出産のためしばらく店に出られなかった時期には、「辞めたい」と思ったこともあったそうで、「妻がいてくれる大切さを知りましたね」。そして、ひとり息子の耕平さん(13歳)に対しては、「自分の好きな道に進んでほしい。お金儲けなんかしなくてもいいから、一生やりたいと思えることを見つけてくれたら」と父親の顔を覗かせるのだった。
ここで、登場したのは、「矢切ネギ焼」。松戸市矢切地区で明治時代から栽培される、肉厚で甘みが強い名産ネギだ。こんがり焼けた立派な矢切ネギに歓声を上げるふたり。「普段は料亭に入るようなネギ。今が一番おいしい時期です」と聞けば、もうたまらない!
「今は、毎日、酒場の仕事が楽しくて、楽しくて!」と充実した表情のご主人。「お客さんからも、楽しさや幸せを分けてもらうし、僕自身が幸せであることで、お客さんにも幸せになってもらえると思っています」。その言葉に、きたろうさんは、「素晴らしい! もう、あほうどりには見えないね(笑)」。
焼き鳥以外にも、「ささみ納豆」、「とりみそ」、「とりスープ」など、おススメメニューが揃うが、最後の〆は、名物「焼とり丼」を! 正肉2本、ねぎま、ハツをタレでじっくり焼き上げ、豪快にごはんの上に。西島さんは、「おいしい、おいしい〜」と目を潤ませ、きたろうさんは、「絶対、焼鳥を味わってくれっていう、頑固さを感じるね」と、堪能し尽くした。
共に働き始めて14年。ご主人は、麻紀さんに、「普段、厳しいことばかり言ってますが、いつも何も言わずついてきてくれて、ありがとう」と、感謝の言葉を。麻紀さんは、「初めて聞きました。これからも、お客さんと一緒に笑って暮らしていきたいですね」と返して、穏やかな空気に包まれた。ご主人にとって、「酒場とは、楽しい場所」。シンプルだが、最高の答えである。