父の背中を追って料理人を志した二代目
創業31年の酒場を人気店に!
こだわりの自家製料理に舌つづみ
自家製味噌で食べる「特上馬刺し」
本日の舞台は、東京都港区御成門(おなりもん)。愛宕神社でお参りをすませた、きたろうさんと西島さんは、今宵の酒場「季節料理 畦道」へ。二代目を継いだご主人の次田(つぎた)光司さん(44歳)が調理場で腕をふるい、母親の民江さんが店を切り盛りしている。さっそく、ふたりは焼酎ハイボールで「今宵に乾杯!」。
最初のおすすめは、「自家製ポテトサラダ」。女将の民江さんが30年間作り続けるポテトサラダに、西島さんは、「ベーコンがゴロゴロ! 酒場のポテトサラダ、おいしいですよね」と、ウキウキ。
31年前に、店を開業したのは、先代ご主人の直忠さん。女将は当初からずっと支え続けてきた。ふたりの出会いは、赤坂にあるナイトクラブだったそうで、民江さんは受付係、直忠さんは従業員として働いていた。「石原裕次郎さんや勝新太郎さんも来られたんですよ」と聞いて、「ナ〜イト♪クラブ〜♪」と歌い出すきたろうさん。キョトンとする西島さんに、「石原裕次郎の歌(二人の世界)なんだよっ!」。
昭和44年に結婚したふたりは、22年後に開業。開業前、ご主人は4年間イタリア料理店で修業したというが、女将は、「最初は不安で反対しました。でも、お友達や知り合いがたくさん来てくれて」と当時を振り返る。現在、直忠さんは、体調を崩して療養中だそうで、二代目を継いだ息子の光司さんが料理全般を任されている。
さて、次のおすすめは、先代の故郷・山梨県直送の「特上馬刺し」。お好みで、ごま油塩、醤油、自家製味噌をつけていただく。馬刺し好きなきたろうさんは、待ちきれない様子でペロリと食べて、「あぁ、旨いっ」。西島さんは馬刺しと味噌の組み合わせに、「意外だけど合う! おいしい〜」とご満悦だ。味噌まで手作りするのは、「酒場では家で食べられないものを出したい」と胸を張る光司さん。きたろうさんは、「“自家製”って言いたいからでしょ(笑)」。
店のある場所は、もともと女将が生まれ育った実家だそうで、明治初期創業の染物店を、酒場開業にあたって改装した。開業当時、15歳だった光司さんは、忙しく働く両親を見て育ち、「いつかは助けたい」という思いで料理人の道を歩んできた。「ほんとは、高校を卒業してすぐに働きたくなかっただけ」と言いつつも、調理専門学校を卒業後は、京懐石料理店など様々な店で修業を積んだ。「いろんな店の“いいとこ取り”」と言うとおり、「アスパラベーコンチーズ」、「鮭と木野子のホイル蒸し」、「銀ムツ豆腐煮付け」など、おススメメニューも幅広い。
これぞプロの味! 「ふわふわだし巻き玉子」
ここで、二代目主人の腕が光る「ふわふわだし巻き玉子」が登場! 「玉子の方から食べてくれって言ってくる!」と興奮気味のきたろうさん。西島さんは、したたる出汁を逃すまいと口に運んで、「薄味だけど、しっかり出汁が効いてる。これぞプロの味」と喉を鳴らす。
7年ほど前に、「店の売り上げが落ちてるのを知って、僕が両親の助けになればと」と、店に入った光司さん。女将は、「助かりました。頼もしかった」と言うが、変化を嫌がる父親とはケンカばかりだったとか。それでも、「ある時、親父が、僕の料理を食べて、『光司、腕を上げたな』って言ったんです。それからですね。あまり口出しされなくなったのは」と、うれしそうな笑顔を見せる光司さん。きたろうさんは、「『俺の負けだ』って言ってたんだね」と納得するのだった。
次は、季節の食材で作る「自家製さつま揚げ」を。桜海老が入った、ほんのりピンク色のふわふわさつま揚げに大満足のきたろうさん。西島さんは、「香りがよくて、揚げたて。最高〜」と夢見心地だ。
ほんわりした雰囲気の女将について、「何でも許してくれる」と言う光司さん。見た目どおりの優しい母だったようで、民江さん自身も、「ほとんど怒ったことないんです。もっと厳しくしないといけないのかな……」。きたろうさんは、「いやいや、光司はこんな立派に育ったんだから、それでよかったんだよ!」。
そして、〆には、「文化サバ塩焼き」を。文化干しとは、セロファンで包み、冷風をあてて作る干物。香ばしく焼けた身に、「サバってこんなにおいしいの!? 脂がのってて味が濃い〜」と絶賛の西島さん。きたろうさんは、言葉が見つからず、「サバちゃん、ありがとね!」。
最後に、光司さんの妻・恵理子さん手作りの「自家製バニラアイスクリーム」をいただいて、もうお腹いっぱい。ごちそうさまでした!
「両親に感謝してます」と言葉にする光司さんに、なぜか「ふふっ」と笑う女将。「笑うとこじゃないでしょ!」と突っ込まれて、「いや、ほんとに思ってんのかしら?」と、どこまでもほんわか天然。光司さんにとって、酒場とは「笑顔で元気になって帰る場所」。女将も、「美味しく食べて、喜びを感じて帰ってほしい」。お客さん思いな親子に癒されて、「やっぱり、酒場はいいなぁ」と、幸せ気分に浸るきたろうさんだった。