品川区上大崎で創業34年
父親からの思わぬ一言で
23歳で開業し人気酒場に!
絶品「春の天ぷら」に舌つづみ!
今宵の舞台は品川区上大崎。実は、JR目黒駅は、目黒区ではなく、ここ品川区上大崎にある。きたろうさんと西島さんは、目黒駅から徒歩数分の「居酒屋 友(とも)」へ。ご主人の仲村実さん(57歳)と妻のたか江さん(57歳)に迎えられ、さっそく、焼酎ハイボールで「今宵に乾杯!」。
まずは、お通しの小鉢が4品! 豚ガツのスモーク、ニラの白和え、海鮮サラダ、山うどのきんぴらと、どれも手間のかかったものばかり。「スタンダードなようで、全部ひとひねりしてる」と感心する西島さん。「これだけでチューハイ2杯はいけちゃうよ」ときたろうさんもゴキゲンだ。
最初のおすすめ料理は、「春の天ぷら」。タラの芽とふきのとうの天ぷらに、「独特の苦味と香りがたまらない〜」と、西島さん。「タラの芽の天ぷらって、なんでこんな旨いんだろ」と、きたろうさんも春の味覚を噛みしめる。
「23歳で開業して、5月で34年」と言うご主人の実さんは、高校卒業後、母の友子さんが目黒区目黒で営んでいた定食屋「友」を手伝い始めた。長野県出身のたか江さんとは、友人の紹介で出会い、21歳で結婚。翌年には長女が誕生した。そんな時、実さんの父・功(たける)さんから、思いもよらない話が……。「いきなり、酒場をやれ!って言われて。店の場所も勝手に決めてきたんです。びっくりしましたよ。魚もさばけないし、何もできないのに。見よう見まねでやるしかなかった」と実さんは振り返る。
きたろうさんは、「親父、酒場のこと分かってないよ!?」と驚きながら、「店名はお母さんの名前? ご主人、マザコンじゃ……?」。すると、たか江さんが、「最初は自分の名前(実)にしたかったんですが、父に反対されて母の店と同じ名前にしたんです」とフォロー。定食屋「友」は3年前に閉店し、友子さんは80歳で亡くなったそうで、きたろうさんは、「『友』を背負ってるんだね」としみじみ。
次は、「大根とシャケの煮物」を。「脂身や皮から出る旨みが、大根にじんわり。お母さんに教わったんですか?」と西島さん。ご主人は、「その頃は酒場をやるなんて思いもよらなかったから、覚える気もなくて。母がよく作っていたのを見よう見まねで作りましたね」。
店を開業した当初は、「自分も若くて、年配の常連さんには、言いたい放題言われました」と実さん。悔しい思いもしたが、今では、新しい料理も、「ぶっつけでお客さんに出して感想を聞いてます」と余裕の笑顔。おススメメニューも、「目黒ウインナー盛り合わせ」、「とりもも焼」、「厚揚げチーズ焼」など、垂涎ものの料理が並ぶ。
大人気「手造りしゅうまい」は“父の味”
「父は、自分が酒場をやりたかったみたいで。でも自分じゃできないから、お前やれ、ってなったんでしょうね」と話すご主人に、「息子のところで飲みたかったのかもね」と、きたろうさん。功さんはたまに飲みに来るそうで、実さんは、「今でもいろいろうるさくて、ケンカになっちゃいますけど(笑)」。
ここで、蒸したての「手造りしゅうまい」が登場! 精肉店を営んでいた父が3年前まで作っていたしゅうまいを、今は実さんが作る。「皮が薄くて、具がいっぱい。たまらん!」と感激する西島さん。「いったん作るのをやめてたんですが、お客さんが、しゅうまい、しゅうまい、と言うもんだから」と復活させたというのも納得だ。
ご主人は、お客さんとのコミュニケーションも心がけ、たか江さんも、「主人は、返しが早くて、おもしろいことを言うので、お客さんも楽しんでくれる」と一目置く。そんなたか江さんに対して実さんは、「文句も言わず、黙ってついてきてくれる」と感謝し、夫婦支え合ってきた。ところで、ご主人の趣味はマラソン。東京マラソンも完走したそうで、調子がいい時のタイムは3時間54分とか! これにはふたりも感心するばかりだ。
さて、続いての料理は、湯引きした大山鶏のある部位をポン酢とレモン、柚子胡椒でさっぱりいただく「大山鶏の珍味」。コリコリの歯応えに、「骨?」と、とぼけながらも、「とさかでしょ!」ときたろうさん、見事正解!
「明日があるさ! で、あっという間に30年以上」と実さん。長く続ける秘訣は、「夫婦喧嘩しないこと。喧嘩すると、お客さんが妻の味方になって、余計頭にくるからさ。妻も相当我慢してるとは思いますが」と言うと、たか江さんは、迷わず、「はい! 我慢してます」。
最後の〆には、「すいとん」を。鶏つくねや鶏もも肉、長ネギ、ゆずなどを具材に、白だしで味付け。「だしが利いてるねぇ」、「ゆずの風味もいい〜」と、ふたりの箸は止まらない。
33年前、父親の思わぬ一言で酒場を開業することになったご主人。人気酒場となった今、83歳の父親に伝えたいのは、「酒場をやらせてもらって、ありがとう」という感謝の思い。実さんにとって酒場とは、「健康で笑顔の人が毎日飲みに来る場所」。きたろうさんは、「そうだね。大将が笑顔を作ってくれるね!」と、今宵もいい気分!