修業先で出会い苦楽を共にした3人が
上石神井で愛される酒場を目指して開業
絶品アイデア料理の数々に舌つづみ!
たれが自慢の炭火焼き鳥
東京都練馬区上石神井(かみしゃくじい)にやってきた、きたろうさんと西島さん。立ち寄った石神井公園を後に、さっそく今宵の酒場「月木乃(つきの)」へ向かう。威勢よく迎えてくれたのは、厨房で腕を振るう“親方”の鈴木慶乃輔さん(48歳)と、接客と焼き場を担当する店長の月永(つきなが)直文さん(38歳)。きたろうさんたちは、今日も焼酎ハイボールで「今宵に乾杯!」。
店名の由来は、「店を立ち上げた3人の名前から1文字ずつ取って」と店長の月永さん。月永さんの「月」、オーナー・佐々木貴志さん(40歳)の「木」、そして親方・慶乃輔さんの「乃」で、「月木乃」。現在、仙台で暮らすオーナーの佐々木さんからは、親方と店長が店を一任されている。
さて、最初のおすすめは、「焼き鳥」。自慢のたれで焼き上げる、肝、つくね、ねぎまの3種。西島さんは、「どれも大ぶりで、つくねフワフワ。甘めのたれがよく合う!」と絶賛。親方の鈴木さんは、「焼き鳥は、“たれ仕事”。たれで店の特色を出したい」と、ザラメを加えた甘みの強いたれにこだわる。
20歳の時から、会社員と酒場のアルバイトを掛け持ちしていた鈴木さん。「働いていた西東京市・東伏見の酒場が、地元に密着したアットホームな店で、その楽しさに魅了された」と、25歳で会社を辞め、料理人に。都内の和食料理店などで5年間修業を積み、料理長として東伏見の酒場に戻った。そこで出会ったのが、店の同僚の月永さんと佐々木さんだった。「めちゃめちゃ楽しかったよな!」と、うれしそうに顔を見合わせる親方と店長。「地元にすごく馴染んでいて、街を歩けば常連さんに出会う。コミュニティが広がっていくのも楽しかった」と話す親方に、「しゃべりも上手いねぇ」と、きたろうさん。親方は、明るく高らかに笑い、その個性的な笑い声に、「めちゃ明るい! 虜になる」と、西島さんも、つられて笑いだす!
ここで、そんな思い出の店の名物「塩もつ煮」が登場! テッポウと白モツを煮込み、生キャベツを添えたパイタンスープ風のもつ煮に、「ほんとにもつ煮!?」と驚くきたろうさん。西島さんはスープをすすって、「おぉ〜」と喉を鳴らし、「とろみがある出汁がいい。シンプルだけどものすごくおいしい!」。
絶妙なレア感が最高! アジフライに悶絶
3人が出会った店は平成28年に閉店し、一度は別々に働き始めたが、令和元年、再び集まり、「月木乃」を開業した。「都心だと、どうしてもお客さんとの交流が薄くなってしまう。お客さんとの距離が近く、地元に根付いた店にしたくて、いろんな街に足を運び、2年かけてやっと見つけた」と、上石神井駅に近いこの場所を選んだ。
続いては、親方が修業時代に考案した「和風レバーペースト」を。新鮮なレバーを醤油や砂糖で煮詰めてから、クリームチーズを加えてペースト状にする。西島さんは、バゲットにたっぷりつけて頬張り、満面の笑み!
創業してまだ2年目。「都心と違い、“行きつけの店”がある方も多くて」と親方。開業から4か月後には緊急事態宣言も発出され、厳しい状況だったが、「前の店のお客さんたちに、ものすごく助けられました。僕らは、お客さんの支えで店をやらせてもらってたんだ、と身に沁みます。これから、この街にしっかり根づいていきたい」と前を向く。
次の料理も、親方のアイデアレシピ、「レアアジフライ」。刺身で食べられる新鮮なアジを軽く揚げて、余熱で火を通す。「しっとりしたレア感が残って、出汁がブワーっと出てくる!」と大興奮の西島さん。きたろうさんも「発想がすごい」と感心しきりだ。
「焼き鳥以外のメニューは、僕の気分で(笑)」と親方。自分が仕事帰りに何を食べたいか想像して作るそうで、刺身や天ぷらはもちろん、「イチジクバター」、「菜の花と寒〆鯖のぬた」、「おつまみいか肝焼きそば」など多彩なメニューが並ぶ。
最後の〆には、「鶏塩パイタン麺」を! 「コクのあるとろとろスープが平打ち麺によく絡む〜」と、たまらない様子の西島さん。鶏ガラと鶏足を約8時間煮込み、さらにフライパンで加熱して乳化させるとか。「これは、ラーメン屋できるよ!」と絶賛するきたろうさんに、「ラーメン屋、やってました!」と、親方もドヤ顔!?
店長は、「お客さんとの他愛のない会話が一番楽しい。僕たちと会話しに来ていただいたというのが、うれしいですよね」と話し、「酒場とは、出会いの場。どこへ派生していくのか、可能性は無限大です」と目を輝かせる。きたろうさんも、「だから、お客さんも、勇気をもって新しい店に入って来てほしいよね!」。
親方は、「和気あいあいと肩寄せ合って飲める日が早く戻ってほしい」と願いながら、「酒場は、1日の疲れを下ろす場所。楽しいお酒も、つらいお酒もあるけど、それをいったん置いて、ゆっくりできる場所でありたい」。すると、きたろうさんが、「それで、酒場でケンカして、疲れを持って帰っちゃう(笑)」と冗談を言って、親方の高らかな笑い声とみんなの笑い声が響き合った。