海の幸調布市柴崎で創業25年
おしどり夫婦が営む家庭的酒場
日本と韓国の絶品料理に舌つづみ!
「だし巻き卵」にお酒が進む!
今宵の舞台は東京都調布市柴崎。落ち着いた街で、きたろうさんと西島さんが訪れたのは、平成9年創業の「はちきん」。店を切り盛りするのは、ご主人の柴田誠さん(74歳)と韓国ソウル出身の女将・美京(みきょん)さん(58歳)だ。若々しい女将に、きたろうさんが思わず「娘さん?」と聞くと、「16歳離れた夫婦です」! きたろうさんたちは、「馴れ初めをゆっくり聞きたいね」と、まずは、焼酎ハイボールで「今宵に乾杯!」。
最初のおすすめは、「だし巻き卵」。「甘さ控えめで、だしがキリっと利いてる」と舌つづみを打つ西島さん。「これはお酒に合うねぇ」と、きたろうさんも、チューハイをゴクゴク。
「静かでのんびりした街の雰囲気が気に入って」と、柴崎で開業して25年。店名の「はちきん」は、「高知県の方言で、“男勝りな強い女の人”っていう意味。私のコトね!」と美京さんは笑う。そして、「日本語うまいねぇ」と感心するきたろうさんに、「私、口から生まれたみたい」!
次にいただくのは、女将が母から教わり、手作りする「自家製キムチ」。唐辛子にあみえび塩辛を加えて漬けたキムチは、「辛いけど、さっぱり爽やか」と西島さん。きたろうさんは、「これが家庭の味か〜。素晴らしい」と感動だ。
「最近は、ママが作る料理を増やしてます。私はもう年だから、お客さんにお酒を運んだり、一杯飲んだりしてるだけ。ママに頼り切ってますよ」とご主人。店のメニューには、「ゲランチム(韓国風蒸し卵)」、「はんぺん梅しそ揚げ」、「長芋磯部揚げ」など、韓国と日本の様々な料理が並ぶ。開業当初は、料理人を雇っていたが、お客さんが全然入らなかったそうで、「もうダメだって、ママに相談したら、『二人でやろう』って言ってくれて」。専業主婦だった美京さんが女将として店に立ち始めると、持ち前の明るさが評判となり、たちまち人気店となったのだ。
「私は、自分の明るい性格で、お父さんを支えてあげようと思ってました」と頼もしい美京さん。ご主人が「女房がいなかったら、つぶれてましたね」と感謝すると、「主人は私のことがすっごく好きで、私より先に死ねないって、いつも言ってます」と、のろけだして、きたろうさんは、「もういいよ〜(笑)。次いこう、次!」。
ここで登場したのが、「長芋トロロ鉄板焼き」。見た目はグラタンのようだが、口に入れると、「かつお節が利いて、旨いっ」ときたろうさん。海鮮やねぎ、いりごまなどが入ったトロロにマヨネーズをかけて焼き、仕上げにかつお節をかける。「具だくさんで、マヨとの相性も抜群!」と西島さんも感激だ。
〆には絶品「サムギョプサル」を!
中学卒業後、寿司屋で働き、料理を身につけたというご主人。20歳からは印刷会社に勤め始め、37年前、出張で訪れたソウルで美京さんと出会った。1年後には結婚し、美京さんは来日。二人の子宝にも恵まれた。「お父さんはモテないし、格好良くないけど、笑顔が明るい。この人なら一緒に歩んでいけると思ったの。人間はハートですよ(笑)」と美京さん。きたろうさんは、「俺から見れば、二人とも美男美女だよ」と言って、仲睦まじい夫婦に感心するばかり。
ご主人が49歳で酒場を開業したのには理由があるそうで、「48歳の時、胃がんになって。告知されなかったんですが、ママの悲しみ方が普通じゃなかった」。美京さんは、担当医から話を聞き、その場で泣き崩れてしまったそうで、「泣き声が、天まで届いたんです。涙は無駄じゃなかった」と振り返る。48歳で死をも覚悟したご主人。病は手術によって完治したが、「私がいなくても、家族が安心して暮らしていけるように」と、愛する家族の財産として、開業を決めたのだった。
さて、ここで次のおすすめ「チーズチヂミ」が登場! チヂミにチーズをのせてオーブンで焼き上げたピザのような一皿に、「チーズたっぷりで厚みがすごい」と目を輝かせる西島さん。ピリっと辛い自家製たれを少し垂らせば、もう、たまらない!
「気楽に入れるのがウチの魅力」と言うご主人。美京さんは、「穏やかな主人と明るい私がしゃべるのを、お客さんは楽しいと言ってくれる。家庭のぬくもりを感じに来てくれるんですね。それで、ちょっと一杯が二杯に、二杯が三杯に……(笑)」。ご主人も、「儲からなくても、こうやってお客さんと話して、一杯飲めるだけで、十分」と満たされた笑顔だ。
最後の〆は、「サムギョプサル」を。レタスやえごまの葉で、豚肉や薬味を包んで食べる韓国料理だ。「ぜひ、一口で」とご主人に薦められ、パクリといった西島さん。「おいしい〜、お肉にもしっかり味がついてるし、コチュジャンと塩辛の旨みがいい!」と大満足。
酒場とは「癒される場所」とご主人。美京さんも、「お客さんを明るく迎えて、リラックスさせるのが私の役割ですね」。きたろうさんは、「ママ、プロになったね〜」と感心しながら、おしどり夫婦の温かさにすっかり癒されるのだった。