杉並区阿佐ヶ谷で創業9年目
デザイナーから転身した店主が作る
味も見た目もスゴイ絶品料理の数々!
11種類の魚介がてんこ盛り! 名物「痛風DX」
今宵の舞台は酒場激戦区・東京都杉並区阿佐ヶ谷。きたろうさんと西島さんは、JR阿佐ヶ谷駅から阿佐ヶ谷パールセンター商店街を抜けて、細い路地へ。「いい雰囲気〜」とワクワクしながら到着したのは、「やきとん・地酒 こたろう」だ。さっそく、店名通りのご主人、田中虎太郎さん(48歳)に焼酎ハイボールを注文して、「今宵に乾杯!」。まずは最初のおすすめ「やきとん」をいただく。
特製味噌ダレでこんがり焼いた「バラ」と「かしら」に、「チューハイが進みそう」と早くもテンションが上がる西島さん。「バラはいい感じに脂たっぷり。かしらも柔らかくておいしい!」と感激。味噌のいい香りと豚肉のジューシーな味わいに、きたろうさんも大満足だ。
ご主人は、高校卒業後、CMやミュージックビデオのセットデザインを手掛ける会社へ就職したが、39歳の時、自身の才能に限界を感じて転職を決意。酒場の世界へ飛び込み、やきとん店で修業を始めた。飲食業は全くの未経験だったが、1年間で独立することを目指し、目標通り1年後、自分の店を開業した。「初めは、成功するより、好きなことを自由にやりたくて。その環境があればよかった」と言うご主人に、きたろうさんは、「クリエイター気質だね」とニヤリ。
次のおすすめは、「痛風DX」! 「なに!? そのサディスティックなメニュー」と笑うふたりの前には、エビ、カニ、イクラ、マグロにサザエ、明太子などがこれでもかと盛られた一皿が! きたろうさんは、「もう美術作品。絵画を見てるよう」と興奮しながら、立派な赤エビにかぶりついて、「贅沢だなぁ。新鮮で旨い!」と舌つづみ。西島さんは「これは写真撮りたくなる! でも見た目だけじゃなく、どれも本当においしい」と目がキラキラ。ご主人は、「やきとんの店なのに、お客様のリクエストに応えるうちに、魚介系に力が入っちゃって(笑)」と頭を掻きながら、「遊び心だけで、利益度外視。原価ぎりぎり」と困り顔だ。
「ところで、店の前の路地、いいね」ときたろうさん。ご主人は、「開業当初は店もまばらで真っ暗。マンションに挟まれた“地獄谷”と呼ばれてました」と言うが、開業後は通行人が増え、徐々に店も増えたそうで、「すごい! 地獄谷を開拓したんだ」と、西島さんは感心しきり。
〆は濃厚魚介スープの「こたラーメン」
実は、ご主人の父・龍之介さん(享年73)も居酒屋を営んでいたという。「でも、父は、僕が店を継ぐのはずっと反対で、結局、一緒に仕事することはなかった。それでも僕が開業すると、店に来てくれて、随分褒めてくれましたね。今考えると、親父を頼るな、自分の力でやれ、ってことだったのかな」としみじみ。
続いては、「ずわい蟹のクリームコロッケ」を。ずわい蟹を詰め込んだコロッケの上に、さらにほぐし身をたっぷりとのせた一品に、「豪快!」と目を見張るきたろうさん。西島さんは、「ほぐし身に気を取られるけど、カニクリームもちゃんとおいしい!」と絶賛だ。ご主人は、「お客さんの驚く顔を見るのが好きなんです。そのリアクションが欲しくて、盛り付けも工夫します」と愉快に笑う。
デザイナーの才能はなかったというご主人だが、毎日メニューを手書きするなど、培ったスキルは今も活かされている。インスタグラムも7年前に開設し、おすすめ料理を中心に自ら撮影して毎日投稿。写真の腕前も上がり、フォロワー数は約3万にも! 「“いいね!”に対して、2割くらいのお客さんが足を運んでくれます。何もないところから作り上げるのは、得意中の得意。デザイナー時代とやってることは結局同じなのかも」と言い、「もつ煮」や「ポテ玉(明太いくら蟹全部のせ)」、「鬼盛牡蠣バター」など、おいしく楽しいおススメ料理は他にもいろいろ!
さて、ここで登場したのは、「金目鯛兜煮付」。迫力ある大きな兜に圧倒されながら、「よく味の染みた身がゴロゴロ。おいしい〜」と目を細める西島さん。ご主人は、料理の幅を広げるために、他の店に食べに行ってカウンターから厨房を観察したり、直接お店の人に質問したりもするそうで、「こたろう」の従業員にも、自分が知らないことは、素直に教えを乞うのだとか。店に入って4年目の従業員・石飛(いしとび)七奈子さん(32歳)は、「大将とは仲良し! ケンカもしますが、すぐ仲直りする」と楽しそうに話し、ご主人は、「ケンカというより、僕が怒られてる……(笑)」。
最後の〆は、「こたラーメン」を。カニの殻や魚のアラを煮込んだ濃厚な魚介スープを活かすため、具材はネギのみ。「モリモリ料理の後は究極のシンプル!」と感心するふたり。スープをすすって、「すごい蟹の風味! 一生、浴びていたい〜」と味わい尽くす。
酒場とは「家族を連れていきたいと思う場所」と言うご主人と、「全部忘れられる場所かな。嫌なことも、悲しいことも」と言う石飛さん。きたろうさんは「彼女に方が哲学的」と軍配を上げて、「さすがです」と頭が上がらないご主人であった。