BS-TBS「〜癒・笑・涙・夢〜夕焼け酒場」 毎週土曜よる6:00〜6:30 BS-TBS 2015/1/17放送 #35 味とめ

店と客と子供を守るために働いた波瀾万丈の辛い日々も今は昔……そんな女将だからこそ出せる味ともてなし
雑然とした店と明るい笑顔の女将

世田谷通りと国道246号線が交わる三軒茶屋。ここには東急田園都市線と東急世田谷線の2つの駅があり、その間を結ぶのがすずらん通り商店街だ。その名のとおり、小さな店がすずらんの花のように連なるこのエリアで、長く愛されている酒場がある。

「うわっ、雑多だ!」というのがきたろうさんの第一声。壁は色とりどり、大きさもまちまちな品書きで埋め尽くされ、テーブルにはお客さん用の皿や椀が積み上がり、カウンターでは酒瓶がお客さんのスペースを奪うように並んでいる。しかしその雰囲気もまた、酒場としての“味”となっていて居心地がいい。そして何より、店を切り盛りする女将・辻教子さんの笑顔が気持ちを和やかにしてくれる。早速、焼酎ハイボールで乾杯し、最初のオススメ料理「いわしの重ね刺」をいただく事に。調理場で腕を振るうのは、女将の息子で二代目主人の浩さん。女将さんが「どこもやってないと思います」と胸を張るこの一皿は、たっぷりの大根の細切りが付いたいわしの刺身で、白だし昆布醤油をかけて食べる。「これはイワシが好きじゃない人も食べられるね」と、きたろうさん。海鮮サラダのように食べられるところがウケ、この店の大ヒットメニューとなっているのも納得だ。

2品めは中高年の人には懐かしい、くじらの立田揚げ。「さて(この立田揚げは)固いか?柔らかいか?」と、女将さんの自信ありげな顔を見て、「今や高級だけど、昔は学校給食に出てたものだからね。でも女将のこの感じだと柔らかい?」とは、きたろうさんのご明察。刺身にも使えるくじら肉を使った立田揚げは、驚くほど柔らかくジューシーだ。「これ本当にくじらですか? ショウガの効いた、しっかりした味付けがいいですねぇ」と、西島さんも満足の様子だ。

メニューの事だけ考えてる

「味とめ」は昭和43年に、先代の主人とその母親が始めた店だ。先代の主人と女将は、お見合いで知り合い半年後に結婚。「41回目のお見合いで私に当たったと言ってました。なんでも、お姑さんが決めるらしくって(笑)」。しかし幸せな夫婦生活は、厳格なお姑さんを前に崩れ去る。「主人はお金が嫌いな人でね、お嫁に来た時は、実印も一冊の通帳も無い。全部おばあちゃん任せ。おばあちゃんが売り上げを全部持っていって、お給料もなし。必要な時だけタバコ銭とか風呂代を貰うような生活です。結婚当時、糠みそ漬けを出したら“おしろい臭い”って叱られて、それから私は冠婚葬祭の時しかお化粧をしません。お産の時は、退院した日から店に呼び出されましたよ。その日から働きましたね(笑)」。姑さんは、界隈でも厳しい人として知られていたと言う。「大変なとこに嫁に来ちゃったね。でも旦那もだらしないねぇ」と、きたろうさんが言うと「だからお酒が好きでねぇ、陽気な人でしたけど」。そんな先代の主人が18年前に亡くなり、跡を継いだのが息子の浩さん。「どんな女将ですか?」と西島さんが訊くと「お客さんの事と、メニューの事しか考えてない。知らないところでメニューを作って品書きをペタペタと貼ってねぇ」。そうして今やメニュー数は400を超えるほどに。「でもまぁ、ほとんど女将の人気で店をやってるんで、90%以上は女将の感性のおかげです」と謙遜する。

最後にこれだけは食べて帰って欲しいというメニューをお願いすると「寒い季節になってきましたし、あんこうがおいしくなって……」とあんこう鍋が登場! 初めて食べるという西島さんは「おぉ〜、こんなにプルプルなんですか? コラーゲンの塊みたい。プルンプルンですよ!」と感激。あんこうを捌く二代目の腕も見事だが、先代から受け継いだという自家製のポン酢がまた美味い。「秘伝という程のものじゃないですけど」と二代目は言うが、醤油やみりん、お酒を独自に配合したポン酢は、繊細で濃厚なあんこうの味を見事に引き立たせている。

大変だった若き日の苦労も、今となっては「凄いおばあちゃんだったなぁって思いますよ、尊敬します」という女将。その言葉には様々な思いが含まれているのだろうが、「人生に悔いは無い」と言い切るその表情には、一片の曇りも無い。そんな女将が見せる笑顔を見たいがために、お客さんは今日も味とめへと向かうのかもしれない。

味とめの流儀
その壱

大根の細切りとあわせて、サラダ感覚でいただく「いわしの重ね刺」は600円(税別)。
その弐

給食などで食べ慣れた世代の人には、一般に“固い”というイメージの「くじらの立田揚げ」だが、味とめのそれは驚くほど柔らかい。890円(税別)。
その参

築地で仕入れた新鮮な素材を使った「あんこう鍋(小鍋仕立て)」は1,250円(税別)。先代から受け継いだ自家製ポン酢も含め「味とめ」ならではの名物料理となっている。
その四

お店を長く続ける秘訣を訊かれた女将の言葉。女将の丁寧な接客は、この思いから生まれたものだ。
きたろうさんから、味とめへ贈る「愛の叫び」 味もお肌も元気が一番  ———きたろう
「味とめ」
住所
電話
営業時間

定休日
東京都世田谷区太子堂4−23−7
03-3412-9973
平日9:30〜24:00
土曜、日曜、祝日14:30〜24:00
月2回 月曜日 ※都合により変更あり
  • ※ 掲載情報は番組放送時の内容となります。

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