台東区三ノ輪で創業16年
洋食の名店で腕を磨いたご主人が作る
イタリアン出身店主の居酒屋料理に舌鼓
こだわりの大山鶏を焼鳥&燻製で!
今宵の舞台は東京都台東区三ノ輪(みのわ)。きたろうさんと西島さんがやってきたのは、東京メトロ日比谷線の三ノ輪駅から路地を入った落ち着いたエリアにある「鶏料理 弁天 総本店」。ご主人の宮地寛(みやじ ひろし)さん(65歳)が切り盛りする温かい雰囲気の店内で、ふたりは、さっそく焼酎ハイボールで「今宵に乾杯!」
店名の由来について、ご主人は、「周辺に下谷(したや)七福神(鶯谷駅、入谷駅、三ノ輪駅を結ぶ巡礼ルート)があって、浅草七福神や谷中七福神も近いので」と説明しながら、まずは、最初のおすすめ「焼鳥の盛り合わせ」(もも、白レバー、ささみ)を出してくれた。「一串のボリュームがすごい!」と驚く西島さんは、レバーにかぶりついて、「中がふわふわっ」と大興奮! ご主人によると、「これくらいのほうが、炭火でふんわり焼ける」そうで、女性でも食べやすいように串外し用のフォークも添えている。「串から外して食べると、また質感が違っておいしいんだぜ」と、きたろうさんに勧められ、西島さんも「確かに違うかも。おいしい〜」と止まらない。使用するのは、ご主人こだわりの大山鶏(鳥取県産)。さらりとした上質な脂と、ジューシーでまろやかなコクが特徴だ。
続いての「燻製の盛り合わせ」(皮、ぼんじり、ささみ、白レバー、砂肝)も大山鶏を使った自慢の一品。「これは旨い。焼鳥の後に燻製も! 贅沢だね」と、心掴まれたきたろうさん。ご主人も、「部位が違うと燻製の味も全部変わってくる。いろいろ楽しめるでしょ」と胸を張る。燻製の風味が主張し過ぎないように、フルーティーでやわらかい香りのりんごチップを使うのもこだわりだ。
調理師専門学校では、「中華包丁に憧れて、中華料理を専攻した」というご主人は、卒業後、「背の高いコック帽がかっこよく見えて(笑)」と洋食の道へ。銀座の有名老舗ステーキ店『スエヒロ』に就職した。「当時、鉄板ではなく炭でステーキを焼く店は珍しくて、そこで炭の扱いを覚えましたね」。
そんな洋食経験を活かした「里芋のチーズトリュフ」が次の料理。茹でた里芋にチーズパウダーを絡ませた一品は、コロコロした見た目と食感がおもしろい。「しっとりした里芋とチーズが抜群に合う!」と意外な組み合わせを楽しむふたりだが、「で、トリュフはどこに入ってんの?」と聞くきたろうさんに、「入ってない! 形が、です」と総ツッコミ!
大山鶏の贅沢なすき焼きに舌つづみ!
ご主人は、ステーキ店で修業しながら、簿記学校に通い、昭和62年に31歳で独立。自分のステーキ店を開業した。しかし、7年後、バブル崩壊で閉店を余儀なくされ、38歳で再び料理修業の道へ。酒場の世界に足を踏み入れたのは45歳の時だった。「丸の内の『東京會舘』で働いていたんですが、そば居酒屋の『そじ坊』にスカウトされたんです。そこで、そばと焼鳥を融合した店を作ったのが、酒場に入るきっかけでした」。
ここで、「豪華鶏すき」が登場! すき焼き鍋を運んできてくれた従業員の岡戸尊子さんは、「大将はこだわりが強いけど、従業員のことをすごく考えてくれて優しい」と話し、「大将を尊敬してる?」と聞かれて、「……そうですね(笑)」と絶妙な間で笑わせる。いい具合に煮立ってきた鍋には、大山鶏のレバーや砂肝など5種類の部位と野菜がたっぷり! 名古屋コーチンの卵を絡めれば、「砂肝の食感と割り下、卵、めちゃくちゃ合う〜」と絶賛の西島さん。きたろうさんも「鶏のフルコースだね」と感心しきりだ。「鶏は淡泊なので、料理でいろいろ化けてくれる。だから鶏尽くしができるんです」とご主人は話し、「むね肉と野菜のせいろ蒸し」や「自家製鶏チャーシュー」、玉ねぎと名古屋コーチンの卵黄を使った「オニタマ」など、ジャンルを超えたオススメメニューも取り揃えている。
とにかく料理好きで、自らのステーキ店廃業後も楽しみながら料理を学び続けたご主人は、50歳で再び独立。「弁天 総本店」を開業した。「『東京會舘』を辞める時、私と一緒に『そじ坊』についてきた修業仲間がいて。その子たちも働けるように、という思いもあり、店を持ちました。ここは表通りには面してませんが、どこにあろうとおいしければお客さんは来てくれる。そんな自信もありました。浅草に2号店も出したんですよ。今はここ“総本店”だけですが(笑)」。
最後の〆は、「大人のオムライス」。“大人”の理由は、とろとろ卵(名古屋コーチン)の下の燻製ムネ肉入りバターライス。なんと、焼鳥のタレとブラックペッパーで味付けしているのだ。西島さんは、「食べる速度を落とすのに精いっぱい」と、もう止まらない。
デザートには、名古屋コーチンの卵を使った自家製の壺焼きプリンもいただいて、まさに鶏のフルコースを堪能したふたり。「酒場とは、街のダイニングキッチン。ジャンル問わず、何でもお作りしますよ!」と、かっこよく締めくくるご主人に、惚れ惚れだ。