文京区湯島で創業10年
父娘二人三脚で作り上げた人気酒場
珍しい絶品魚介料理に舌つづみ!
高級珍味の「ふじつぼ」に感激!
今回は東京都文京区湯島にやってきた、きたろうさんと西島さん。さっそく向かった今宵の酒場は、湯島天神すぐそばの「和食 斉とう」だ。店の入り口へとつながる螺旋階段を2階に上がると、ご主人の斉藤昇(のぼる)さん(59歳)と娘の麻里さん(38歳)に迎えられ、まずは焼酎ハイボールで「今宵に乾杯!」。
最初のおすすめは「お刺身5点盛り」。本マグロ、カンパチ、タコ、ホッキ貝、〆サバをいただく。朝〆の天然カンパチは、「コリコリした歯応えで旨い!」ときたろうさん。海苔で巻いたマグロの中落ちは、「食べやすいし、海苔の香りがいい〜」と西島さんも絶賛だ。
父娘で店を営んで10年。「毎日ケンカしながら」と笑う娘の麻里さんに、「娘さん強そうだけど、どっちが勝つ?」と、きたろうさん。「お互いに沸々したままですね(笑)」と言う麻里さんに、ご主人の昇さんも「だからあんまり会話しない。しゃくにさわるから!」。
ご主人は千葉県の高校を卒業後、「遊びすぎて、就職が決まらなくて」と、同級生の父親から紹介された都内の日本料理店に就職した。しかし、もともと料理人になる気はなく、挫折を繰り返したという。「夜はやっぱり遊ぶべきだと思って、寮から何度も脱走しました」。そんな昇さんも、就職して2年後に20歳で結婚。翌年、長女麻里さんが誕生し、家族を養うため本気で料理人になることを決意した。日本料理店で8年間働いた後は、しゃぶしゃぶ店や海鮮居酒屋など4店舗を渡り歩いて料理の腕を磨いた。
次のおすすめは、「ふじつぼ焼き」! 「え、ふじつぼ!? 食べるの?」とビックリする西島さんだが、固い殻の中にあるほんの少しの身を引っぱり出して食べると、「わぁ、おいしい! 蟹みそみたい。止まんない」と、すっかり夢中。きたろうさんも、「こんなに旨いんだ。美味だなぁ」と大感激。食用のふじつぼは、主に青森県陸奥湾で養殖されるそうで、ご主人は、「生きたまま仕入れるけど、値段が高くて」と、まだ動いている実物を見せてくれた。きたろうさんは、「旨いと知ると、ふじつぼがかっこよく見える(笑)」。
出汁が格別! 「ひげたら酒蒸し」
48歳で自分の店を開業したきっかけは、「たまたまこの場所が空いて、計画なく始めました。反対する人もいなかったし」とご主人。麻里さんも「やっちゃえば!」と背中を押したとか。「32歳で離婚して女房に逃げられてるから、娘が手伝うしかない(笑)」と、父娘ふたりでのスタートだった。気さくな雰囲気の麻里さんに、「接客上手そう」と、きたろうさんが言うと、「いえいえ、お客さんとずっとしゃべっちゃうんですよ。オーダー忘れて」と首をすくめる。
魚介の目利きに自信があるご主人は、「朝一番で豊洲市場に行って、良いものを少しでも安く提供できるように、市場中を探しまわる」そうで、麻里さんも、「一度、ついて行ったら、私にはとても無理でした」と尊敬の眼差しだ。値段の安さにお客さんが驚くこともあるというオススメメニューは、「真かき」、「たらこ煮付け」、「自家製ポン酢で食べるつみれ(イワシ)」など、いろいろ!
続いては、「豆アジの唐揚げ」を。身の締まった豆アジを丸ごと揚げ、塩のみで味付け。「カラッと揚がってておいしい。チューハイが進む〜」と西島さんは、もう止まらない!
昼間は会社員として働き、夜は店を手伝う麻里さんだが、「給料は払ってない。手伝うのが当然だから」とご主人。きたろうさんは、「ありえない、ちゃんと払えよ!」とブチ切れ寸前(笑)。それでも麻里さんは、「店は楽しいし、残り物や賄いももらえる」と気にする様子もなく、「父の面倒を見に来てるみたいもの」と笑う。「父は仕事に対してすごく真面目できちんとしてる。子供の頃、よく遊んでくれたのも覚えてます」。そう聞いて、きたろうさんも、「なんか安心したよ」。
ここで、「ひげたらの酒蒸し」が登場! ひげたらは、ヨロイイタチウオという白身の高級魚だそうで、きたろうさんは、「ひげたらなんて初めて。いい出汁が出てるねぇ」と喉を鳴らしながら、「ご主人は人と同じことをやりたくないんだね」と察するのだった。
最後の〆は、「むきそば」を。蕎麦の実をそのまま茹でて表皮を剥がし、かつお出汁をかけていただく。「麺じゃないけど香りはお蕎麦。不思議な感じ!」と西島さん。「面白いものいっぱい食べさせてもらった」ときたろうさんも大満足だ。
「娘がいなかったらやっていけないですね。助かってます」と、ようやく感謝の思いを口にするご主人。麻里さんも表情を緩ませながら、「店を続ける秘訣は、頑張り過ぎないこと」と言う。最後に、「酒場とは?」の質問に、父娘は同時に天井を見上げ、お揃いポーズで考えてから、「仲を深める場所ですね」と麻里さん。続いてご主人は「安くて旨い料理が理想かな」とモゴモゴ……。「それは、理想でしょ!」ときたろうさんに突っ込まれると、麻里さんが、「勉強の場ですね」とすかさず助け船を出すのだった。