酒場激戦区赤坂で創業13年目
まぐろ料理にこだわり
勝負を挑んだ男の物語
驚きの分厚さ! 贅沢な「本まぐろ三昧」
きたろうさんと西島さんがやってきたのは、東京都港区赤坂。酒場激戦区の赤坂で創業13年目を迎える「まぐろダイニング やまと」が今宵の酒場だ。ご主人の篠善昭(しの よしあき)さん(48歳)と妻の沙哉香(さやか)さん(41歳)に出迎えられ、さっそく、ふたりは、焼酎ハイボールで「今宵に乾杯!」。
まずは、「本まぐろ三昧」をいただく。驚くほど分厚く切った、赤身、中トロ、大トロの盛り合わせ。西島さんは、まず大トロを口に運んで、あまりのおいしさに目を見開く。「ほどよい粘りがあって、赤身のおいしさも楽しめるくらいのサシが入った、味わい深い大トロ!」と、息もつかずに絶賛! ご主人も「特に本マグロは、ねっとりとした食感と脂がおいしいので、薄く切るのは逆にもったいない。厚い方がぎっしりと旨みが感じられるんです」と胸を張る。マグロの種類では、本マグロは最も高級で、次にインドマグロ、メバチマグロ、キハダマグロが続くという。ふたりは、赤身、中トロもペロリと食べ尽くし、「すごい食べ応えで、旨みが詰まってる!」と大感激だ。
続いては、自家製タレに漬け込んだ「まぐろの竜田揚げ」を。大きめのサイコロ状に切った本マグロを、高温の油でサッと揚げ、しっとりとした食感を残す。きたろうさんは、「旨いなぁ。塩加減がいい」と舌つづみを打ち、西島さんは「めちゃくちゃチューハイが進む!」とグビグビ。
以前は、飲食業のコンサルティング会社で働いていたご主人。「ここは、もともと経営コンサルタントを担当していた飲食店の一つでした。でも、コンサルティングするうちに、だんだんと思い入れが強くなって。もとの店もまぐろ料理店でしたし、私もまぐろ好きだったので、店を譲り受けて、独立して自分でやってみることにしたんです」。しかし、開業当初は苦労もあったとか。「マグロ屋さんはクセの強い方が多くて(笑)。新参者はなかなか快く受け入れてもらえない。ある時、マグロ卸店に本マグロを発注したら、納品されたのが、どうもインドマグロっぽかった。インドマグロもおいしいですが、やっぱり本マグロの方が高級で味もいい。それをやんわり指摘すると、次からはちゃんと本マグロが届きました。試されてたんでしょうね」と苦笑いする。
「まぐろの炊き込みご飯」は至福の味わい
高校卒業後に群馬県から上京したご主人は、大学時代にフレンチレストランでアルバイトを始め、卒業後、そのまま就職した。しかし、現場の過酷な業務に耐えきれず、27歳でコンサルタント会社へ転職。20店舗を超える様々な飲食店を担当し、幅広い料理の知識を身につけた。「コンサルタントだったからには、自分の店は絶対潰せない。そんなプレッシャーがありました。でも、実際やってみると、ものすごく大変。コンサルタント時代はずいぶん厳しいことを言ってたなと、今となっては謝りたいくらい」と笑いながら、「ただ、『他人の店でできない人は、自分の店でも絶対できない』という考えは、ずっと変わりません。人の店で怠けていたら、独立しても絶対うまくいかない」と断言するご主人に、「名言いただきました!」と大きく頷くきたろうさんたち。
次のおすすめは、「自家製こんにゃく」。群馬県出身のご主人が昔から食べていたという自家製こんにゃくは、にがりをほとんど使わず作る。「透明感があって、食感も市販のものとはちょっと違う。味噌もおいしい!」と西島さん。田楽味噌も群馬の郷土料理でよく使う味噌の味をイメージして手作りするそうで、ご主人の様々な料理経験を活かしたおススメメニューは、「まぐろとアボカドのシーザーサラダ」、「だし巻き玉子」、「干し柿クリームチーズ」など、他にもいろいろ!開業当初は、プレッシャーを感じていたご主人だが、8年前から妻の沙哉香さんに店を手伝ってもらうようになり、気持ちが楽になったと言う。沙哉香さんは、「最初は全然乗り気じゃなかったのですが、今はどっぷり。お客さんも増えて楽しい」としっかり夫を支えている。ご主人いわく、「妻は、『とりあえずやってみればいいじゃん!』と背中を押してくれる。開業後はリーマンショックや震災で大変な時期もありましたが、妻が一緒なら大丈夫と思えるんです」。
ここで、「まぐろのカマ焼き」が登場! 迫力の大きさに圧倒されながら、さっそく“カマトロ”部分を食べたきたろうさん、「旨いっ!」と絶句。西島さんも、「胡椒が利いてておいしい! 相当脂がのって、とてもしっとりしてる」と大満足。
最後は、「まぐろの炊き込みご飯」を。まぐろの旨みを引き出すため、フレーク状のまぐろとまぐろ節の出汁を使って土鍋で炊き上げる。「根菜の味もしっかり利いた炊き込みご飯の上に、旨みたっぷりのまぐろ!」。至福のおいしさに、西島さんは、もう、うっとり!
ご主人に、「酒場とは?」を伺うと、「妻の言葉ですが、『座ればみんな平社員』。酒場に座ったら、みんな平等に楽しんでほしい」。素晴らしい名言で〆。