故郷・佐渡島を愛する女将が
女手一つで作り上げた人気酒場
絶品! 佐渡島郷土料理に舌つづみ
佐渡島のソウルフード「いごねり」
今宵の舞台は、東京都台東区浅草。日本で最初の遊園地とされる「浅草 花やしき」を後にして、きたろうさんと西島さんが向かったのは、「佐渡の酒と肴 だっちゃ」。店をひとりで切り盛りする女将の北村さやかさん(46歳)に明るく迎えられ、ふたりは焼酎ハイボールで「今宵に乾杯!」。「“だっちゃ”とは、佐渡島の方言で、“〜です”の代わりに語尾につけます」と佐渡島出身の女将。「ってことは、佐渡の料理を出してくれるんだね!」ときたろうさんはワクワク!
最初のおすすめは、佐渡島直送の鮮魚「お刺身3点盛り」。この日は、黒鯛、塩じめ秋鮭、アオリイカだ。塩じめ秋鮭の味わい深さに、「うまぁ〜」と唸るきたろうさん。黒鯛を食べた西島さんは、「すっごい旨み! なにこれ!?」と目を見張る。さばいてから約4日間熟成させるそうで、「ねっとりした食感もいい」と舌つづみ。さらに、甘みのある旬のアオリイカも味わって、大満足。女将は、「佐渡島の地物をおいしいと言ってもらえてうれしい」と満面の笑みだ。
店は創業13年目。最初に出店したのは、東京メトロ銀座線・浅草駅につながる、昭和30年開設の浅草地下商店街だったそう。「日本で一番古いと言われる地下街で、雰囲気は良いんですが、古いだけあって2年半くらいで漏水がひどくなった」と、8年前に現在の場所へ移転を決めた。
さて、次の料理は「いごねり」と聞いて、キョトンとするふたり。「地味な料理ですが、佐渡島のソウルフード。普及に貢献してほしい」と女将。一見、こんにゃくに似ているが、いご草という海藻から作る、ところてんのような食べ物で、おろししょうがと醤油でいただく。「プルプルしておいしい。香りが華やか」と、西島さんは気に入った様子でツルツル〜。
高校卒業まで佐渡島で育ったさやかさん。上京して大学を卒業後、広告会社や教育コンサルティングの仕事を経て、33歳で脱サラした。「リーマンショックを機に、自分で仕事をしたいと思って」と、酒場を開業。その背景には、佐渡島で暮らす家族との絆があったという。「私が10歳の時に母が亡くなり、母にかわって姉妹3人で料理を作るようになったんです。よく釣りをしていた父親からは、魚の捌き方も教わりました。だから地元の食材のことは分かるし、佐渡島をまるごとコンセプトにしたお店なら、自分にもできるんじゃないかと」。そんな店のオススメメニューは、「サザエの壺焼き(佐渡味噌を使用)」、「地魚のかぶと煮(佐渡島産黒鯛)」、「ふぐの子粕漬け」、「おけさ柿(佐渡島羽茂地区で収穫)」など、佐渡島の味覚を存分に味わえる。
〆は「飛魚すり身汁」と「佐渡バターご飯」!
続いては、さやかさんの母親も作っていたという思い出の味「佐渡煮しめ」を。あご(飛魚)と昆布の出汁で、野菜や豆腐、くるま麩などをじっくり煮込む。「佐渡島の伝統芸能に、五穀豊穣や厄払いを祈願する鬼太鼓(おんでこ)というのがあって、その鬼をもてなす料理なんです」。店内には、父・五十一(いそかず)さんが描いた鬼太鼓の絵が壁一面に飾られ、新潟県民謡「佐渡おけさ」の歌詞も! きたろうさんは、「佐渡へ〜、佐渡へと〜♪」と思わず歌い出すが、「30点だな」と頭を掻いて笑うのだった。
ここで、「佐渡黒豚みそだれ焼き」が登場! 希少な佐渡黒豚のバラ肉を炒めて佐渡味噌で味付けすると、脂の甘みが引き立ち、「たまらない! ベストな組み合わせ!」と、西島さんはチューハイをグビグビ。
「一度離れたからこそ、佐渡島の魅力を改めて感じる」と女将。店には、佐渡島出身のお客さんが思いを綴る「島民連絡帳」があり、コロナによる営業自粛期間中に何度も読み返して勇気づけられたという。「地元を応援し、少しでも社会貢献したいという思いですが、逆に、佐渡のみなさんに応援してもらってます。店を再開した時には、発注先から『おかえり』と言ってもらって。地元は観光も水産業も大きな打撃を受けてるのに……。過疎が進む佐渡島のものを、大都会の東京で売らせてもらっていながら、コロナ禍で私は何の役にも立てなかった」と涙ぐむ。それでも、店には少しずつお客さんが戻りつつあり、「わざわざ遠くから来てくださったり、週に何度も通ってくれるお客さんもいる。それぞれの思いを大切にして頑張っていきたい」と前を向くのだった。
最後の〆は、「飛魚のすり身汁」と「佐渡バターご飯」! 佐渡味噌仕立てのすり身汁に喉が鳴るふたり。手作りの発酵バター「佐渡バター」をのせたご飯は、自然な甘さのミルク感が広がり、垂らした醤油と相まって悶絶級の旨さ。西島さんは、「すり身汁とバターご飯を一緒に食べると、また最高〜」と感激止まず、「発酵食品同士だから合うんです!」と女将もドヤ顔に!?
女将にとって、酒場とは、「家庭では味わえないくつろぎの場所」。ちゃきちゃき女将と佐渡島の絶品料理に元気をもらえる一軒である。