修業時代に苦楽を共にした三人が
11年後に開業した人気酒場
産地と素材にこだわる絶品料理を堪能!
五島列島直送! 新鮮刺身に舌つづみ
東京都千代田区岩本町を訪れたきたろうさんと武藤さん。神田川からも近い靖国通りを歩いて今宵の酒場「あそび割烹 さん葉か」へ。ご主人の市瀬(いちのせ)賢治さん(36歳)と料理長の井上翔太さん(33歳)に迎えられ、さっそく焼酎ハイボールで「今宵に乾杯!」。
最初のおすすめは、「刺身4点盛り」。長崎県出身の市瀬さんが、「どうしても店で出したい!」と、長崎五島列島から直送してもらう鮮魚は、「神経締めなどの鮮度を保つ処理をして空輸するので、美味しさが違います」。クロムツ、アオリイカ、スマガツオ、カイワリ(アジの仲間)の盛り合わせに、「いやぁ、旨い。新鮮!」と喉を鳴らすきたろうさん。武藤さんも、軽く炙ったクロムツを長崎県産の甘口醤油で食べて、「ねっとりして、香りもいい」と感激する。
店名の由来は、「“三バカトリオ”です」と笑う市瀬さん。社長の市瀬さん、料理長の井上さんのほかに、総料理長の小峰太一さん(37歳)の三人でこの店を始めたそうで、15年前に六本木の日本料理店で一緒に働いていた仲間なのだとか。三人は平成28年に「さん葉か」を開業し、2年目には2店舗目の「炭手前 鷽(うそ)」を中央区日本橋にオープン。現在、その店を小峰さんが切り盛りしている。
「料理は全くできない」という市瀬さんは、地元長崎で営業職に就いていたが、20歳で上京し、六本木の日本料理店でホール担当として働き始めた。同じくホール担当だった井上さんは、「最初は仲が悪かった。方言が強すぎて、何言ってるか分かんない。すぐケンカになっちゃって」と明かす。それでも、「毎日ケンカしては、そのあと飲みに行って仲直り。それを繰り返して仲良くなりました。連日、朝まで飲んでる僕たち三人を、先輩は“三バカトリオ”と呼んでた(笑)」と市瀬さん。ケンカをしながらも、苦楽を共にした三人は、出会いから11年後、夢をかなえたのだった。
次のおすすめは、「五色大豆の自家製納豆」。鹿児島県産の五色大豆を12時間発酵させ、マスカルポーネチーズと塩コショウで味付けする。きたろうさんは「粘りが少なく歯応えがすごい。初めての食感も楽しいな」と感心しきり。武藤さんも「デザートっぽいけど、コショウが利いてておつまみにもぴったり」とチューハイが進む!
椎葉村の蕎麦粉で作る「手打ちそば」
「三人で店をやろう」と最初に提案したのは小峰さんだったという。三人は働いていた日本料理店を揃って退職し、開業に向けて別々の店で修業を始めた。板前の小峰さんは北千住の日本料理店でさらに研鑽を積み、井上さんは料理人になるべく中目黒の炉端焼き店へ。市瀬さんは経営を学ぶため派遣会社に就職した。資金を貯め、知識を身につけ、人脈を広げた三人は6年後に再び集結。念願の酒場を開業し、店名「さん葉か」の“葉”の字に、「地に根を張って伸びる」という想いを込めた。
2号店で働く小峰さんに話を伺うと、「社長の市瀬は経営を、僕は全体的な料理の統括をしてます。井上はムードメーカー的なところがあって、それぞれ違った光るものを持っている。狙ったかのように役割分担ができてますね」。
続いては、「猪ロースの低温調理」を。じっくり焼き上げた猪肉は美しいピンク色に仕上がり、武藤さんは、「脂がキラキラして、見るからにおいしそう」と興奮気味。味付けに使う黒岩塩はジビエとの相性抜群で、「脂が旨い!」ときたろうさんも絶賛する。
メニュー開発のために、常連客を集めて試食会も開催するそうで、「お魚いろいろ釜飯」、「自家製こんにゃく」、「宮崎県椎葉村産 原木椎茸焼き」など、素材を活かしたオススメメニューはどれも垂涎ものだ。
ここで、「フエフキ鯛のフライ」が登場! こだわりのソースは、「宮崎県椎葉村(しいばそん)の希少な蕎麦の実を使い、豆腐と柚子で香りよく仕上げました」と井上さん。世界農業遺産にも認定されている椎葉村では、伝統的な焼畑農法で蕎麦を栽培しているという。きたろうさんは、「実に上品な味」と舌つづみを打ち、武藤さんも、「弾力のある身とソースが合う」と大満足!
椎葉村からは、毎週、旬の野菜を直送してもらっているが、「お任せで何が届くか分からない。珍しい野菜があれば、直接電話して調理方法を聞くこともある」と井上さん。「毎日、料理のことで頭がいっぱい。でも、料理のしがいがあるんです」と楽しそうに話し、食材をコース料理に取り入れることで、無駄をなくす工夫をしているとも教えてくれた。
最後の〆は、椎葉村の蕎麦粉で作る「全粒粉の手打ちそば」。殻ごと挽いた全粒粉を使うため香りがよいのが特徴で、「コシがあって旨い」ときたろうさんも太鼓判を押す。
「酒場とは?」の質問に、「ホッとする場所」と飾らない市瀬さん。一方、井上さんは「うれしくても、悲しくても、悔しくても、行きたくなる場所」と答えて、「相当、考えたな」とニヤけるきたろうさんは、今宵も上機嫌!