文京区湯島で昭和54年創業
4000枚もの絵馬が飾られた店内で
国産食材にこだわる絶品和食に舌つづみ!
自家製味噌を使った「手巻きサラダ」
今宵の舞台は東京都文京区湯島。学問の神様・湯島天神を後に、きたろうさんと武藤さんが訪れたのは、昭和54年創業の「絵馬亭」。店内に入ると、壁一面に飾られた4000枚もの絵馬にビックリする! 店を切り盛りするのは、二代目ご主人の塚原清一(きよかず)さん(63歳)と妻の智子さん(60歳)。ふたりは、さっそく、焼酎ハイボールを注文して、「今宵に乾杯!」。お客さんひとりひとりに「おみくじ」が用意されていて、きたろうさんは「大吉だ!」と大喜び。武藤さんも中吉と出て、笑顔になる。
最初のおすすめは、「手巻きサラダ サル食」。トマトやきゅうり、にんじんやブロッコリーなどから、好きな具材を自分でサンチュに巻き、自家製味噌と一緒にいただく。豚肉と干し椎茸を炒めて生クリームを加えた自家製“サル味噌”は、野菜との相性抜群! 「さっぱりしておいしい〜」と武藤さんもムシャムシャ。「猿は手で食べるし、長寿なので」とご主人が「サル食」と名付けたそうだ。
「先代はお父さんなの?」と聞くきたろうさんに、「いいえ、血はつながってなくて、暖簾分けと言う形です」とご主人。18歳で調理師専門学校に進学したご主人は、卒業後、先代が営んでいた「絵馬亭」に就職した。しかし、1年後、「修業に出なさい」と先代主人に告げられ、8年間の修業へ。料亭からフレンチまで10軒ほどの店で修業した後、27歳で板長として「絵馬亭」に戻り、41歳のときに先代から店を受け継いだ。
店を受け継いで22年。修業先には厳しい店もあったそうで、「包丁の峰で叩かれたこともあります。親方は神でしたからね。その店に修業に行くと3年寿命が縮まると言われてましたよ」と苦笑い。「でも先代は、それに耐えられる男だから、暖簾分けしてくれたんだろうね」と、きたろうさんは納得する。
ところで、店内の絵馬は、先代主人・羽田さんが趣味で集めたもの。倉庫で保管しているものも含めると約5000枚もあるという。きたろうさんは、「なんか落ち着くよね」と絵馬を見回しながら、「絵馬ってなんでこんな形なの?」。ご主人は、「昔は、生きた馬を奉納していたそうですが、庶民には無理なので、木の板に馬の絵を描くようになったと言われてます。絵馬の形は馬小屋を表してるそうですよ」と教えてくれた。
「本まぐろの中落ち」は大迫力!
ここで運ばれてきたのは、巨大な背骨がついたままの、名物「本まぐろ骨付中落ち」! 20年の付き合いがある豊洲の仲買から特別に分けてもらうそうで、あまりの迫力に圧倒される。金属臭を避けるため、スプーンではなく蛤の貝殻で身を削り取って食べるのが「絵馬亭」流だ。「初めて見た!」、「これは楽しい」と大興奮のふたり。もちろん、その味は、「脂がのってて、甘い〜」と悶絶級!
続いては、先代から伝授された「海老もろこし揚げ」。海老と白身魚のすり身にコーンを加えて揚げた一品は、今や店の名物に。「ふわふわで、おいしい。上品な味」と、武藤さんはまたまた頬が落ちそうだ。
ご主人の父親は大工だったそうで、「職人の厳しさを知るからこそ、『職人にはなるな』とずっと言っていた」という。父・福松さんは、現在92歳。今も月に一度ほど店に飲みに来てくれるそうで、この日も元気そうな笑顔で登場! 「息子の料理は最高ですよ」と絶賛し、職人の道を選んだ息子のことを「毎日応援してる。いい息子。日本一です!」とベタ褒め! そのにこやかな笑顔に、すっかり心和むきたろうさんたちなのだった。
次は、ご主人の職人技が冴え渡る「いわし刺し」を! 見事な薄造りを美しく盛り付けた一皿に、「これは、もう、技術料だけをいただく感じ」とご主人も胸を張る。「俺はホントにいわし好きなの!」と、大好物のいわしに箸が止まらないきたろうさん。武藤さんは「脂がのったいわしを少しずつ食べながらチューハイ飲むの、いいですね〜」と、お酒好きな一面をのぞかせた。
他にもオススメのメニューは、「手造りエビしゅうまい」、「ぷちあんこう鍋」、「椎茸のはさみ揚げ」など、おいしそうな料理ばかり! できるだけ国産の食材を使うのがご主人のこだわりで、店の入り口には、「日本食材の使用量が50%を超える店舗」であることを示す“緑提灯”も掲げられている。
「おいしいものを食べている時のお客さんはいつも笑顔。それを見るのが楽しい」と充実した様子のご主人。店を受け継いだ当初、先代の引退で、お客さんが減ったこともあったが、「2000年頃からパソコンでホームページを作って集客したんですよ。苦労があっても、あとで笑えればいい」と達観する。
最後の〆は、「麦とろ」。千葉県多古町名産のやまといもを麦ごはんにかける。きたろうさんは、「いい〆だなぁ。旨い〜」と唸り、「なんだか、武士になったような気分だよ(笑)」とほろ酔い気分!
ご主人にとって酒場とは、「人と触れ合い、コミュニケーションをとる場所」。おいしいものが、人をつなぎ、人を幸せにする、名店だ。