東京都墨田区曳舟で創業26年目
夫婦二人三脚で作り上げた人気酒場
他では味わえない絶品創作料理が自慢!
サクッと軽い「串揚げ」に舌つづみ!
きたろうさんと武藤さんが訪れたのは、スカイツリーからも近い東京都墨田区曳舟(ひきふね)。京成曳舟駅から明治通りを歩いて10分ほどの「季の芽」が今宵の酒場だ。厨房で腕を振るうご主人の安藤伸治(しんじ)さん(56歳)と、接客を担当する“せっちゃん”こと妻の摂子さん(55歳)の夫婦に迎えられ、きたろうさんと武藤さんは、さっそく焼酎ハイボールで、「今宵に乾杯!」。
最初のおすすめは、「串揚げ5本セット」。この日は、アスパラ肉巻き、ナス、エビ、ぎんなん、豚しそチーズ。お好みで三種類の塩(山椒、カレー、抹茶)や自家製ソースをつけていただく。揚げたての豚しそチーズを山椒塩で食したきたろうさん、「何とも言えず旨い! チューハイが進むね」と、さっそくグビグビ。自家製ソースでエビを食べた武藤さんも、「衣がサクサクで軽い! おいしい〜」と感激する。ご主人は、「コレステロールゼロのキャノーラ油で、具材によって温度を変えて揚げるので軽く仕上がるんです」と自信を見せる。
29歳まで印刷会社の営業マンとして多忙な毎日を送っていたご主人の伸治さん。摂子さんとは大学時代のアルバイト先で出会い、交際から5年後に結婚した。「実は曳舟は妻の地元で、ここは義父の土地。もともと義父がここで店をやりたかったらしく、私たちに、『やってみないか?』と勧めてくれたんです」と、29歳で脱サラし、30歳で店を開業した。そんな摂子さんの父・渡辺攝宣(せつのぶ)さん(88歳)にも話を伺うと、「私は飲むのが好きで、自分の家で娘たちが酒場をしてくれたら、遠慮なく飲めると思って」と笑う。摂子さんが「主人がサラリーマン時代は仕事がきつくて夫婦喧嘩も多かった。それを心配して勧めてくれたのかなと、今ではそう思いますね」と言うと、攝宣さんも、「まぁ、ちょうどよかったんでしょうね。私としては、実際に自分がやるのは大変だし、娘たちがやってくれて、シメた! と思いましたね(笑)」。
続いていただくのは、醤油ベースのスープでじっくり煮込んだ「牛スジ煮込み」。武藤さんは、「お肉がトロトロでおいしい〜」と頬が落ちそう。きたろうさんは、ご主人が試行錯誤の末に辿り着いた、甘さと辛さの絶妙なバランスに感激するが、その隠し味は企業秘密!
痺れる辛さ! 「激辛チキンのオーブン焼き」
店はまもなく創業26年目。ご主人は脱サラ後、約1年間、新橋の串揚げ居酒屋で料理修業したが、「ほとんど独学で、開業は手探り状態でした。店のオープンまでに、自分が納得できる料理を完成させるのは本当に大変だった」と振り返る。摂子さんも「主人はすごく真面目に取り組んでくれました。不安はありましたが、私も一緒に修業先についていって、ホールの仕事をしながら、気持ちの準備をしました」と、すぐそばで夫を支え続けた。
次に登場したのは、ご主人考案の“チャレンジ料理”「激辛チキンのオーブン焼き」。恐る恐る口に運んだ武藤さん。しばらく噛んだ後、「あっ、辛いっ! 時間差でビリビリくる!」と、天を仰ぐ。11種類ものスパイスを使い、味に深みを出すそうで、きたろうさんも辛さにもだえつつ、「好きな人は、一度食べたらまた食べたくなるだろうね」と納得。ご主人によると、「もっと辛くして」と言うお客さんもいるのだとか!
辛い料理の後は、冷たいワンタン「季の芽パオパオ」を! 茹でたワンタンを氷水で冷やし、中華ドレッシングをかけた一皿は、「ツルっと冷たい食感が楽しい。ひと手間かかってるね〜」ときたろうさん。武藤さんもツルツルパクパクと箸が止まらない。
「料理に正解はないので、常に試し続けてます。9割失敗で1割残る感じ」とご主人。オススメメニューには、「揚げ餅みぞれ納豆」、「15品目のシャキシャキサラダ」、「イカゲソ南蛮」など、創作料理の数々が並ぶ。「一生懸命作ったものが評判よくないと落ち込みますし、やっていけるのか不安にもなる。『美味しかったよ』と言ってくれるお客様や、支えてくれる家族がいたからやってこられたと思います」。
最後の〆は、3種のきのこと鶏むね肉を使った「きのこ雑炊」。カツオ出汁と醤油ベースのスープをごま油とラー油で中華風にアレンジしてあり、「がっつりご飯を食べてる感じ」と満足げな武藤さん。「これはクセになるな。雑炊ってイメージじゃないね。しっかりした料理だよ」ときたろうさんも感心しきり。
“今だからお互いに言いたいこと“を聞くと、ご主人は、「やっぱり感謝です。妻がいなければやってこられなかった。それは断言できます」と即答。摂子さんも、「私も感謝しかないです」と返し、きたろうさんは、「またまた、お前たちは!(笑)」とニヤニヤ。「酒場とは、憩いの場」というご主人。「開業当初、中学生や高校生だったお客さんが、今は子供連れで来て下さる。うれしいことです」と話す温かい眼差しに、きたろうさんは、「居酒屋の主人って、子供たちの成長を見守る教師みたいな存在なのかもね!」。