今宵の舞台は東京都大田区北千束。きたろうさんと武藤さんが向かったのは、東急目黒線･大井町線の大岡山駅から徒歩約6分の「大衆酒場やかん」。入り口には昔ながらのアルマイトのやかんが飾られ、暖簾にもやかんのイラストが！ 店を切り盛りするのは、ご主人の伊藤浩之さん（57歳）。従業員の天川和拡（あまがわかずひろ）さん（32歳）が厨房で腕を振るう。きたろうさんと武藤さんは、厨房を囲むカウンター席に座り、さっそく焼酎ハイボールで「今宵に乾杯！」。武藤さんは、「カウンターは、厨房の様子が見えて楽しい」とウキウキだ！

最初のおすすめは、「アボガリ」。アボカドとガリを組み合わせた一皿に、「花が咲いたみたい！」と感激する武藤さん。一口食べて、「さっぱりしておいしい〜」。きたろうさんも、「アボカドとガリって合うんだね。これはつまみになる」とさっそくチューハイが進む。

店名の由来をご主人に尋ねると、「ラグビーをやってたんで。やかんってラグビーのアイコンみたいなもの。ぶっ倒れると、やかんの水を頭からかけられた」と話し、倒れた選手にやかんの水をかけると意識が回復するといわれていた、いわゆる“魔法のやかん”にちなんで名付けたという。カウンターの上の大きなやかんには焼酎が入っているそうで、きたろうさんは、「これで注いでもらったら、なんか旨そう！」。

店は創業6年目。酒場を始める前は商社で働いていたというご主人は、「ワーキングホリデーでカナダにいたこともある」とか。武藤さんが「英語ペラペラ？」と聞くと、「いや全然」と謙遜するが、「スゴイっすよ！」と天川さん。「外国のお客さんが来た時、ずっと英語で対応していて、めっちゃかっこよかった！」そうで、「英語がしゃべれる酒場の大将ってすごいね！」ときたろうさんも感心しきり。

そんなご主人は、「大衆酒場が大好きで、いつか店を開きたかった」と、52歳で酒場を開業。「ギリギリの人生です。夏休みの宿題も31日にやるタイプ」と笑い、「一回限りの人生、やりたいことをやらないと！」と、ラガーマンらしい情熱が垣間見える。開業当初は、「ラグビーの仲間が助けてくれました。しょっちゅう店に来て、宴会してくれて。それで、だんだん地元の方たちにも知ってもらえるようになった」とか。15歳から現在まで40年以上ラグビーを続けてきたご主人に、「見た目も含めて、なんか、かっこいいんだよ〜」ときたろうさんも惚れ惚れ！

さて、次の料理は「塩もつ煮込み」。塩仕立ての豚もつ煮込みに自家製にんにく味噌を溶きながら食べる。「さっぱりしてて味噌もうまい！ ご主人、繊細だね」と喉を鳴らすきたろうさん。武藤さんも「やさしい味で、おいしい〜」と大満足だ。

みんなから“あまちゃん”と呼ばれている天川さんは、「大将にはすごいお世話になってます。自分がやってたカフェがコロナで閉店して、大将に泣きついてここで拾ってもらいました」と明かし、「大将は第一印象は怖そうだけど、話すと、めっちゃ優しいじゃん！ってなる。そのギャップに、やられるんです。僕も見習おうかな」と笑うが、「ダメだよ。あまちゃんは怖い感じがない（笑）」ときたろうさんは、即却下！

ここで、次のおすすめ「白手羽」と「黒手羽」が登場！ 下味をつけた手羽先を蒸した冷製の「白手羽」は、「しっとりして、塩味が利いてる。いくらでも食べられそう」と武藤さん。一方、「黒手羽」は、蒸した手羽先を油で揚げ、甘酢ダレでいただく。こちらはカリカリとした食感で、きたろうさんは、「味が全く違うね。両方旨いっ！」。

続いては、天川さんがイタリア料理店で身につけたという「肉団子トマト煮」を。合挽き肉を塩コショウ、ガラムマサラで味付けし、ニンニクを利かせたトマトペーストで煮込む。「お肉がゴロゴロ入ってて、おしゃれな味！」と武藤さん。「上品なイタリアンだけど、器は酒場って感じだね」と言うきたろうさんに、「ここは酒場なので、“酒場スタンス”で！」と、気取らない。

ご主人のこだわりは、「あえて言えば、“なんでもあり”。あまちゃんが来てくれたから、いろんな料理も出せるしね」と言い、オススメメニューも、「ネギチャーシュー」、「しゅーまい」、「貴族のハムカツ」など幅広い。天川さんも、「僕、酒場って最強だと思うんです。イタリアンでもフレンチでもどんなジャンルの料理でも出せるので！」と、うれしそうだ。

最後の〆は、「キムチ豆腐鍋」。相性抜群のキムチと豆腐をつくね、ねぎ、舞茸と一緒に自家製辛みそで煮込む。アツアツをふうふうしながら味わい、「ほっとする味。いいねぇ〜」としみじみするふたりだった。

「もう一度、みんなが肩寄せ合って楽しく飲めるお店に戻りたい。酒場とは文化交流の場。いろんな人がいて、みんなで語り合って飲める場所だから」と前を向くご主人。そして、あまちゃんは、「やっぱり酒場は最強」と、もう一度“酒場最強説”をご提唱！