これまで東京じゅうの老舗、名店と呼ばれる酒場を巡ってきた、きたろうさんと西島さん。しかし今回ほど「すごい!」を連発した店は無い。なぜそこまで2人が興奮したかと言えば、これまで食べた事の無い素材を扱うジビエ料理だったから。ジビエとは狩猟によって、食材として捕獲された野生の鳥獣のことで、フランスが本場。しかしこの酒場「とみ笑」では、34歳の若き料理人・富田薫さんが、様々な料理法で食べさせてくれる。未体験の食材に胸を膨らませ、まずは焼酎ハイボールで乾杯。最初の一品を待った。
「最初は蝦夷鹿のお刺身から」と出てきたのは、艶々と深い赤色をした、鹿肉のお造り。ニンニクとショウガを薬味に、しょうゆをつけて食べると、意外にさっぱり。「うまいね。鯨のおいしいところの肉に似てるな」とは、きたろうさん。「肉に含まれる鉄分が多いので、火を通すと酸化して臭みが出るんです。逆に刺身の方が食べやすい」と、ご主人は言う。ジビエ料理には、解体、血抜きなどの処理を含めた猟師の腕、そして料理人の知識が問われる。ご主人はそれを、コツコツと独学で習得してきた。そんな3年前のある時期、ご主人が店長を務めていた店で、バイトとして働いていた女性と知り合う。お付き合いの後、今は店のフロアで接客を担当する奥さんの久美子さんと、昨年3月に結婚。同時期に店をオープンさせた。結婚式は行わず、開店まで資金を節約するため、1ヵ月半かけて2人で店の内装を手作りしたという。
次のオススメをお願いすると「今日はすごく特別な、おススメなお肉が入ってるんです。ひよどりっていう、とても希少な鳥なんですが、これを丸焼きに。それから猪と、この時期、美味しい青首鴨のジビエの三点盛りです」と、ご主人。備長炭で丁寧に焼き上げるご主人の姿を見ながら「炭で焼いてるの、偉いじゃない。味が全然違うよね。焼いてるのを見てるだけで、めっちゃ楽しいね」と、きたろうさんの期待が膨らむ。登場した3点盛りからひよどりをいただくと「うぉ、肉汁がすごい! それに甘さがあるんだよ」。愛媛県の猟師から、直接仕入れたひよどりは、ミカンなどの柑橘類が主食。そのため、肉がほんのり甘いのだという。猪を食べた西島さんは「ちょっとレアな感じで、柔らかい。こんなに臭くないものでしたっけ?」と、その肉の美味しさに驚く。「モノがいいんです。獲ってる猟師の腕がいい」というご主人。猪は、頭や心臓などの急所を一発で仕留めないと、肉に臭みが残ってしまうため、猟師の腕が肉の味を決めるという。そして青首鴨(青森産の真鴨)は、冬の三ヶ月間しか狩猟が許されていない貴重な一品。冬を乗り越えるため、脂肪を蓄えた肉は、脂がのり濃厚な味わいだが「今年はあんまりよろしく無くて、味が薄いんですよね。なので、ワインをちょっと煮詰めたソースを掛けてます」とご主人。鴨の肉を頬張ったきたろうさんは、一言「天才だね、お前は」。
最後にいただくのは、大分から取り寄せた、赤鶏を使ったお鍋。「一般に出回っているのは、雛鳥なんですが、親鳥を使ってます。親鳥ってあんまり流通に出てないんですよね」というご主人は、まず皮の表面を軽く炙り始める。こうして香ばしさを出し、旨味を閉じ込め、それを煮込む。すると旨みたっぷりの肉汁が溶け出して、濃厚だしの絶品鍋になるのだ。これを食べた西島さんは「なんか歯ごたえが全然違うんですね。噛んだらパーンと弾ける感じ」と、その肉の歯応えに驚きを隠せない。
素材を知り尽くし、素材を獲る猟師や、育てる生産者の事も知り尽くす。でなくては決して作り出せない料理の数々に触れ、2人は大感激。これからやっていきたい事を訊くと「もっと珍しい素材を、どんどん攻めて出していきたい」というご主人。奥さんにも同じ事を訊くと「次の目標は結婚式を挙げること」。これには生真面目そうなご主人も、照れを隠せない。今まさに波に乗ろうとする2人の姿に「この大将は、いつまでも荻窪にいないよ。銀座とか行っちゃうよ」と、きたろうさんなりのエールを贈るが、常連さんの気持ちは、ちょっと複雑かもしれない。いい店はずっと近くにあって、通いたいものだから。
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北海道の猟師から届けられた、新鮮な肉だからこそできる刺身。蝦夷鹿(狩猟:北海道)のもも肉の刺身1,200円(税別)
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最高の食材を、シンプルに炭火で焼き上げた一品。シンプルと言っても、最高の焼き加減を見極めるご主人の目があってこそ。狩猟の成果により内容が変わるジビエ三点盛り(この日は、ひよどり丸焼き、猪炭焼き、青首鴨炭焼き)2,900円(税別)
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お客さんの苦手な食材を、うまいと言わせる事が大好きだと言うご主人。多くのお客さんにとって、未知の食材を扱うご主人ならではの心意気。
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赤鶏とはニワトリの一種で、柔らかい肉質と濃厚な味が特徴。日本全国で飼育され、多くのブランド鶏が存在する。飼育法にもよるが、一般的にブロイラーよりも長い時間をかけて育てられる。赤鶏すき鍋1,800円(税別)
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住所
電話
営業時間
定休日 -
東京都杉並区上荻1−4−1
03-3392-7002
(昼)火〜金曜11:50〜売り切れまで
(夜)火〜木曜18:00〜24:00
金・土曜18:00〜26:00 ※
日・月曜
※番組放送内で表示された店舗営業時間に誤りがありました。上記の営業時間が 正しい営業時間となります。訂正してお詫び致します。
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