絶品鳥料理が自慢の人気酒場!
営業一筋のサラリーマンから転身し
50歳で第二の人生をスタートさせた男の物語
希少部位の「焼き鳥」をこだわりの塩で!
今宵の舞台は、東京都練馬区大泉学園。西武池袋線大泉学園駅から、きたろうさんと武藤さんが向かったのは、「炭火酒場 喜鳥屋(きどりや)」だ。焼き台の前で腕を振るうご主人の大場隆介(りゅうすけ)さん(58歳)は、「大将じゃなくて、キャプテンです!」と楽しそうに自己紹介し、きたろうさんたちは、「さすが“きどりや”! 気取ってるね〜」と笑いながら、焼酎ハイボールを注文して「今宵に乾杯!」
まずは、「焼き鳥3点盛り(はつ、はつ元、ひなとろ)」をご主人こだわりの塩でいただく。「はつ元」は、心臓の根元の希少部位で、「噛めば噛むほど味が出る〜」と武藤さん。肩部分の希少肉「ひなとろ」も、「身がふっくらして、ジューシー!」と感激だ。きたろうさんは、あまりのおいしさに「本当に塩だけの味付け!?」と半信半疑だが、ご主人は、「まろやかでコクのあるドイツ産岩塩だけです。あとは、私の愛情(笑)」。
開業するまでは、ずっとサラリーマンで、飲食業の経験もなかったというご主人。大学卒業後は大手アパレルメーカーで営業マンとして働き、35歳で営業手腕を買われて中国を拠点とする会社に転職した。その後も順風満帆なサラリーマン生活を続けていたが、「ずっと自分の店を持ちたかった」と脱サラ。50歳にして念願の開業を果たしたのだ。
「ところで、キャプテンというのは?」と聞くと、「アメフトをやってたんです」とご主人。27歳まで社会人アメフト部に所属し、1992年にはライスボウルにも出場。日本一に輝いたという。「すごいね! やることすべてがカッコいい」と感心するきたろうさんに、「実はキャプテンになったことないの。一度経験したくてね!」と笑うご主人だった。
続いての料理は、「レバーのたたき」。湯通しした新鮮なレバーを氷水で締め、ごま油にニンニクやドイツ岩塩などを加えたタレでいただく。「臭みも全然なくて、新鮮! タレもよく合う」と、ふたりの箸は止まらず、チューハイも進む!
ひんやり不思議な新食感! 「とりかわ大王」
49歳から大阪の焼き鳥店で3ヵ月間修業したご主人。「新しいことにチャレンジするのは楽しかった」と気概をもって学び、さらに独学で料理を研究。自分なりのおいしさを追求してきたそうで、店のオススメメニューには、「岩手鴨ロース炙り」、「なんばん帝王」、「土鍋マーボー豆腐」など、ご主人ならではの一工夫を加えた料理が並ぶ。
しかし、開業にあたっては苦労も多く、「50歳までサラリーマンでしたから、卸業者からはなかなか信用が得られなかったし、開業資金を借りるのも大変。40枚の事業計画書を書きましたよ」と振り返る。そして、「カミさんも大変だったでしょうね。何度も会社を辞めて、最後は脱サラして焼鳥屋やろうなんて。でも言っても聞かないから仕方なかったんじゃないかな」と苦笑い。実際、妻・るみ子さんからは何の文句も言われなかったそうで、きたろうさんも、「とんでもないダンナだよ! 奥さんすごいね」と感心するのだった。
次は、たれ、塩、月見、明太マヨなど8種類ものトッピングが選べる「自家製つくね」を。きたろうさんは、たっぷりのおろしポン酢でいただく「しぐれ」をパクッといって、「さっぱりして、合うね〜」と大満足。「チーズ」を選んだ武藤さんは、「チーズがトロトロ〜。自家製タレも相性抜群で、ペロっと食べちゃう!」と大喜びだ!
店名は文字通り、“鳥を食べて喜んでほしい”との思いから。「開業前は不安もなく、楽しみでしかなかった」とご主人は言うが、実際、店を始めると、「なかなかお客さんが入らず、きつかった」とも。それでも、「“ママ会”で店を利用してくれたお母さんたちの口コミでお客さんが増えた」そうで、地元で愛される人気店となった。
さて、ここで、名物「とりかわ大王」が登場! 「一番時間をかけて作る料理」とご主人が胸を張る一品は、じっくりと炒めて脂を飛ばした鳥皮を、カシューナッツと焼き鳥のたれで和えて冷凍庫で7時間以上凍らせる。凝縮された旨味が舌の上で溶けだす新食感に、武藤さんは、「鳥皮ってパリパリしたイメージですが、これは冷たくて、しっとり。不思議な食感!」と目を見張るのだった。
ご主人は、お客さんが帰る際は、必ず店の外に出て見送り、感謝を伝える。「毎日、毎日、200本も串を打って、普通なら嫌になるかもしれませんが、お客さんへの感謝の想いがあるから、楽しい!」と瞳を輝かせ、きたろうさんは、「その楽しさが味に出てるよね」と納得するのだった。
最後の〆は「鶏雑炊」。地鶏と宗田ガツオの合わせ出汁のおいしさに、うっとりする武藤さん。きたろうさんも「あ〜旨いっ」と思わずため息を漏らし、「素晴らしいなぁ。50歳から始めたとは思えない」と大絶賛。
「人間、ポジティブにチャレンジしていけば、何でもできる!」と言うご主人。「酒場とは、日頃のストレスや疲れを癒す社交の場。私の天職だと思ってます!」。頼れるキャプテンが、お腹も心も満たしてくれる、大満足の一軒だ。